(cache)原嘉孝(timelesz)×いとうあさこ「本多劇場は特別な場所。千秋楽は二人で泣いてるかも」 [ページ 7] | Numero TOKYO
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原嘉孝(timelesz)×いとうあさこ「本多劇場は特別な場所。千秋楽は二人で泣いてるかも」

ドラマの制作現場とは、さまざまなスタッフとキャストが集まるだけにトラブルはつきものだ。ドラマ『イグナイト-法の無法者-』や『全裸監督』などの脚本を手がけてきた山田能龍がドラマ制作の裏側で繰り広げられる生々しい人間模様を描いた舞台『ドラマプランニング』。主人公のドラマ制作会社の若手プロデューサー・青野貴則を演じるのはtimelesz加入後、初の舞台主演となる原嘉孝。青野が携わるドラマの主演俳優の名物マネージャー・鏡原麻衣子を演じるのは山田能龍が主宰する劇団・山田ジャパンに所属し、タレントとしても活躍するいとうあさこ。約一年半前の山田ジャパンの舞台『愛称⇆蔑称』で初共演、その後timeleszの冠番組『timeleszの時間ですよ』でも共演を果たし、厚い信頼関係で結ばれた二人の対談をお届けする。

「山田ジャパンの舞台にまた出られることがとても嬉しい」──原

──原さんはtimelesz加入後初の主演舞台として『ドラマプランニング』への参加が決まった時、どう思いましたか?

原嘉孝「昨年、同じ山田ジャパンさんの舞台『愛称⇆蔑称』に参加させていただいて、それが終わってすぐに山田さんたちと2025年のスケジュールの話になったんです」

いとうあさこ「『愛称⇆蔑称』の打ち上げで既に『またお願いしますよ!』みたいな空気が双方から出てたよね」

「そうですね。『またお願いします!』って言われても結局話が進まないパターンはよくありますが、すぐに具体的なスケジュールの話になったので『本当のやつだ』と思いました(笑)」

いとう「山田ジャパンの劇団員からもお客さんからも、原嘉孝という役者が素晴らしすぎるのですぐにまた会いたい、という声が上がっていて。本当は次の公演も是非!という感じだったんですが、それはさすがに原先生はうちの劇団員じゃないしということで(笑)、2つ先の『ドラマプランニング』のオファーをさせていただきました」

「こんな短いスパンで同じ劇団とご一緒することはなかったですし、めっちゃ嬉しかったです。山田ジャパンという劇団自体がとても素敵なんです。『愛称⇆蔑称』であさこさんとご一緒して、あさこさんから下の世代を育てようという気持ちをひしひしと感じました」

いとう「私はただ山田ジャパンの舞台を観てほしいっていう気持ちが強いんですよね」

「『愛称⇆蔑称』は、僕のことをSTARTO ENTERTAINMENTに所属していると知らずに観ているお客さんがほとんどだったのにもかかわらず、僕に興味を示してくれる方が多かったことがとても印象に残っています」

いとう「『何あの子?』って反応してるお客さんがとても多かった」

「昔は出演者のクレジットの原嘉孝という名前の後に(STARTO ENTERTAINMENT)とか(ジュニア)という表記が入っていたんですが、アイドル事務所のフィルターを外して原嘉孝として戦っていきたいと思って、取ってもらうようになりました。だからこそ『愛称⇆蔑称』を観た方が僕を評価してくださって、また山田ジャパンの舞台に出れることがとても嬉しいです」

いとう「でも今回は(timelesz)と入れた方がいいんじゃない?(笑)」

「はい。今の僕はグループを背負って、グループの名前を広げたいと思っているので今後は是非入れさせてください」

「原先生は作品に対する向き合い方がプロ中のプロ」──いとう

──いとうさんは『愛称⇆蔑称』で原さんとご一緒してどんな印象を持ちましたか?

いとう「私が言うのもおこがましいのですが、まず演技力が素晴らしいです。作品や役に対する向き合い方がプロ中のプロ。役としてセリフを自分の中に入れて、それを発した時の力がここまである人はなかなか見たことがありません。性格もとても明るく優しくて、強いのか柔らかいのかわからないんですよね。いろいろな面があるなと」

「魅力的ですよね(笑)」

いとう「魅力的だよね(笑)。先輩っぽく劇団の後輩たちを食事に誘う漢気感を出してくれたと思ったら、さりげなく気を遣ったり。悪いところが思いつかないというか。何よりも『良い作品を届けたい』という気持ちが一致するので私にとってはスペシャルな人です。私は稽古場に車で行って、帰りは座長とかを乗せて家に送ることがあるんですが、運転しながらずっと『原先生は良い!』と繰り返し言ってました(笑)」

