一つの国家に、二人の大統領がいる。それぞれの大統領が、自分が本物だ、相手は偽物だと言っている。日本史にも南北朝時代というのがあった、あれと同じである。どちらの大統領を本物と認めるか、それぞれの国の判断になる。これまで、その態度を明らかにした国は、米国、フランス、そして欧州連合(EU)である。もちろん、ウワタラ大統領が本物。そして、バグボ大統領は偽物、という立場である。
オバマ大統領は、12月3日に声明を出した。これは、憲法院がバグボ当選を宣言し、そして引き続きチョイ国連代表が、そのバグボ当選は認証できず、ウワタラ当選という選挙管理委員会の結果の方が正しいと発表した、その直後である。
「私は、アラサン・ウワタラ氏が11月28日の投票において当選したことに、祝意を表明する。選挙管理委員会も、国際選挙監視団も、国連も、すべてこの投票結果を確認し、その信頼性を裏書きしている。コートジボワールは今や分岐点にいる。前大統領のロラン・バグボ氏に対し、この結果を認めて尊重し、コートジボワールが平和で民主的な未来に進めるようにすることを求める。」
さすが米国は、民主主義が損なわれるような行為には、断固たる態度を迷わず打ち出す。
国連の潘基文事務総長は、チョイ国連代表の認証不能宣言の直後、12月3日にすでに、ウワタラ氏当選への祝意を送っている。
「事務総長は、アラサン・ウワタラ氏の選出を祝するとともに、永続的な平和と安定と、コートジボワールの再建のために、力を尽くすように求めた。さらに、事務総長は、ロラン・バグボ大統領には、国のために行うべきことを行い、円滑な政権交代が進むように協力することを求める。」
欧州連合(EU)も反応は早い。同日(12月3日)に、アシュトン外務・安全保障政策上級代表(外相)が声明を出した。
「私は、ウワタラ氏が当選したことに、祝意を述べる。そして、選挙過程におけるすべての当事者に対して、国民が表明した意思を尊重し、国連代表により認証された選挙結果を受け入れるように、呼びかける。」
この立場は、EUの加盟国であれば皆、共有することになる。EUがこう言いさえすれば、ウワタラ氏当選を、各国が個別に確認する必要がない。
それでも、フランスだけは、別に声明を出している。フランスは、12月3日、次のように発表した。
「国連の潘基文事務総長および、彼の特別代表(チョイ代表)が、コートジボワール大統領選挙におけるアラサン・ウワタラ氏の勝利を確認した。・・・サルコジ大統領は、選出された新大統領アラサン・ウワタラ氏に、祝意を送る。コートジボワール国民が信託した高貴な使命を、彼が成功のうちに果たせるように祈るとともに、挙国一致の政府をつくるとの彼の意図を歓迎する。」
さらに、サルコジ大統領は、追い打ちをかけるように、12月4日、訪問先のインドで、次のように宣言した。
「選挙管理委員会は、アラサン・ウワタラ氏の明白かつ揺るぎない勝利という選挙結果を宣言した。国連代表は、投票を精査し、アラサン・ウワタラ氏の勝利が揺るぎないものであることを確認した。国連の潘基文事務総長も、これを裏書きし、ウワタラ大統領の当選を祝した。・・・・コートジボワールで、一人の大統領が選ばれ、国際社会全体と、国連がこれを認めた。その大統領とは、アラサン・ウワタラ氏である。フランスは、民主主義と、コートジボワール人が自由に表明した意思を支持する。」
これらの国々は、立場がとてもはっきりしている。バグボ大統領は憲法院のもとで宣誓式を行ったと言っているかもしれないけれど、そんなことにはお構いなく、大統領はウワタラ大統領だけである。バグボ大統領は、大統領とは認めない。
日本は、そこまではっきりした声明を、まだ出していない。ウワタラ大統領が民主的に選出された大統領であることは、それは確かだ。でも、バグボ大統領も憲法院により認定された大統領であることも、これは否定できない。というより、実際に実権を握っているのはバグボ大統領のほうである。日本から見れば、コートジボワールは、大統領二人という、へんな国になってしまったというわけだ。
さて、夜間外出禁止令は今日(12月6日)の午前6時で終わり、明日からはもう何もないと思っていたら、今日の午後1時のニュースになって、やはり夜間外出禁止令が延長されるという大統領令が出されたという。毎晩、夜10時から翌朝午前5時まで。これを12月13日夜まで、ほぼ1週間ほど延長する、ということである。
やれやれ、バグボ大統領はこのまま平常に戻そうとするだろう、夜間外出禁止令などという、世間を緊張させることは、意識して回避するだろうと予想していたのだけれど、どうやらそれは当たらなかったようだ。これからも、夜の外出を控える日々が続くのか。
「いや、理論的に言うと、そんなもの守らなくていいということですよ。」
