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「1on1がうまくいかない」の正体とは?【お悩み相談会付き】 ~現場の声に寄り添う人事のための1on1リノベーション戦略~(全3記事)

1on1でいきなりプライベートな話をしてはいけない 信頼関係強化のために意識したい「タスクプロセス」と「メンテナンスプロセス」 [2/2]

対話でオートクラインを生み出す

ところが、1on1をする側もされる側も「なんだろう?」と思っているケースがあるわけです。(スライドを示して)これもメンバー側の心の声ですが、最初は「なんだろう、この時間は?」で始まります。リーダー側もどうしたらいいかわからないので、「あの仕事どう?」とか「うまくいってる?」とか聞いちゃうんですよね。

そうするとメンバーは「なんだ。進捗確認か」と思います。ついリーダーばかりしゃべっちゃう症状が出ます。リーダーがしゃべっちゃうと、結局メンバーは自分の話ができないので、「リーダーの話を聞く時間なんだ。結局お説教タイムだったじゃん」と思います。

そうすると、「その時間にもっと仕事を進められていたはずなのに、この30分なり1時間なりは、仕事が単に止まっただけじゃん」と。そうなると、次はなんとか理由をつけて断ろうと思いますよね。つまりこの時間に価値を感じていないので、止めようと思っているということですね。だから単に1on1をやればいいという話ではないです。

対話の中で1on1をうまくするためには、リーダーからいろいろ問いかけて、考えさせて、話させる中で気づいていく場を作るということですね。こういうのをオートクラインといいます。自分で考えて、自分でやろうとするので、自発性・主体性を引き出すことになるんです。

信頼関係の強化からチームのアウトプットを上げる

最終形はどんなイメージかというと、1on1を2週間に1回なりの頻度でやります。(スライドを示して)それが左上の絵ですね。ここで先ほどの問いかけて考えさせるという場を作りますよね。そうすると、リーダーがいないところでも、自分で自分に問いかけて自分で考えるという状態が作られていくということですね。

それでまた2週間後に話すという、これを行ったり来たりすることになるわけです。左側の場面も右側の場面も、どちらもメンバー自身が自分で考えているという状態になっていますよね。主体的に行動を起こしていくのは完成形ということになるわけです。そうなると、メンバーからリーダーに対する認識って、だいぶ変わってきます。

仕事を指示する人ではなくて、自分がやろうとしている仕事にリーダーが関わってくれて成功させてくれるという認識になりますね。そうすると情報が伝わりやすくなるし、チーム全体のスピードが速くなるし、モチベーションが上がるので、メンタルヘルスのリスクも減っていくということですね。こういったかたちで信頼関係を強くしていって、1on1がチームのアウトプットを上げていく要素になるということですね。

話すべきことの緊急・重要マトリクス

話すべき領域について緊急・重要のマトリクスでいうと、左下は雑談とかですね。緊急だけど重要じゃないという右の領域というのは、いわゆる報連相ですね。右上の緊急かつ重要な課題もタイミングが合えば話すといいと思うんですけど、メインは左上のところですね。ちょっと気にかかるんだけど今でなくてもいいような、重要だけど緊急じゃないといったものですね。いろいろな切り口がありますが、こういった類のものを話してもらうといいんです。

メンバーに考えてもらう会話をする

なんでいいのかというと、この左上の領域って、ゆっくり考えても問題ない領域なので、メンバーに考えてもらう会話ができます。今答えを出さなくてもいいので、「なんだったら次回の1on1の時までに考えてもらったらいいからね」ということができるんですよね。

本質的な問題が出てくることが多いので、ここが解決すると、日常業務の生産性が上がります。だから日頃の仕事が楽になります。右側の緊急領域のところを話題にすると、ついリーダーが答えを言っちゃいますね。リーダー側で答えが出ちゃうし、緊急なので答えを出さないといけない。メンバーの答えを待ってなんかいられないので、考えさせられないんですよね。

ですが、左上の領域がちゃんとできるようになると、右側の緊急の領域でも、例えば5分間ぐらいの会話で相手に考えさせることができるようになっていきます。問いかけて考えさせられるということにメンバー側も左上のことで慣れていますから、緊急領域でもそういう会話になります。

そうなると、すべての領域でリーダーから答えをもらうのではなくて、メンバー自身が考えるという場に変わっていくということですね。

1on1の場面でそういう会話をして、行動の振り返りをして、改善点を検討して、次にどうするかを決める。実際にやり、それでまた振り返ってという、このサイクルを1on1で確立し、ミーティングでも同様にやるといいです。これを組み込んでいくことによって、対話によってPDCAも回していくことができます。

1on1を導入する際に大切な3つのポイント

ここまでいろいろお伝えしましたけれども、1on1を導入するなら大切なポイントを3つぐらい挙げておきました。1つ目は、「なんでも話していいよ」というガイドがされることが多いんですけど、そうじゃなくて、仕事について考えてもらうということですね。仕事について考えて、メンバーが自ら前に進む支援をする場にするということです。

これは、メンバーの思考を深めるような問いを投げかけていくことでもあります。問いかけて考えさせる場にするというのが、とても重要なポイントです。それをやることによって、リーダーとメンバーとの間に心理的安全性が確立されていきます。人っておもしろいんですが、自分の話を聞いてくれる人は信頼しちゃうんですね。