「興奮して事故らなかったか心配です(笑)」

いとう「それぐらい素晴らしいなと思いました(笑)」

──『ドラマプランニング』はドラマ制作現場が舞台です。原さんは若手プロデューサー、いとうさんは主演俳優の名物マネージャーという役どころです。

いとう「役者のマネージャーさんは担当する役者のことをどれだけよく見せられるか考えているものだと思います。私が演じるのは名物マネージャーということなので、おそらくある程度年齢がいっていて、キャリアもあって、周りに圧みたいなものを出すんだろうなと(笑)。『この現場は私でまわってますよ』くらいのことを思っていたりして。あと、鏡原も私同様トレンディドラマ全盛の時代を経験してきているはずで。きっとドラマへの愛が強いと思うので、そういったことも感じさせられたら素敵だなと思っています」

「プロデューサーというと予算や人と人との調整、作品の評価といったさまざまなことに対する責任がある立場です。今はSNSとかを通して評価が可視化されやすい時代なので、自分が良い作品だと思って送り出しても評価が低くて次の作品が任されなくなってしまうことがある。思わずこれまで僕が出演させてもらったドラマのプロデューサーさんの顔を思い浮かべましたね。あと、僕のドラマ出演に対して事務所のプッシュがあったのかなとか(笑)」

いとう「それとも原くん自体を見つけてくださったのかなとかね。プロデューサーも他のポジションと同じく千差万別だからいろいろな考えの方がいるだろうし」

「そう。いろいろなことを考えてしまいました。出演はtimeleszに入る前から決まっていましたが、timeleszから僕を知ってくれる方も多いでしょうし。何が良い悪いということではなく、全部に僕への愛があると思っています。山田ジャパンさんにも愛があるし、timeleszから僕に興味を持ってくれた方にも愛があるし、もしこれまで事務所のプッシュで決まった仕事があったとしたら、そこには事務所の愛がある」

「毎審査ごとにあさこさんからLINEが来ました(笑)」──原

──いとうさんはtimelesz projectを見て涙されていたそうですが、『愛称⇆蔑称』で共演した原さんのオーディション中の姿をどう見ていましたか?

いとう「金曜22時に、いち視聴者としてNetflixを見ていたら、原くんが『遅れてすいません。原嘉孝です』みたいな感じで登場したので『ちょっと待ってよ!』と腰を抜かしました(笑)」

「キマった目でね(笑)」

いとう「屋外で眩しかったんでしょ(笑)?」

「眩しかった(笑)!」

いとう「あんなに柔和で優しい男がバキバキの目で入ってきて(笑)、もしかして『愛称⇆蔑称』の時の最初はこうだったのかなって。まだお互いどうしていいかわからなかったからバキ原だったのかもしれない」

「確かにバキ原嘉孝だったかも(笑)」

いとう「タイプロで初めて彼の歌とダンスを拝見した時に、どういう感情かはわからないんですが、涙が止まらなくなりました。配信はタイムラグがあるのでその間に審査に落ちてるかもしれない、と思って迷った挙句、『返信不要』と入れて『知らない原先生を見せていただいて、もう感動しかない。頑張ってと言っていいか分からないけど頑張って』とLINEしてしまいました。そうしたら返信をくれて。我慢できなくて2回くらいLINEしましたね」

「2回じゃなくて、毎審査ごとにLINE来てましたよ(笑)。全部『返信不要』と書いてあったけど、先輩からのLINEを無視できるわけないじゃないですか」

いとう「あははは。全パフォーマンスで、知らない原嘉孝を見せてくれたから涙が止まらなくて思わずLINEしてしまいました。でも『ここが良かった』とか書いてしまうと変に意識してしまうかもしれないから、漠然と『良かった』というメッセージを送りました。2月15日の朝10時からの配信で原先生がメンバーに選ばれたことを確認して、『おめでとう』って送って、そこでようやく『あそこの審査、片足でよく座ったね』とか『あそこの子音を残す歌い方が良かった』とか具体的なことをお伝えしました(笑)」

「timelesz projectを見てたら原先生が出てきて腰抜かしました」──いとう

──原さんはtimelesz、いとうさんは山田ジャパンというチームに属していますが、チーム活動の魅力をどんな時に感じますか?