と欧州のある大使が言う。
「だって、偽物の大統領であるバグボが出した命令でしょう。ウワタラ大統領が出した夜間外出禁止令ならば、尊重しなければいけないが。」
そう考えるのは自由だが、やはり、そういうわけには行かないだろう。軍や警察はバグボ大統領の手にあるから、夜間に外をうろうろすると、やはり拘禁される。
チョイ国連代表が、バグボ大統領が当選したとの憲法院の選挙結果を、認証できないと宣言してから、風当たりが強い。国連の一官僚ごときが、一国の主権的判断に挑戦して、何事であるか。そういう議論が、国営テレビの放送に延々と流れている。
「チョイ国連代表の声明は、彼自身しか拘束するものではない。もし彼が、このような振舞いを続けるならば、わが国からの国外退去を求めるしかない。」
そのように、ジェジェ国連大使が非難する映像が何度も流れる。たしかに、チョイ国連代表は、バグボ大統領の接受をうけてこの国に滞在しているわけであるから、バグボ大統領が「ペルソナ・ノン・グラータ」を発動すれば、国外退去になる。
チョイ代表が退去になるとは、これはとんでもない話だ、と心配していたら、別の大使が言う。
「違いますよ。この国の大統領は、ウワタラ大統領なのです。バグボ大統領が何を発令しようが、チョイ代表は、それは無効な行為であると主張して居座っておればいいのです。」
なるほど、ウワタラ大統領だけを大統領と認めるという立場からは、そういう結論になるわけだ。
「それでですね、例えばウワタラ大統領は、これから各国の大使を任命し派遣する、というようなことを行う。ウワタラ大統領を正統な大統領と考える国では、今までその国にいる大使にはお引き取り願う、ということになります。」
あれあれ、これは厄介な話につながってくる可能性がある。
日本は、どちらの大統領の権威を重んじると考えるべきなのだろうか。それにしても、二人の大統領という、面倒なことになったものである。
オバマ大統領は、12月3日に声明を出した。これは、憲法院がバグボ当選を宣言し、そして引き続きチョイ国連代表が、そのバグボ当選は認証できず、ウワタラ当選という選挙管理委員会の結果の方が正しいと発表した、その直後である。
「私は、アラサン・ウワタラ氏が11月28日の投票において当選したことに、祝意を表明する。選挙管理委員会も、国際選挙監視団も、国連も、すべてこの投票結果を確認し、その信頼性を裏書きしている。コートジボワールは今や分岐点にいる。前大統領のロラン・バグボ氏に対し、この結果を認めて尊重し、コートジボワールが平和で民主的な未来に進めるようにすることを求める。」
さすが米国は、民主主義が損なわれるような行為には、断固たる態度を迷わず打ち出す。
国連の潘基文事務総長は、チョイ国連代表の認証不能宣言の直後、12月3日にすでに、ウワタラ氏当選への祝意を送っている。
「事務総長は、アラサン・ウワタラ氏の選出を祝するとともに、永続的な平和と安定と、コートジボワールの再建のために、力を尽くすように求めた。さらに、事務総長は、ロラン・バグボ大統領には、国のために行うべきことを行い、円滑な政権交代が進むように協力することを求める。」
欧州連合(EU)も反応は早い。同日(12月3日)に、アシュトン外務・安全保障政策上級代表(外相)が声明を出した。
「私は、ウワタラ氏が当選したことに、祝意を述べる。そして、選挙過程におけるすべての当事者に対して、国民が表明した意思を尊重し、国連代表により認証された選挙結果を受け入れるように、呼びかける。」
この立場は、EUの加盟国であれば皆、共有することになる。EUがこう言いさえすれば、ウワタラ氏当選を、各国が個別に確認する必要がない。
それでも、フランスだけは、別に声明を出している。フランスは、12月3日、次のように発表した。
「国連の潘基文事務総長および、彼の特別代表(チョイ代表)が、コートジボワール大統領選挙におけるアラサン・ウワタラ氏の勝利を確認した。・・・サルコジ大統領は、選出された新大統領アラサン・ウワタラ氏に、祝意を送る。コートジボワール国民が信託した高貴な使命を、彼が成功のうちに果たせるように祈るとともに、挙国一致の政府をつくるとの彼の意図を歓迎する。」
さらに、サルコジ大統領は、追い打ちをかけるように、12月4日、訪問先のインドで、次のように宣言した。
「選挙管理委員会は、アラサン・ウワタラ氏の明白かつ揺るぎない勝利という選挙結果を宣言した。国連代表は、投票を精査し、アラサン・ウワタラ氏の勝利が揺るぎないものであることを確認した。国連の潘基文事務総長も、これを裏書きし、ウワタラ大統領の当選を祝した。・・・・コートジボワールで、一人の大統領が選ばれ、国際社会全体と、国連がこれを認めた。その大統領とは、アラサン・ウワタラ氏である。フランスは、民主主義と、コートジボワール人が自由に表明した意思を支持する。」
