残酷な描写(TCG)があります
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対戦中 相手にテキスト確認を求められたら快く応じてあげましょう
マナーを護って楽しくファイトを当作品は推奨しています
「「ファイト」!」
「オレのたァ~ん!! ドローッッ!」
先行を掴んだ。
引き抜いた手札を見る。
まあ悪くねえ手札じゃねえか、クヒ。
「土地をセット! オレはァ、<夜疾の赤目ネズミ>を召喚だ!」
「通します」
「こいつを召喚した時、楔カウンターが1つ乗る!」
「説明ありがとうございます」
「ターンエンドだ!」
なんかブツブツと呟いているが、さてなにをしやがる?
「俺のターン」
だが、まあ結果は目に見えている。
あれには精霊はいない。
「レディ・アップキープ・ドローフェイズ」
オレの闇の領域に抵抗する手段はない、いやそもそも。
「メインデッキからカードを1枚ドロー、ライフデッキからカードを2枚ドロー」
マグラの縛りで、共鳴は出来ない。
なら。
「土地を1枚セットして、ターンエンド」
「サレンダーの準備でもしておいたほうがいいンじゃねえか、オレのターン! ドロー!」
引いたカードを見る。
――<夜疾の女王マグラ>
もうきやがったか。
なら特等席で眺めてな。
「オレは
闇の領域に染まった周囲に、より純粋な黒が訪れる。
遠くから雨の音が迫ってくる。
「夜の効果! こいつが場にある限り、楔カウンターが乗る効果が+1つ増加する!」
「夜疾デッキの専用サポートだな」
「その通り! そして、こいつは毎ターン1つ任意のクリーチャーの楔カウンターを増加させる! オレは赤目ネズミのカウンターを1つ増やす!」
「これで再生二回分」
つまり、三回死なないと死なない壁ってわけだ。
1/1の雑魚だが、壁としては便利だ。
「ターンエンド」
「そのエンドフェイズに、瞬間魔法<思考>をプレイ」
「あン?」
「1コスト支払い、デッキの
ふぅん。
共鳴出来ないなりの小細工ってことか。
「エンド処理、どうぞ」
「いいカードは引ケたかよ! エンドだ!」
引けて1枚。
それだけでなにか変わるわけでもない。
「レディ・アップキープ・ドローフェイズ、メインとライフから1枚ずつドロー」
さて、ここからいつも通りに追撃者を出して。
「土地をセットし、2コストで<放火範ゴブリン>をプレイ。対応ありますか」
「……ゴブリン?」
出された名前に、眉を潜めた。
ゴブリン……ゴブリンプラントか?
増えることと雑魚しかないデッキで、オレに挑むつもりかよ。
「馬鹿が! そんなカードでオレと戦うつもりか!」
「そうですよ」
ゴブリンプラント。
かなり昔から使われているテーマにして、雑魚にしか使われていないカードだ。
数こそ無駄に豊富だが、どいつもこいつもパワーは低く、数とどうせ後から幾らでも稼げるコストを増やすしか能が無い。
そのくせ、適性が低くても簡単に手に入り、共鳴が低くても使えるという人に使われるために存在している家畜共。
しもべになるために生まれたような低能共。
≪ふぅん。そんな
「あン、知ってるのか?」
≪ああ、そうとも。汚らわしくも我のデッキに加えようとしたカード共だ。まだ使っているとはのぉ≫
「裏面に傷がついただけだからな、スリーブで覆えば対戦に問題はない。対応は?」
≪ホホホ。呪われ、縛られ、死人のような手ではそれぐらいしか使えぬのだろう。となればそのデッキに入っているのは剥製共か?≫
「対応なしですね、プレイに成功――場にでたことで、<降る
燃え盛るゴブリンが出現し、オレの夜が破壊された。
「あ゛?」≪なっ≫
「ターンエンド。どうぞ、そちらのターンです」
ふ、ざけやがって!!
「オレのターン! ドロー!」
ぶち殺してやる!!
