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書籍『あなたは何も所有しない:新金融世界秩序における富と自由への戦い』Carol Roth (元投資銀行家) 2024年 ~コロナ禍で加速した「持たない社会」への誘導計画 元投資銀行家キャロル・ロスが、2030年までに予測される84.4兆ドル(約1.3京円)の富の移転について警告を発している。 世界経済フォーラムの「何も所有せず幸せになる」という予測の背後には、政府・企業・ビッグテックが連携した富の収奪システムが存在する。 新型コロナを機に政府と大企業が手を組み、個人の資産を組織的に移転させる「合法的な略奪システム」が完成しつつある。マイホーム、預金、年金まで、すべてが標的だ。 — 「あなたは2030年までに何も所有しなくなり、それで幸せになるだろう」 これは陰謀論ではない。世界経済フォーラム(WEF)が公式に発表した予測だ。しかし、なぜ「所有しない」ことが幸せなのか?誰がそれを決めたのか? 元投資銀行家のキャロル・ロスは、この美しい言葉の裏に隠された恐ろしい計画を30年の金融業界経験をもとに解き明かす。現在進行中なのは「金融世界大戦」—政府、巨大企業、ビッグテックが連携してあなたの財産を狙う前代未聞の戦争だ。 政府、エリートパワーグラバー、ビッグテックという3つの勢力が、新たな金融世界秩序の構築を目指している。彼らの最終目標は、個人の所有権を剥奪し、すべてを自分たちの管理下に置くことだ。 ✅ 人々が飢えても、ESGスコアは高評価 「持続可能性を投資の新基準にする」—資産運用世界最大手BlackRockのラリー・フィンク会長は2020年、顧客への手紙でこう宣言した。同社が運用する10兆ドル(約1,500兆円)の力で、企業行動を変えると明言したのだ。 その結果何が起きたか?ESG(環境・社会・企業統治)という基準に従わない企業は投資対象から除外され、株価が下落する。逆に従えば投資が集まるが、その代償として企業は株主利益より「社会貢献」を優先させられる。 この仕組みの恐ろしさを物語るのがスリランカの悲劇だ。2021年、同国は有機農業への完全移行を目指し、化学肥料を全面禁止した。結果は農業生産半減、深刻な食糧危機、そして政府崩壊。しかし国際機関は環境スコア98.1点という「優秀な成績」を与えていた。人々が飢えても、スコアは高評価だったのだ。 ✅ 抗議デモ参加者たちのスマホコードが外出禁止に 中国は2021年から世界初の中央銀行デジタル通貨(CBDC)「デジタル人民元」の運用を開始した。政府は「便利な決済手段」と宣伝したが、国民の反応は冷ややかだった。 開設された2億6,100万の電子財布の平均残高は、個人でわずか50セント(約75円)。企業でも4.9ドル(約740円)しかない。なぜこれほど使われないのか? 答えは監視機能にある。デジタル人民元は全ての取引が政府に筒抜けになる。さらに恐ろしいのは「期限付き通貨」機能だ。政府が消費刺激したい時期に配る通貨は、使わなければ消失する。つまり貯蓄という概念が消える。 2022年、銀行預金が凍結された抗議デモ参加者たちのスマホコードが、なぜか突然「赤」に変わり外出禁止となった。デモ終了後、コードは「緑」に戻った。これがデジタル通貨と社会信用システムの組み合わせの正体だ。 ✅ 住宅所有から生涯賃貸への強制移行 住宅は米国家計資産の26%を占める最大の富創造手段だが、企業による買い占めが加速している。2021年第4四半期だけで、企業は8万戸の一戸建て住宅を購入し、全売上の18%を占めた。 カナダの上場企業トリコン・レジデンシャルは、米国で3万5,000戸以上の一戸建て住宅を所有し、年収7万~11万ドル(約1,000万~1,600万円)の中間層をターゲットに賃貸業を展開している。同社は「アメリカンドリームをレンタルできる」と宣伝し、2024年末までに5万戸への拡大を計画している。 この現象の背景には、2008年金融危機以降のFRBによる異常な金融緩和がある。史上最低水準の金利により、潤沢な資金を持つ機関投資家が個人の住宅購入者と競合する構造が生まれた。結果として、住宅価格は上昇し、多くのアメリカ人が住宅所有から締め出されている。 📌 2030年まで残り5年、今すぐ行動しなければ手遅れ 著者が読者に伝えたいメッセージは明確だ。それは、所有権と自由の不可分な関係だ。経済学者ミルトン・フリードマンの言葉を引用し、「財産を管理できなければ、他人があなたの代わりに決定を下すことになる」と警告している。 政府債務31兆ドル、年間40%近いインフレ率、そして84兆4,000億ドルという史上最大の世代間資産移転を前に、権力者たちは最後の収奪を仕掛けている。彼らの目標は、あなたから経済的自立を奪い、政府と大企業に依存させることだ。 対抗手段はある。実物資産の確保、地域コミュニティでの連携、政治参加による制度改革。しかし時間は限られている。2030年まで残り5年。その時まで何もしなければ、本当に「何も所有できない」人生が待っている。 そしてそれを「幸せ」と感じるかどうかは、あなた次第だ。 参考文献:You Will Own Nothing: Your War with a New Financial World Order and How to Fight Back (2024) - Carol Roth
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