これらの国々は、立場がとてもはっきりしている。バグボ大統領は憲法院のもとで宣誓式を行ったと言っているかもしれないけれど、そんなことにはお構いなく、大統領はウワタラ大統領だけである。バグボ大統領は、大統領とは認めない。
日本は、そこまではっきりした声明を、まだ出していない。ウワタラ大統領が民主的に選出された大統領であることは、それは確かだ。でも、バグボ大統領も憲法院により認定された大統領であることも、これは否定できない。というより、実際に実権を握っているのはバグボ大統領のほうである。日本から見れば、コートジボワールは、大統領二人という、へんな国になってしまったというわけだ。
さて、夜間外出禁止令は今日(12月6日)の午前6時で終わり、明日からはもう何もないと思っていたら、今日の午後1時のニュースになって、やはり夜間外出禁止令が延長されるという大統領令が出されたという。毎晩、夜10時から翌朝午前5時まで。これを12月13日夜まで、ほぼ1週間ほど延長する、ということである。
やれやれ、バグボ大統領はこのまま平常に戻そうとするだろう、夜間外出禁止令などという、世間を緊張させることは、意識して回避するだろうと予想していたのだけれど、どうやらそれは当たらなかったようだ。これからも、夜の外出を控える日々が続くのか。
「いや、理論的に言うと、そんなもの守らなくていいということですよ。」
と欧州のある大使が言う。
「だって、偽物の大統領であるバグボが出した命令でしょう。ウワタラ大統領が出した夜間外出禁止令ならば、尊重しなければいけないが。」
そう考えるのは自由だが、やはり、そういうわけには行かないだろう。軍や警察はバグボ大統領の手にあるから、夜間に外をうろうろすると、やはり拘禁される。
チョイ国連代表が、バグボ大統領が当選したとの憲法院の選挙結果を、認証できないと宣言してから、風当たりが強い。国連の一官僚ごときが、一国の主権的判断に挑戦して、何事であるか。そういう議論が、国営テレビの放送に延々と流れている。
「チョイ国連代表の声明は、彼自身しか拘束するものではない。もし彼が、このような振舞いを続けるならば、わが国からの国外退去を求めるしかない。」
そのように、ジェジェ国連大使が非難する映像が何度も流れる。たしかに、チョイ国連代表は、バグボ大統領の接受をうけてこの国に滞在しているわけであるから、バグボ大統領が「ペルソナ・ノン・グラータ」を発動すれば、国外退去になる。
チョイ代表が退去になるとは、これはとんでもない話だ、と心配していたら、別の大使が言う。
「違いますよ。この国の大統領は、ウワタラ大統領なのです。バグボ大統領が何を発令しようが、チョイ代表は、それは無効な行為であると主張して居座っておればいいのです。」
なるほど、ウワタラ大統領だけを大統領と認めるという立場からは、そういう結論になるわけだ。
「それでですね、例えばウワタラ大統領は、これから各国の大使を任命し派遣する、というようなことを行う。ウワタラ大統領を正統な大統領と考える国では、今までその国にいる大使にはお引き取り願う、ということになります。」
あれあれ、これは厄介な話につながってくる可能性がある。
日本は、どちらの大統領の権威を重んじると考えるべきなのだろうか。それにしても、二人の大統領という、面倒なことになったものである。
さて、本当に難しいことになってしまいました。日本ではなかなかコートジボワールのことを見聞きする機会が少ないので判断材料に困りますが、一連の動静を見ている限り、何だかどうしても大国間の利権争いが見え隠れするようでなりません。Ivorianの友人は「どうして自国が決定したことにいちいち口出しをするのか。それはこの国が貧しい、アフリカの小国に過ぎないからだろう。以前アメリカの大統領選挙ではたくさんの無効票が出たにも関わらず、G.ブッシュが勝利したし、そのことについて国連も他のどの国も何も言わなかった。私たちはただこの国の平和と発展を望んでいるだけなのに…!!」と悲しんでいました。確かに投票結果自体は民意の表れと言えるのでしょうが、国連にも周辺国にも、もちろん両大統領にも、その心の中で誰のことを一番に考えているのかとお聞きしてみたいと思いました。ちょうどトーゴの大統領のお話を拝読した後でしたので、そのあまりの違いと友人から送られてくる現状が書かれたメッセージをひたすら読みながら、ただただ悲しくなってしまいました。
もちろん私にもどうすることもできませんが、調停に当たっておられるムガベ元南ア大統領には平和の内に収拾をつけてくださることを祈ります。