「オレは土地を1枚セットし、<
「【夜侵】の効果だな。だが追撃者は夜侵1、コストは1つしか減らないぞ」
「それで十分だ! さらに場に出たことによって楔カウンターが一個重なり、パワーとタフネスが1ずつ上昇する!」
「【復帰】1回分だな、通します」
「バトルだ! ネズミで攻撃!」
「ライフで受けます」
まずは挨拶代わりの1点ダメージ。
まあ雑魚のゴブリンで受けるなんてことはしないだろうが、こっちはどうだ?
「さらに追撃者で攻撃! こいつは速攻を持ちィ、パワーは3だ!」
「ライフで受けます」
1+3の合計4点ダメージ。
元からのライフからすればもうほぼ四分の一近くが消し飛んだというのに。
「
済ませた顔で淡々とほざきやがる。
苛つくぜ。
「ターんエンド!」
場はがら空きにしてやった。
さあ殴れるもんなら殴ってみろよ。
雑魚のゴブリン共で殺せるもんならなぁ!
・
・
・
「ドロー、<自植林職人アッキー>を召喚、ターンエンド」
う。
「ドロー、<胞子ゴブリン>を召喚、ゴブリントークン2体が並びます、ついでに3コスト払ってアッキーの効果でトークン1つ増やします、ターンエンド」
う。
「ドロー、魔法<胞子爆裂>を発動。手札の数だけゴブリントークが並びます、土地をセットしてターンエンド」
うぜえぇえええ!!
「雑魚どもが! 並びやがって!!」
殴っても、殴っても、数が減らねえ!
しかもろくに攻撃してこないから、こっちの土地が増えない。
しかも奴が相殺を狙うのはネズミのときぐらいで、追撃者や<断罪の執行者>などのアタックに関しては一体ずつ足止めをするだけ。
おかげでダラダラと戦いが長引いている。
「生き汚えンだよ! 俺のターン! ドロー!」
!
ようやく来やがった!
「オレはぁ、手札から魔石<降る
「通します」
「なら再び、夜よ、来い!」
二度目の夜を展開。
「さらに、オレは手札から<夜疾猟団《ナイトレイダー》・血魂の魔女>を召喚!」
1枚目の魔女は打ち消されてて戸惑ったが、2枚目が通るなら。
「通します。烙印コストは?」
「当然払うに決まってんだろ! 2コスト支払い、場にいるクリーチャー全てに楔カウンターを付与する! 当然、魔女にも乗る! 夜の効果で更に倍だァ!」
場に並ぶオレの下僕共に加えて、有象無象のゴブリン共に血の呪い――楔カウンターが重ねられる。
それもどれもこれも2つずつ。
「魔女の効果! 魔女は自分に乗せられた楔カウンターの数だけパワーが上昇する、つまり2だ!」
魔女は夜疾猟団屈指のパワーとバーン能力を搭載した火力役だ。
こいつが出てる間、コントロールしているクリーチャーが戦闘ダメージを与える度に、こいつに楔カウンターが積み重ねられていく。
その上、楔カウンターが乗っているクリーチャーが
こいつみてえな雑魚を並べる類を一掃さえすれば、一発でフィニッシュまで持ち込める。
だが、その前に――場にある楔カウンターは10を越えた。
土地は残り1枚だが……
「魔法<濁る儀式>を発動、オレは3コストを得る!」
さあ来い。
≪待ちわびたぞ≫
「条件は揃った! オレは手札から<夜疾猟団《ナイトレイダー》・夜疾の女王「対応します」ま?」
「<濁る儀式>の発動に、
このタイミングで強化?
