気づいたら外に出てた。 鍵かけたっけ…まあいいや。靴ひもも結んでない。
なんとなく歩いてたら、急に胸のあたりがぐわっと重くなってきて、 あ、なんか死にたいかもって思った。
理由はよくわからないけど、そう思ったら急に涙が出てきて、 うわーって声も出て、泣きながら道の真ん中でしゃがみこんだ。
そしたら警察官?のひとが通りかかって、「大丈夫ですか」って声かけてきた。
なんかお水もらって、背中ぽんぽんされて、落ち着いて落ち着いてって言われてるうちに、 あたし、すごい心配されてるじゃんって気づいて、ちょっと承認欲求が上がってきた。
元気になったら、なんか楽しいことしたくなってきて、 週末に犬でも飼おうかな、かわいいやつ。ふわふわしててそんなに大きくない子。
首輪も赤いのにして、散歩して、SNSに写真あげて…って想像してたら、胸がぽかぽかしてきてルンルンになった。
そしたら、道路の向こうから犬みたいな顔した大きなものがこっち見てた。
目がキラキラひかってる。 あ、かわいい、って思った瞬間に足が勝手に前に出た。
ぶおおおって音がして、視界がぐにゃって、スマホが手から落ちた。
画面の中のあたしが、あたしを見てた気がする。
次に気づいたら、白くてよくわからない部屋。
机があるだけでほかはなんにもない。
カウンターの向こうに人が座ってた。
背中がパチンコ屋のチラシみたいにピカピカしてて、見てると頭がふわっとぼーっとする。
「そなたは死したのだ」って、言われた。
そなたって何? ちがう知ってる。なんかムカつく。
「生前において、己の怠惰と私怨をもって、善き者らを扇動し、その信義を利用し、無用の争いを引き起こし――」
なんかエラい人たちが机でしゃべってるやつ…テレビでやってる…名前出てこないけどそういう長いしゃべり。
「幾度となく死を装い、善良なる人々の心をもてあそび――」
「してないし、嘘つくのやめて」って言ってやった。
でも、相手は無視。
なにそれ、あたしのことバカにしてるじゃん。
なんで無視するの、一生懸命話して本当のこといってるのに。
こいつそういう大人なんだ。話すだけむだじゃん。
「そなたには相応しき立場と容貌をもって、同じ世界にて償わせる」って言われた。
紙を渡されて見たら、「同じ世界・五十代男性・独居」って書いてあった。
……よくわかんない。 罪とおじさんの関係もわかんない。
そもそも罪ってなに? だれがきめてるの? 光ってるひとに聞こうと思ったら、暗くなった。
目が覚めたら、畳の匂いと天井のシミと、ごつい毛の生えた手。
胸はぺたんこで、頭皮がツルツル。スキンヘッドだ。
顔も知らないおじさん。
あたしはおじさんになってしまった。