「リチウムイオン電池」は、モバイルバッテリーやスマートフォンなどさまざまな製品に広く使われていますが、ほかのごみと混ぜて捨てられ回収する際やごみ処理施設で発火し、火災が起きるケースも相次いでいます。
一方で、不要になった「リチウムイオン電池」を回収している市区町村は2023年度の時点で全体の75%にとどまり、搭載した製品の捨て方が自治体によって異なっていることなども課題として指摘されていました。
こうした状況を受けて環境省は、家庭から出される不要になったすべての「リチウムイオン電池」について全国の市区町村が回収するよう求める新たな方針をまとめました。
回収方法については住民の利便性が高い地域のごみステーションや戸別での分別収集を基本とし、役場や公民館などの拠点施設に回収ボックスを設置して活用することも推奨しています。
また発火事故を防ぐため破損したり膨張したりしている電池は別途、回収することが望ましいとしているほか、住民に電池を使い切った状態で出すよう呼びかけるなど、捨て方をわかりやすく示して広報することも求めています。
環境省はこの方針について、15日、都道府県を通じて全国の市区町村に通知しました。
今後、説明会を行うなどして周知していきたいとしています。
不要のリチウムイオン電池 “市区町村が回収を”環境省が通知
モバイルバッテリーやスマートフォンなどに使われている「リチウムイオン電池」による火災や発火事故が相次ぐ中、環境省は家庭から出される不要になったすべての「リチウムイオン電池」を市区町村が回収するよう求める新たな方針をまとめ、15日、通知しました。
浅尾環境相“分別回収 徹底が必要”
浅尾環境大臣は15日の閣議後の記者会見で「近年、廃棄物処理施設やごみ収集車などでリチウムイオン電池に起因する火災事故が頻繁に発生していることは重要な課題と認識していて、市町村による分別回収や適正処理をさらに徹底していく必要がある」と述べました。
その上で「リチウムイオン電池による火災の予防のためには燃やすごみや燃やさないごみなど他のごみの区分とは区別して、排出していただくことが重要だ。国民の皆様には、適切な廃棄方法についてお住まいの市町村に問い合わせていただくなどして火災事故の発生防止にご協力いただきたい」と呼びかけました。
【Q&A】で詳細解説 捨て方は?国の通知のポイントは?
リチウムイオン電池は使い方や捨て方を誤ると、発火事故や火災につながります。
環境省や専門家に取材し、注意点と今回の国の通知のポイントをまとめました。
Q どんな製品に使われている?
リチウムイオン電池は、繰り返し充電することができ、小型で高性能ということもあって、私たちの身の回りにあるさまざまな製品に搭載されています。
例えばスマートフォン、パソコン、モバイルバッテリー、電動アシスト自転車やコードレス掃除機の充電器、ワイヤレスイヤホン、加熱式たばこ、電動歯ブラシやシェーバー、携帯型扇風機や電動工具などです。
最近の充電できる製品にはほとんど、リチウムイオン電池が使われていると思ってもらえればと思います。
Q なぜ発火事故や火災が相次いでいるの?
リチウムイオン電池は、使用を続けると劣化し、内部に可燃性のガスがたまることがあります。バッテリーが膨らんでいるのを見たことがある人もいるかもしれませんが、これはこのガスが原因です。
こうした状態の電池に強い衝撃や圧力が加わってショートしたり、過充電で異常な熱が発生したりするなどして、電池内部にたまっていたガスが発火するのです。
私たちの身の回りでは、“充電中”の発火事故が多いのですが、ごみ収集やごみ処理施設では、分別されずに捨てられたリチウムイオン電池が、圧縮や破砕された時に発火事故が起きています。
火災急増 モバイルバッテリーが最多
環境省によりますと、2023年度にごみ収集車やごみ処理施設などで起きたリチウムイオン電池が原因とみられる火災などの件数は8543件で、前の年のおよそ2倍に増えています。発火や発煙なども含めると、件数は2万1751件にのぼっています。
火災によって、ごみ処理施設の一部が稼働ができなくなるなど、深刻な被害も出ています。
火災などが起きた製品の品目はモバイルバッテリーが最も多く、次いで、加熱式たばこ、コードレス掃除機、スマートフォンなどとなっています。
Q なぜ今回、環境省は全国の自治体に通知を出したの?
リチウムイオン電池の発火事故が大規模な火災につながり、ごみ処理施設の稼働停止などの深刻な被害が相次いでいるためです。
施設で発火事故が相次ぐ背景にはリチウムイオン電池の回収方法の統一的な指針がなく、自治体によって、捨て方が異なることがあります。
住民への捨て方の周知が進まない中で、ほかのごみと混ぜて捨てられてしまい、発火事故につながっているとして環境省は適正な処理に向けて、今回、新たな方針を示したのです。
Q 今回の通知で、すべての自治体で回収が行われることになる?