「僕は基本的に誰かと群れている時間が好きなんです。スポーツでいうと、ドッジボールとサッカーとバレーボールを習っていて全部チームスポーツでした。今の事務所に入ってから15年間、グループでデビューをすることを前提に活動してきたので、そもそも誰かと切磋琢磨をしながら喜びを分かち合ったり、時には衝突したりすることが好きです」

──最近チーム活動の良さを特に実感したことはありますか?

「timeleszのライブです。timeleszとしての活動が始まって、バラエティとかいろいろやらせてもらってきましたが、アイドルといえばライブだと思っているので、8人でライブをやるまでは完全にひとつのグループになれていないような感覚が個人的にはありました。でも6月から初めてのツアーが始まって、お客さんの前で汗水垂らしながら約2時間を8人でやり切れたことで強い絆が生まれた気がしています」

いとう「私はバラエティとかは基本ひとりで出ているので、チームで芝居を紡いでいく感覚に痺れます。そもそも山田ジャパンを18年前に旗揚げした時は芸人も多くて、コメディ色の強い作品ばかりやっていました。毎公演後、飲みに行っては『あそこすべったね』とか『でも面白いと思うから明日こういうふうにやってみよう』とか『あそこは間(ま)が違ったんだよ』とか話してました。今は初期メンバーは4人しか残っていませんが、今でもみんなでゴールを決める感覚が強くあって、その気持ち良さはひとりでは絶対に味わえないと思っています」

「timeleszは8人いてそれぞれ得意なことが違います。8人が揃っている時は8人で頑張ればいいけど、それぞれが外で頑張ってそこで得たものをグループに持ち帰って掛け算になる。チームなんだということが実感できてめっちゃ楽しいです」

いとう「原先生の役割はお笑い?(笑)。『踊る!さんま御殿!!』で『踊るヒット賞』をもらってましたもんね?」

「お笑いじゃないです!(笑)。芝居でグループに還元できたらいいなと思っています」

二人にとって、下北沢の本多劇場は特別な場所

──『ドラマプランニング』は下北沢の本多劇場で上演されます。原さんは舞台のお仕事を始める前、下北沢でいろいろな作品を見られた経験があるそうですが、お二人は下北沢にはどんな思い出がありますか?

いとう「山田ジャパンの旗揚げ公演は本多劇場の隣の地下にある楽園という小劇場でした。そこで山田とかと『いつか本多劇場に立とうね』と言っていて、2022年に初めて立てた時は会場に入る時点で泣きました(笑)。でもコロナ禍だったので隣の席を空けて、お客さんは半分しか入れられなかった。それでも毎公演そこに立てた喜びを感じていましたが、まだ本多の完成形の景色は見れていないので、『ドラマプランニング』で立つ本多のステージからの景色を見てどういう気持ちになるんだろう?と思っています」

「僕はジュニア時代のお金がなかった時に初めて舞台のお仕事をさせてもらったんですが、舞台の勉強をしようと思って三千円とかの当日券を買ってメモ帳を片手に下北の劇場を回っていました」

いとう「何をメモするの?」

「何が大事かもわからないので、とりあえず『この役者さんのペットボトルの飲み方が良かった』とメモしたり、何か違和感を感じたらその理由を考えて殴り書きで書いて、終演後に見直したりしていました。本多劇場は三千円とかでは入れないので行けなかったんですが、いろいろな先輩が『本多はやっぱり特別だよね』とおっしゃるので、自分の中で本多劇場に対する思いが募っていった中で、今回山田ジャパンさんの作品で初めて立つことができます」

いとう「千秋楽は二人で泣いてるかもね(笑)」

「本当ですね(笑)。しかも僕、数年前まで5年くらい下北に住んでたんです。夢を追う人が集まる街っていう憧れもあるので、下北はとても思い入れが強い街です」

──お二人は約25歳差ですが、お互いの世代に対して何か感じることはありますか?

いとう「原先生くらいの世代はよく何とか世代っていうので括られますよね。原先生はゆとり世代?」

「そうだと思います」

いとう「あとZ世代とか。上の世代からすると、そんなに良い響き方をしていなかったんですが、原先生とご一緒した時に世代は別に関係なくて、その人の育ってきた環境や感性で人間性は育まれるんだな、と再確認させてもらいました。私は下積みが長いですが、原先生も長いという共通点もあって、原先生には下の世代という感覚があまりなく、同じ作品で同じゴールを見ている人という認識があります」

「僕の同世代は割とすんなり転職を考えるし、僕も友達に『辛いなら辞めなよ』と言っちゃうんです。何かひとつのことに執着しないのは今の時代のひとつの正解でもあると思っていて。でもあさこさんのことを知れば知るほど、こんなに諦めずにこの業界に執着してることに──」

