嘘の夢の話 4月3日
洞窟の入り口付近を服を着たままうろつき回っている。ここら辺に、AirPods Proを格安で売っている店があると聞いたのだ。しかしそんな店は一向に見当たらず、だんだんと日も陰ってきて辺りは暗くなっていく。早く帰らなければと思いつつも、岩陰から今にもその店の主が顔を出すのではないかという気がしてなかなか諦めがつかない。なにしろ、その店のAirPods Proは本当に破格の値段なのである。
だが期待もむなしく、とうとう店を見つけられないまま、辺りは完全な闇に包まれてしまう。不思議と怖くはなく、打ち寄せるさざ波の音を聞いていると落ち着いてくる。海水の冷たさもあまり感じず、むしろ湯船に浸かっているようで快適ですらある。AirPods Proは手に入らなかったが、これもまあ悪くはなくかなと思う。代わりに別のノイズキャンセリングイヤホンを探すかと思い、ズボンのポケットからスマホを取り出して仰天する。私が今までスマホだと思っていたものは、『車輪の下』の文庫本である。
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