嘘の夢の話 6月9日
家で目を覚まし台所に向かうと、私以外の家族(父、母、妹)はすでに食卓に揃っている。彼らは昭和期に使われていたような古臭いパン焼き機を一人一台ずつ持っていて、トーストができるのを今か今かと待っている。父などは機械に顔を近づけすぎて、パンが飛び出したらそのまま目にぶつかってしまいそうである。母と妹も異様に真剣な目つきでパン焼き機を見つめており、声をかけるのがためらわれる。
ところが、パンはいくら待っても焼き上がらない。本来ならとっくに黒焦げになっていてもおかしくないほどの時間が経っているのだが、焦げ臭い匂いもしないし、ジリジリいう音だけが台所に響いている。さすがに付き合ってられないので、私は自分だけでも別のものを食べようと思って冷蔵庫を開ける。ちょうど今川焼きがあったのでそれを食べる。その間も、三人はずっとトースターを凝視している。私はいい加減しびれを切らして、「もう諦めなよ」と言う。すると三人は緊張が解けた様子で「やっぱそうだよね」「別のもん食べるか」などと言い合うが、その声は家族の誰のものでもない、聞いたことのない男の声である。


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