いとう「辞めないんだよね!(笑)」

「そう(笑)。マジで努力してきた方なんだなと。だからこそ何か問題が起きても動じないし、人の苦労がわかる。取材の合間も座らずにずっと動いていて、制作側の動き方をしているんです(笑)」

いとう「今回は山田ジャパン側の人間だからっていうのはあるよ?」

「でもテレビの現場でもあまり座ったりしないっておっしゃってたじゃないですか(笑)。それが良い悪いではなく、僕はそっち寄りの人間で、いとうあさこジュニアなので(笑)、心がパッて開けるタイプの上司に出会えたなと思っています」

いとう「上司(笑)。 ありがとうございます」

『ドラマプランニング』
脚本・演出 /山田能龍
出演/原 嘉孝、いとうあさこ、松田大輔(東京ダイナマイト) 、永山たかし、清水麻璃亜ほか
企画・製作・主催/らでん

<チケット一般発売日>
2025年8月5日(火) 14:00~
公式HP/http://yamadajapan.com/stage/drama-planning/
公式X/@yamadajapan2008

<公演日程>
本多劇場 2025年9月26日(金)〜10月5日(日)

Photos : Sasu Tei Styling : Kyu(Yolken/Yoshitaka Hara) Hair & Makuep : Kiyoko Ninomiya(Yoshitaka Hara) Interview & Text : Kaori Komatsu  Edit : Naho Sasaki

Interview / Post

「舞台はやっぱり、怖いですよ」——森田剛が『ヴォイツェック』で挑む限界のその先

舞台俳優としても、独自の存在感を放つ森田剛が、新たに挑むのは心に傷を負った兵士の悲劇だ。19世紀を代表する未完の戯曲『ヴォイツェック』を、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でも知られる劇作家ジャック・ソーンが、1981年の軍事的緊張下にあるベルリンを舞台に再構築。幼少期のトラウマやPTSDに苛まれ、愛と嫉妬に囚われるイギリス人兵士ヴォイツェックの運命が描かれる。演出を手がけるのは、新国立劇場の芸術監督・小川絵梨子。この注目作に挑む森田剛が、翻訳劇ならではの面白さと葛藤や、舞台という場への思いを率直に語った。

心の傷を抱えながら、戦争と背中合わせの世界に生きる

——今回、初めてタッグを組む演出家の小川絵梨子さんについて、どのような印象がありましたか。

「小川絵梨子さんはご一緒したいと思っていた演出家のおひとりでした。何年か前に西尾まりさんと共演したときに、西尾さんが『森田くんは小川さんの演出が合いそうだよね』と言ってくれたんですね。それが記憶に残っていて、小川さんの舞台をいくつか拝見しつつ、いつか機会があればと思っていたら、今回、お声がけいただきました」

——小川さんの演出に期待していることは?

「今回は小川さんだけではなく、伊原六花さん以外の共演者は、みなさん“初めまして”なんですね。舞台は人間関係で出来上がるものなので、みなさんとゼロから築いていけることが楽しみです。最初は、自分がどんな人間かまだバレていないので、ネコを被ることもできますしね(笑)。お互いに考え方や動き方が予想できないからこそ、新しい刺激を受けるだろうし、自分にとっても発見や気付きがたくさんある舞台になるんじゃないでしょうか。今回は大変な作品になりそうなので、お互い助け合って、アイデアを出し合いながら、イメージをしっかり芝居に落とし込んでいこうと思います」

舞台の上で感じる怖さや緊張感は、今の自分に必要なものだった

——伊原六花さんとは2024年の舞台『台風23号』でも共演されていますね。

「前作では、同じシーンで演じることは少なかったんですが、彼女は身体の使い方が上手で、見ていて自由で面白いという印象がありました。今回はまた違う役柄なので、新しい一面を見つけることができるんじゃないかと楽しみにしています」

——『ヴォイツェック』の原作は19世紀の劇作家、ゲオルク・ビューヒナーの遺稿です。今回の上演は20世紀に翻案したニュー・アダプテーション版ですが、19世紀前半が舞台の原作と、現代の今作に通底するものは?

