嘘の夢の話 4月2日
裁判所へ裁判の傍聴に行く。ちょうど今から始まる裁判があるらしいので法廷へ向かうと、同じタイミングで被告人も法廷に入ってくる。もっさりとした感じの中年男性で、手にはなぜか電子レンジを抱えている。じきに裁判が始まるが、裁判長、弁護士、検察、被告の全員が、ほとんど何を言っているのか聞き取れないくらい小声かつ早口で話す。そのため、私には被告の罪状すらわからない。しかし彼らの間では意思疎通がとれているようで、裁判自体はつつがなく進行しているように見える。
そして、どうやら被告人に科せられる量刑が決定したようである。裁判長は、ほぼ口パクと変わらないような声量で判決を読み上げる。被告はそれに対し、動揺するでも不服を示すでもなく、ただ直立して空中の一点を見つめている。次の瞬間、彼は抱えていた電子レンジを、バスケのシュートを決めるみたいに裁判長の頭めがけて放り投げる。ゴン、とその日一番大きな音が鳴り、裁判長は卒倒する。これまでの静寂を打ち破るように、法廷じゅうに大歓声が響き渡る。見ると検察も弁護士も傍聴人も一緒くたになって、被告の男を胴上げしている。だが彼自身は別に嬉しそうでもなく、むしろ強ばったような顔つきで胴上げされ続けている。
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