嘘の夢の話 3月7日
取調室のような狭い部屋で面通しを受けている。でも私は何の事件が起こったのか全く知らず、もちろん犯人の顔もわからない。そんなことはお構いなしに、刑事風の男はノートパソコンをこちらに向けて次々と容疑者の写真を見せてくる。
パソコンの画面には実にいろいろな種類の人が映し出される。見知らぬ一般人やテレビでよく見る芸能人、歴史上の偉人たちの肖像画からアニメや漫画のキャラクターに至るまで、とにかく人の形をしているものを無作為にかき集めたようなラインナップに私は混乱する。一方、刑事風の男は私の煮え切らない態度にイライラしているようだ。彼の機嫌を損ねないために、私はたまたま目に付いた中原中也のポートレートを指して「この人かも」と言う。無実の一般人を犯罪者に仕立て上げるわけにはいかないが、中也なら故人だしまあいいかなと思ったのである。男は私の判断にいささか面食らったようだが、ともかく私は解放される。帰り際、男が上司らしき相手に電話をかけているのが聞こえる。「中原中也が犯人って、そんなことがあるんですかね」と彼は言っている。


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