今回の国の通知には強制力はありません。
ごみ処理は自治体によって組織体制や人員などの事情が異なるため、実際にどのような体制で回収するかどうかは、自治体ごとの判断になります。
人員の問題などで、回収したくてもできない自治体もあり、専門家はすべての自治体が回収できるように、国やメーカーが協力して支援していくことも必要だと指摘しています。
回収しない事情は…
不要になったリチウムイオン電池や搭載製品の回収を行っていない市区町村も多くあり、2023年度の時点で、24.6%にのぼっています。
回収しない理由については、
▽民間のリサイクル団体やメーカーなどでの回収を住民に周知しているからが最も多く、
次いで、
▽組織体制の整備や人員確保が困難、
▽近隣に引き取り可能な事業者がいない、
▽ごみ収集や処理を委託している事業者との調整が困難などとなっています。
Q 捨て方はどうやって確認すればいい?
まずは住んでいる自治体のホームページなどを見て、リチウムイオン電池や搭載製品を回収しているのか、回収していないのかを確認してください。
月1回程度、ごみステーションや戸別で回収しているところもあれば、役場や公民館などの拠点で回収しているところもあって、頻度も場所もさまざまです。
注意が必要なのが、回収している自治体でも、リチウムイオン電池が膨らんだり、破損したりしている場合は、発火の危険性が高まるため、回収していないところがあることです。
それぞれの自治体の指示に従って、分別して捨てるようにしましょう。
回収始めた東京 新宿区では
東京 新宿区では4月から、家庭ごみとして出されるリチウムイオン電池の回収を始めました。
これまではメーカーなど事業者側の自主的な回収に任せてきましたが、ほかのごみと混ぜて捨てられるケースが相次ぎ、住民から捨て方についての問い合わせも増えていたということです。
このため週1回、資源ごみとして収集を行うことになり、取材に訪れた4月9日には、発火を防ぐため、平積みができるトラックで集積所をまわり、消火フィルムが付けられた専用の缶に入れて、回収していました。
4月1日から8日までに区内全域で回収されたリチウムイオン電池やモバイルバッテリーは、専用の缶8個分にのぼり、この日、清掃事務所に運び込まれていました。
新宿区でも昨年度、収集時の発煙などが起きているということで、住民に対して、
▽電池の端子部分にテープを貼って絶縁処理し、
▽中身が見える袋に入れてほかのものと混ぜずに捨てることや、
▽膨張や変形しているものは、直接、清掃事務所に持ち込むように呼びかけています。
新宿区環境清掃部清掃事業担当副参事の手島寛さんは「変更した回収方法についてしっかり周知をしていくので、区民のみなさんには、指定された資源の日に、不要になったリチウムイオン電池の排出の協力をお願いしたい」と話していました。
Q 自治体が回収していない場合はどうすればいいの?
その場合は、リサイクル団体「JBRC」の回収ボックスを活用しましょう。家電量販店などの協力店に設置されています。
ただし「JBRC」の会員ではないメーカーの製品は回収の対象とならないため、事前にホームページで、対象製品かどうかの確認が必要です。
住んでいる自治体によっては、現状では周辺で捨てるところがどこにもないというケースも考えられます。処分に困ったら、自治体や製造メーカーに直接、問い合わせて処分方法を確認してください。
まだまだ捨て方が分かりづらいですが、今回の環境省の通知では、回収方法を住民に明示することを自治体に求めていますので、今後、改善していくことが期待されます。
Q 捨てるときに電池と本体を分解する必要はないの?
電動アシスト自転車やビデオカメラのバッテリーなど、リチウムイオン電池が簡単に取り外せる製品の場合は、基本的に、電池と本体を分けて、処分する必要があります。
バッテリーの端子部分にテープを貼って、絶縁処理をして捨てましょう。
一方で、ワイヤレスイヤホンやモバイルバッテリーなど、電池と本体が一体になっている製品は、無理に分解して取り外そうとしないでください。
発火するおそれがあり、大変危険な行為です。
自治体やメーカーの指示に従って、そのまま捨ててください。
専門家“リサイクル費用 国やメーカーが支援を”
今回の環境省の通知について、リチウムイオン電池の火災や処理の問題に詳しい国立環境研究所の寺園淳上級主席研究員は、「発火や火災が多発している現状を考えれば、環境省の通知は妥当で必要なことだと思う。消費者にもうまく伝わって、発火や火災が減ることが期待される」と一定の評価をしました。
その上で、「もともとリチウムイオン電池は、メーカーが責任を持って自主回収やリサイクルする仕組みがあったが、それが不十分なために、自治体に負担がいってしまう形になった。ただ、自治体の中には人が足りない、お金が足りない、スペースもない、情報もないと、ないないづくしで困っているところも多く、そうした中で火災を起こしてしまうところもある。保管や処理、リサイクルにはどうしても費用がかかるので、国やメーカーは、情報や費用面で、積極的に協力して支援してほしいと思う」と話していました。
リチウムイオン電池は、私たちの生活に欠かせないものになった一方で、とてもデリケートな製品です。利用するときは、発火のリスクがあることをしっかり認識して、適切な使い方や捨て方を意識するようにしましょう。