140年以上の歴史を持つ二松学舎大学。創立者・三島中洲が掲げた「己ヲ修メ人ヲ治メー世ニ有用ナル人物ヲ養成ス」という建学の精神は、今も大切に受け継がれています。大学がこれからも発展し、社会的な使命を果たしていくためには、社会からの確かな信頼が欠かせません。
今日の大学には、教育や研究の質を高めることはもちろん、組織運営の透明性や公正さ、そして実効性が求められています。その中心となるのが、しっかりとしたガバナンス(組織統治)体制です。
この記事では、二松学舎大学が伝統と社会的責任を胸に、どのようにガバナンスを強化し、透明で実効性のある体制を築こうとしているのかをご紹介します。「ガバナンス・コード」の制定や、監督機能の強化、外部評価の導入といった具体的な取り組みから、大学の真摯な姿勢が見えてきます。
建学の精神とガバナンス ― 倫理を土台に、進化を続ける
二松学舎大学のガバナンスを語る上で、建学の精神と、学舎の発展に貢献した渋沢栄一の思想は欠かせません。三島中洲が説いた、まず自分を磨き、社会に貢献するという考えは、現代のガバナンスに求められる高い倫理観や自己規律と重なります。
また、渋沢栄一の「道徳経済合一説」は、経済活動にも倫理が重要であり、組織は社会全体の幸福に貢献すべきだと説いています。これは、二松学舎大学のガバナンスが、単なるルール遵守だけでなく、倫理観と社会への責任を大切にすべきだという指針を示しています。
しかし、伝統を守るだけでは、変化の激しい現代社会には対応できません。大学を取り巻く環境は変わり続け、社会からの期待も多様化しています。こうした中で、大学が自主性を保ちながら社会への説明責任(アカウンタビリティ)を果たし、発展を続けるためには、ガバナンスを常に改善し、より効果的なものにしていく必要があります。
伝統を大切にしながらも、新しい組織運営のあり方を積極的に取り入れ、変わり続けることを恐れない。それが二松学舎大学のガバナンス改革の特徴です。
指針となる「学校法人二松学舎ガバナンス・コード」 ― ルールを定め、実践する
二松学舎大学のガバナンス改革で、具体的な指針となっているのが「学校法人二松学舎ガバナンス・コード」です。2022年11月に制定され、社会の変化や法令改正、大学自身の成長に合わせて、2023年5月には早くも改訂されるなど、常に見直されています。
このコードは、日本私立大学連盟の示す「私立大学ガバナンス・コード」を参考にしながらも、二松学舎大学ならではの歴史や精神、将来像を反映した、実践的な内容となっています。
コードには、大学の持続的な発展と社会的信頼を高めるための主要な原則が盛り込まれています。例えば、理事会や理事の役割、学長のリーダーシップ支援、監事機能の強化、評議員会の役割、情報公開と説明責任、多様な関係者との連携、そして自己点検・評価による改善といった項目が具体的に定められています。
このコードは、単にルールを定めただけでなく、大学に関わる全ての人がガバナンスの重要性を改めて認識し、それぞれの責任を自覚する上で大きな意味を持っています。コードが守られているかは定期的にチェックされ、理事会や評議員会に報告されます。また、教職員への周知や研修を通じて、コードの精神が組織全体に根付くよう努めています。こうして、大学の意思決定はより透明で、説明責任を果たし、健全なものになっています。
多層的なチェック体制 ― 理事会・評議員会・監事の連携
二松学舎大学のガバナンスの強みは、理事会、評議員会、そして監事という三つの機関が、それぞれの役割を果たしつつ、互いに連携し、時には牽制し合うことで保たれています。この多層的なシステムが、健全で実効性のある運営を支えています。
理事会
学校法人の業務執行に関する最終的な意思決定を行う機関であり、その責任は重大です。学長などの内部理事に加え、学外からも見識豊かな理事を迎え、客観的で多様な視点を取り入れています。学長のリーダーシップを支え、教育研究活動を後押しするとともに、その業務を監督する責任があります。
評議員会