「ぁあ゛?! なんの意味が……、あはは! 馬鹿が!」
そういえばこいつ、マグラの元奴隷だったな。
なるほど。
「楔カウンターを減らしてスカさせるつもりだったか?」
「3コスト浮いてますよ」
「知ってんだよ! だがな、血塊の魔女は死んだクリーチャーの楔カウンターを回収する能力がある! お前の捧げた奴らからカウンターは移される!」
「3コスト浮いてますよ」
「オレは、手札から<夜疾猟団《ナイトレイダー》・夜疾の女王マグラ>を召喚する!」
「3コストしか浮いてませんよ」
「マグラは場にある楔カウンターが10以上ある時、そのコストが2まで減るんだよ! だから」
オレはボードに叩きつけた最強の女王、マグラの心地よい力を待ち構えながら笑った。
ブブー、という音が聞こえるまでは。
「あ゛?」
「3コストしか浮いてませんよ」
「ん、ナ! イカれたのか、このガラクタが!?」
実家から持ち出してやったバトルボードだが、ついにイカれたのか!?
何度もボードを叩いても正常に稼働しない。
メインカードとファイターのライフの同調を記す
くそ、なにが一族に伝わる祭器だ。こんなところで――
≪ディール! なにをしておる!≫
「何って見ればわかんだろ、ボードがイカれ≪愚か者が!≫」
≪我を呼ぶ条件が整っていないのはわからんのか!?≫
「3コストだけ浮いてますよ」
「はぁ?!」
盤面を見る。
血塊の魔女の楔カウンターは……増えていない。
「馬鹿な! なにヲした!? 確かにカウンターは10を超えて」
「――<夜疾猟団《ナイトレイダー》・血魂の魔女>の効果を説明します」
オレの言葉を遮るように、目の前の男が声を上げた。
「コスト3、タイプ・死霊、パワー(X)/タフネス3。夜侵2を持つ」
口元は手札で隠し。
「彼女を召喚する時に烙印(2)――追加で2コスト支払ってもいい。その場合、戦場に存在する全てのクリーチャーに楔カウンターを1つ付与することが出来る」
背筋は真っ直ぐに伸びていて。
「血魂の魔女のパワーは、重ねられた楔カウンターの数と等しく」
目つきは。
「彼女が場に存在している間、彼女を除くクリーチャーはダメージを与えられる度に、楔カウンターが1つ付与される」
真っ直ぐな目つきは。
「そして」
身震いするほど――渇いていた。
失望したような目だった。
もう見ると思っていなかった目だった。
「彼女を除くいずれかのクリーチャーが
そんなものは知っている!
自分のカードだと言い返そうとして、思い出した。
――ゴブリンを2体生贄に捧げて、ゴブリンクリーチャーが+2/+2の修正を受ける。
生贄。
生贄だと!?
「サクリファイス・エスケープか!?」
やられた!
破壊ではなく、死亡!
「最後の効果。魔女の起動効果、X以下のコストを支払いステイすることによってクリーチャー或いはプレイヤーにX点分のダメージを与えることが出来ます」
ご丁寧に最後まで説明しやがった男の煽りに、歯を噛みしめる。
マグラを呼び出す事は出来ない。
これは正規召喚するには8コストの最上級クリーチャー、性能は絶大だが、当然3点程度で呼べるわけがない。
「解説ごくろウさまだ」
「どうも。次のフェイズまで動くか? コストバーンで焼かれますが」
「んな間抜けするかよ――出し惜しみはなしだ。召喚」
カードのテキストを念の為確認し、ボードへと叩きつける。
次のターンで出して万全な展開をするつもりだったが。
「来い! <
夜の闇を引き裂いて、銀の扉が生み出される。
それは神ノ門。
それは冥界の門。
雨の音を響かせて、扉が開く。
銀色の雨を引き連れて、黒い餓鬼の姿をしたクリーチャーが出現する。
「さあ、ここからが本当の夜だ! 祈りな、運がいいだけの凡夫が! バトルだ!」
こいつの力は絶大だ。
今まで並べたクリーチャーの力もある。
だというのに――目の前の男は。
男の目だけが。
「お前に夜を渡れるのか」
ただひたすらに。
つまらそうな無感情な目が、オレを貫き続けていた。
畏れるもの、祈るもの、傅く物がある限り
永遠に朽ちぬ黄金である
――夜疾の女王マグラ