「昔も今も、みんな傷付いていることを隠しながら必死に生きています。世界のどこかでは常に戦争が起きていて、それがいつ終わるかもわからない。19世紀であれ現代であれ、ひとりの人生と政治的な状況が背中合わせである世界だということは変わりません」

「翻訳劇の“負荷”が、自分を超えさせてくれる」

——ヴォイツェックという人物については、どんな印象がありますか。

「ヴォイツェックは、純粋でまっすぐな人物です。その純粋さは大人になると霧がかかってしまうものだけど、彼はずっと持ち続ける。自分自身もそうありたいと願っているし、そういった役柄にも興味があるので、この人物を大切に演じたいと思っています。ただ、彼は純粋だからこそ堕ちていくんですよ。そこも理解できるし、想像できるところでもあって。彼の抱える心の傷に、戦争や政治的なこと、母親のことなどが複雑に絡み合っていくわけですが、それを小川さんが舞台でどう演出するか、ぜひ楽しみにしてください」

——以前、「翻訳劇には苦手意識がある」と答えてらっしゃいましたが、それはどういった点で?

「翻訳劇は、海外の言語を翻訳しているので、言葉がしっくりこないことがあるんですね。稽古しながら、あまりにも変だと感じたら、セリフに言葉を足したり削ったりして調整することもあるし、言葉の意味や背景を調べて、自分なりに落とし込んでいくこともあります。そもそも、日本人の自分がイギリス人のヴォイツェックを演じること自体、違和感がありますよね。でも、その“違和感”が、翻訳劇特有の面白さだとも思うし、翻訳劇だから思い切って演じられる部分もあるんです。翻訳劇は自分にとっては挑戦です。そういう役をいただくことは、とてもありがたいことなんです。自分では限界点のストッパーを外すことはできないから、負荷のかかる役を演じることで、これまでの自分を超えていけたら。大変ですけど、やりがいを感じています」

——舞台の公演中、役がプライベートまで影響することは?

「公演中は、頭の中をセリフがぐるぐると駆け巡っているんですね。考えるつもりがなくても、頭のどこかに残っているというか。全部、消せたら楽なんでしょうけど、公演中は自分のどこかに役がいることで、ひらめきにつながったり、何かに気付くきっかけにもなるんですよ。公演中はこの感覚を大切にしています」

 ——ここ10年以上、コンスタントに舞台のお仕事が続いていますが、ご自身にとって舞台のお仕事を選ぶ意味、舞台ならではの魅力を教えてください。

「たくさんありますが、ひとつは自分の性格が舞台に合っているんだと思います。一度、幕が開いたら最後まで終わらないこと、目の前に観客がいるという空間。お客さんがいる以上、途中で辞めることなんて出来ないじゃないですか。舞台は怖いですよ。緊張感もありますしね。でも、それは普段、生活している中では感じられないものですし、その刺激が自分には必要なことだと思います」

——今回の公演は地方公演を含めておよそ3カ月の長丁場ですが、長期間コンディションをキープする方法は?

「特に方法なんてありません。運としか言いようがないですね。身体も声も大事にしているつもりでも、どうにもならないこともある。ただ、自分だけではなく、この舞台に関わるみなさんは、何があっても最後までやり切る覚悟で集まっています。できる限りのことをやって、あとは運に任せます」

——最後に、メッセージをお願いします。

「この戯曲は、映像的ではあると思うんです。だからこそ、すごいものが出来るような気がしています。チャレンジングな舞台になると思いますし、舞台上に作り上げたものとリアリティが混在して、違和感や不穏さを感じさせるような、“気持ちが悪い”ものができそうな予感がしています。芝居とはいえ、目の前で人が生きている瞬間を見ることができるので、あまり舞台に馴染みのない方にも観ていただきたいし、舞台が好きな方も、新しい発見のある作品になると思いますので、ぜひ足を運んでください」

パルコ・プロデュース 2025『ヴォイツェック』
原作/ゲオルク・ビューヒナー
翻案/ジャック・ソーン
翻訳/髙田曜子
上演台本・演出/小川絵梨子
出演/森田剛、伊原六花、伊勢佳世、浜田信也、冨家ノリマサ、栗原英雄ほか
企画・製作=株式会社パルコ

<公演日程>
東京公演:2025年9月23日(火・祝)~9月28日(日) 11月7日(金)~11月16日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
岡山公演:2025年10月3日(金)〜10月5日(日) 岡山芸術創造劇場 ハレノワ 中劇場
広島公演:2025年10月8日(水)~10月9日(木) 広島JMSアステールプラザ 大ホール
福岡公演:2025年10月18日(土)~10月19日(日) J:COM北九州芸術劇場 大ホール
兵庫公演:2025年10月23日(木)〜10月26日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
愛知公演:2025年10月31日(金)〜11月2日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール

Photos : Kenta Karima Styling : So Mastukawa Hair & Makeup : TAKAI(undercurrent) Interview & Text : Miho Matsuda Edit : Naho Sasaki

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September 2025 N°189

2025.7.28 発売

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