「やり方がでたらめ」「市場原理に反する」迷走した備蓄米放出の目的、振り回された生産者と流通業者 新米出回る端境期に備蓄米がだぶつく懸念も
「生産量に不足があったことを真摯(しんし)に受け止める」(石破茂首相)。「需要が減り続けているという前提に立ち、見通しを見誤った」(小泉進次郎農相)。コメの安定供給に関する関係閣僚会議で増産への転換が発表された5日、政府はコメ政策の誤りを認めた。 【写真】「備蓄米は取り扱いません」と張り紙で意思表示するスーパーも 備蓄米は当初、生産量不足ではなく流通の目詰まりが起きているとして放出された。その後、価格高騰対策に目的を変え、随意契約による安価な備蓄米が流通した。2025年産の新米が出回ろうとする端境期の現在、備蓄米が市場にだぶつく懸念が出始めた。 県内農家の間には、ようやく再生産可能な水準に上がった生産者米価への影響を心配する声が根強い。「やり方がでたらめ。安い備蓄米が残ることで新米の需要が下がったらどうするのか」。新潟市西蒲区の生産者は憤る。 ■ ■ コメ不足が表面化した1年前、農林水産省は「24年産米が出回れば落ち着く」との姿勢を崩さなかった。不足は大都市圏などで24年の春から見られ、コメどころの新潟県でも8月ごろにはスーパーの棚からコメがほとんどなくなる事態となった。合わせて価格も高騰。24年産米が出回り始めた秋になっても価格は高止まりし、農水省の想定は外れた。 江藤拓前農相によって備蓄米の放出方針が打ち出されたのはことし1月。値上がりを目的に在庫を抱える卸や農家がいるとして、放出の目的を「流通の目詰まり解消」とした。民間との集荷競争で、全国農業協同組合連合会(JA全農)など大手業者が集められなかった21万トンが、流通経路から消えたとも言われた。 だが今月5日の関係閣僚会議では、コメ不足の要因は生産量の不足にあったことを石破首相も認めざるを得なかった。 ■ ■ 備蓄米は1993年の大凶作「平成の米騒動」をきっかけに、95年から制度化された。著しい不作や災害など緊急時に備えて国が保有。放出に際し、JA全農などに対して将来的な買い戻し条件を付けた。 ことし5月に小泉氏が農相に就任すると、価格引き下げが備蓄米放出の明確な目的となった。店頭価格5キロ2千円になるよう、随意契約で小売りに放出。国が市場に介入し「価格破壊」を狙う形となった。 こうした放出を集荷・卸売業者は疑問視した。集荷、生産を手がける「せいだ」(新発田市)の清田雅人社長(64)は「本来災害など緊急時のためにあるはずの備蓄米。価格を下げるために使うのは市場原理に反している」と強調する。 小泉農相は随意契約の備蓄米などによって「(市場を)じゃぶじゃぶにしていく」とも発言。県農協中央会(JA県中)の伊藤能徳会長ら北陸4県の農協中央会は6月、「過度な政治介入は生産意欲をそぐ」と農水省に申し入れをする事態になった。 ここに来て県内の流通関係者は不安を募らせる。2025年産米に影響しないよう今月末までに販売することが条件とされているが「精米作業が月内に終わらない」(長岡市の卸業者)ところもある。5日には、随意契約の備蓄米で申し込みの1割に当たる約2万9千トンがキャンセルされたことも明らかになった。 新潟市のある小売業者の元には、7月に申し込んだ随意契約の備蓄米がまだ入荷していない。「とうてい月内に販売はできない。もうすぐ新米が入荷する時期なのに」