「てめえら、舐めてると殺すぞ!」甲子園常連校で壮絶な上級生の暴力「寮生活はまるで監獄」…高校野球「消えた名門校」沖縄水産“80年代の悪しき風習”
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「てめえら、舐めてると殺すぞ!」監獄のような寮生活
この時代の全国的な強豪校はどこでもそうだが、沖縄水産にも情け容赦のない上下関係があった。寮生活はしばしば「監獄」に喩えられた。脱獄不可能と言われたアルカトラズ島の刑務所を想起させるほど、下級生にとってはまさに生き地獄だった。あるOBは、その内実を以下のように証言する。 体育館裏では毎日誰かがロープで縛られてサンドバッグにされ、グラウンドでは1年生がボコボコにされる。学校内にはどこもかしこも暴力が蔓延っていた。 上級生は挨拶代わりに寮の部屋で1年生を正座させ、ロッカーから刃渡り20センチもあるコマンドナイフを取り出してドスッと思い切り床に刺す。 「わかってんだろうな。てめえら、舐めてると殺すぞ!」 問答無用の恫喝だ。この時点で大半の1年生がビビって縮こまる。 入部して1週間はひたすら殴られる。野球部で耐えていけるかを問う通過儀礼だ。この1週間のうちに言葉使い、礼儀、作法、先輩のフルネームを覚えなくてはならない。使える単語は「はい」「いいえ」「なんでしょうか」の三つだけ。かつての体育会系部活の“あるある”だといえるかもしれない。だからといって、こうした暴力や恫喝を美談にするべきではないだろう。
先輩の圧力「お前のエラーで負けたら殺すからな」
ロープを張って1年生同士を戦わせる“賭けボクシング”はまだ可愛いもの。上級生になると、通貨の概念が変わる。ガジュマルの葉っぱを差し出し「パンと牛乳買ってきてくれ」と下級生に渡し、言いつけ通りにパンと牛乳を買ってくると「お釣りは?」と手を差し出される。 試合前に下級生のレギュラーに対し先輩が「お前のエラーで負けたら殺すからな」とプレッシャーをかける。アウトのボール回しで後輩が投げたボールがちょっとでもそれると、先輩からの刺すような視線が襲いかかる。怖いと思いながらも無視して試合に集中していると「おいっ! お前、何無視してんだ。殺すぞ!」。試合中だろうがなんだろうが“殺すぞ”である。ごくまれに下級生の堪忍袋の尾が切れて胸の辺りに思い切り投げたりすると、試合後には恐怖のミーティングが否応なしに始まる。 だが、気性の激しさは戦う男たちの集団としての鎧でもあった。宿敵・興南との試合でも、その獰猛さはいかんなく発揮される。試合前の整列時には互いに睨み合い、ボクシングの世界タイトルマッチかのごとく顔がギリギリまで近づく。「ちゃんと整列しろ!」という審判の声でやっと両軍が離れる。殺気立つ空気はグラウンドに蔓延し、ラフプレーも辞さない。度が過ぎるほどの、闘志溢れるプレー。激しさで胃がキリキリと軋む時代でもあった。
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