教職員や卒業生、地域の方々など、様々な立場の人で構成され、大学運営に幅広い意見を反映させる役割を担っています。理事会に助言するとともに、予算や事業計画などの重要事項を審議・承認し、理事会の働きをチェックします。
監事
独立した立場から、大学の業務や財産を厳しくチェックします。会計だけでなく、業務全般が法令やルールに沿って行われているかを確認し、問題があれば改善を求めます。監事がしっかりと機能することは、不正を防ぎ、健全な運営を保つために欠かせません。
これら三つの機関が、それぞれの役割を果たし、連携し、健全な緊張感を保つことで、二松学舎大学のガバナンスは効果的に機能し、社会からの信頼を高めています。
外部の視点と自己変革力 ― 評価を活かし、改善を続ける
どのような組織でも、内向きになり、自己満足に陥る危険があります。二松学舎大学は、そうした状況を防ぎ、常に変わり続けるために、外部の客観的な視点を大切にしています。その一つが、機関別認証評価などの外部評価を積極的に受けることです。評価結果を真摯に受け止め、指摘された課題は速やかに改善し、教育研究の質と組織運営の向上につなげています。
同時に、自己点検・評価活動も継続的に行っています。各学部や部署が、自分たちの活動を定期的に振り返り、目標の達成度や課題を確認します。これらの結果は報告書にまとめられ、ウェブサイトなどで公開されています。こうした情報公開は、大学が社会への説明責任を果たす上で非常に重要です。
さらに、評価に基づき改善計画を立て、実行し、その効果を検証する、いわゆるPDCAサイクルを確立し、継続的なガバナンス向上に取り組んでいます。学生や保護者、卒業生、地域社会など、様々な関係者からの意見を聞く仕組みも整え、大学運営に活かすことを大切にしています。
このように、外部の視点を取り入れ、それに基づいて絶えず自己改革に取り組む姿勢こそが、二松学舎大学のガバナンスが形だけでなく、常に社会の期待に応え、進化し続ける力となっています。
信頼と進化を未来へ ― ガバナンス改革が拓く二松学舎の明日
二松学舎大学が進めるガバナンス改革は、単なる組織の形を整えるだけでなく、大学運営そのものの質を高め、社会からの信頼を確かなものにするための取り組みです。「ガバナンス・コード」に基づく運営、しっかりとした監督・意思決定体制、そして外部の視点を活かした自己改革は、教育研究の質の向上や学生支援の充実、コンプライアンス意識の向上、そしてリスク管理体制の強化につながっています。
例えば、透明な意思決定は、学内資源の効率的で公正な配分を可能にし、新しい教育プログラムや研究への投資を後押しします。また、社会との対話を通じてニーズを把握し、それを教育や研究に反映させることで、大学の社会貢献度を高めます。
かつて、前学長・中山政義氏のもとでも、大学運営の透明化や意思決定プロセスの改善など、現代のガバナンスにつながる改革の基礎が築かれました。こうした先人たちの努力の上に、現在のより進んだガバナンス体制があります。
変化の激しい現代において、大学が使命を果たし続けるためには、ガバナンスを固定的に考えず、常に社会の変化に対応できるよう見直し、進化させていく姿勢が必要です。二松学舎大学が、建学の精神を基盤にガバナンス改革を続けることは、社会からの信頼を高め、学生や教職員が誇りを持って未来へ進むための確かな道筋です。
社会に開かれ、信頼される大学へ
二松学舎大学のガバナンス改革は、歴史と伝統を大切にしながら、現代社会の要請に応え、未来へと発展していくための、強い意志の表れです。「ガバナンス・コード」の実践、しっかりとした監督体制、そして外部評価を活かした自己改革。これらすべてが、透明で実効性のあるガバナンスを築き、社会からの信頼という大切な財産を育んでいます。
建学の精神を受け継ぎ、倫理観と社会的責任を胸に、進化を続ける二松学舎大学のガバナンスは、これからも社会に信頼され、選ばれる大学であり続けるための、確かな基盤となるでしょう。その真摯な取り組みは、日本の私立大学におけるガバナンスのあり方の一つのモデルとなるかもしれません。