九州新幹線、なぜ高架橋の上で「雨宿り」? 運休時でも新幹線が動いた真相とは
九州地方は、8月9日ごろから集中豪雨に襲われ、各地で被害が相次ぎました。鉄道にも大きな影響があり、日豊本線の西都城~鹿児島間、肥薩線の吉松~隼人は、路盤流失などの被害を受けたため、当面の間運休となるとのこと。その他の各路線でも、列車の運転見合わせが相次いでいました。 【画像】「かさ上げ」された場所にある新幹線の車両基地 九州新幹線では、11日は始発から午後まで全線で運休となりました。このような場合、九州新幹線の車両は運用する列車がないため、駅または車両基地で待機している……のかと思いきや、熊本市内では、新幹線車両が高架橋の上に何編成も留置されている様子が目撃されていました。 雨が降る中、なぜ九州新幹線の車両は高架橋の上に集結したのか。それは、車両基地で雨の影響による重大な被害、すなわち浸水被害を避けるためでした。 2019年に日本を襲った台風19号(令和元年東日本台風)では、北陸新幹線の車両基地であるJR東日本の長野新幹線車両センターが、千曲川の決壊による洪水に巻き込まれてしまいました。これにより、基地内の設備はもちろんのこと、留置されていたE7系・W7系計10本も浸水し、全編成が廃車に。結果、北陸新幹線は運転再開後もしばらくの間は本数を減らしたダイヤでの運転を余儀なくされたほか、不足する北陸新幹線の車両運用を補うため、上越新幹線に投入されていたE7系が北陸新幹線に転用され、置き換え予定だったE4系「MAX」が半年近く延命するなど、後々にまで影響を与える事象となりました。 これを受け、国土交通省は2019年、新幹線を運行するJR各社に対し、車両基地の浸水対策を取りまとめるよう指示。各社は、浸水被害が予想される場合、留置車両を車両基地から高架線などへ避難させるという計画を策定しました。 想定される最大規模の降雨があった場合に浸水被害が想定される車両基地は、今回実際に避難する様子が見られた九州新幹線の熊本総合車両所のほか、JR東日本の長野新幹線車両センターおよび新庄運転区(当時)、JR東海の浜松工場および鳥飼車両基地、JR西日本の博多総合車両所岡山支所および同広島支所の計7か所です。このうち、車両の留置機能を持たない浜松工場を除く6か所で、車両避難計画が策定されています。 なお、豪雨時の車両避難計画が策定される発端となった長野新幹線車両センターは、浸水に対し全くの無対策ではありませんでした。近年作られた新幹線の車両基地では、多くが軟弱地盤対策も兼ねて盛土構造で建設されています。長野新幹線車両センターは1メートル弱のかさ上げでしたが、最近の車両基地、たとえば西九州新幹線の熊本総合車両所大村車両管理室では、周囲より約10メートルもかさ上げしており、万全の浸水対策が取られています。
西中悠基