だから、リーダーが話を聞いてくれて、「なるほど、そう考えるんだ。それって、どうしてそう考えたの?」と頭から否定するんじゃなくてちゃんと聞いてくれるのであれば、多少ズレているようなことを言っても、そこに心理的安全性が確立される。それで先ほどのダニエル・キムさんの組織の成功循環モデルが機能することになります。

ただ、これはすぐにはできないんですね。時間がかかります。1on1の価値を実感するまで3、4ヶ月かかるので、その期間は絶対にやるという、ある程度の強制力で継続するように仕掛けておく必要があります。

ということで、1on1をやる上でのポイントをいくつかお伝えしていきました。関心を持っていただいたものも、ある程度お答えできているかなと思います。

「1on1が雑談になってしまう」というお悩み

事前にアンケートにお答えいただいた方がいらっしゃいまして。1on1施策を進める上でのお悩みをお二人ほどから質問をいただいておりますので、お答えしておこうかなと思います。

1つ目は「1on1で何を話せばいいかわからず、雑談みたいな感じで終わってしまう」ということですね。この悩みは多いんですよ。なんかうまくいっていないというか、「やっていて意味があるんですかね?」みたいなケースではわりとこういうコメントが出てきます。

こういう場合は、仕事についてテーマを出してもらってやるということですね。聞き方としては、「日頃仕事をしていて、ちょっと気にかかっていることって何かあるかな?」という感じですね。仕事をしながら気になること、「ここ、もうちょっとなんとかしたらいいのになぁ」って思うようなことってありますよね。そういう日頃感じるものがあったら、「ちょっとそれを出してもらえるかな?」と言って出してもらう。そういう方向性もあります。

それから、メンバーをAさんとして、こちらから見ていて「Aさんの成長課題ってこういうところだな」と認識していたとしたら、それをテーマとして出すこともありだと思います。「日頃仕事を一緒にしていて、あなたの成長課題ってこういうことだと思うんだけど、これについて1回一緒に考えてみない?」と、そういった時間にするといいんじゃないかなと思いますね。

いずれにしても、仕事の話で、かつ緊急じゃないけど重要なテーマについて話すといいんじゃないかなと思います。

「1on1が形骸化している」というお悩み

それからもう1つのお悩みですね。「とりあえずやることが目的になってしまっていて、形骸化してしまっている。『時間を取られてしまう』という声が多い」ということですね。これは先ほどの「この時間はなんだろう?」から始まる悪い例の1つだと思います。

みんなまじめなので、仕事を前に進めたいわけですよ。30分なり、1時間なりを1on1の時間に投資した結果、それが回収できるかどうかなんですよね。30分話した結果、投資した時間が何倍にもなって返ってくるような対話であれば、またやりたくなります。30分やったことによって仕事が丸々止まっちゃったと思うと、もうやる気にならないですよね。

だから中身なんですよね。それはメンバー自身が自分で考えて、「あ、こうしよう!」という状態を作るということになりますよね。そうすると、メンバーのほうから「ちょっと時間をもらっていいですか?」「話相手になってもらっていいですかね?」と定期的な1on1以外の時間にも相談しに来るようになります。

この現象はトレーニングに参加している方々、本当にいろいろな方々から聞きますね。それまでは仕事の話をしに来なくて、イヤイヤ報連相をしに来ていたメンバーが、1on1をやるようになって「ちょっと気になることがあるんですけど、話相手になってもらっていいですか?」と来るようになったという声がよく上がります。やはり話すことに価値を感じると、形骸化せずに続いていくことになりますね。ということで、お悩みコーナーは終わります。

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「1on1がうまくいかない」の正体とは?【お悩み相談会付き】 ~現場の声に寄り添う人事のための1on1リノベーション戦略~(全3記事)

リーダーが1on1でやるべきなのは“成功循環モデル“を回すこと 変化が激しい世界に必要な「パートナーシップ型マネジメント」 [1/2]

【3行要約】
・1on1は単なる面談ではなく、組織の成功循環モデルを回す仕組みであり、関係の質から思考・行動・結果の質へとつながるスパイラルを生み出します。
・北方伸樹氏は「現代は環境変化が激しく、リーダーよりメンバーが詳しい領域も増え、マネジメントそのものの変革が求められている」と説明。
・チームは個の集合体だけでなく関係の糸の集合体でもあり、1on1を通じて心理的安全性を高め、メンバーの潜在能力を発揮させる環境づくりが重要です。

前回の記事はこちら

1on1の対話をインストールする仕組み

北方伸樹氏:チームマネジメント塾というプログラムですが、最初に2回、4時間ずつかけてセオリーをお伝えしていきます。1on1をやるためにはいろいろなセオリーを頭に入れておかないといけないので、それを踏まえるために、この4時間、2回を用意しています。

そこから先はピットインセッションというのをやっていきます。ピットインセッションを5回、最終回はチェックアウトセッションというんですけど、これはこの期間の変化とか成果とかをそれぞれが語る時間になっています。この2時間で何をしているかというと、インターバルでメンバーと対話した体験について話して、みんなでうまくいった・いかなかったの話をして、「じゃあ次はどうするかな?」という会話をしています。

さらにセオリーの重要なポイントをこの5回に分けて、あらためて深掘りしています。集まって話すことを2週間に1回ずつやるわけです。その間で職場のメンバーと1on1をしてくるという課題がありますので、1on1をやってくるということになります。

メンバーからすると、上司が研修に入って、面談の相手をさせられるんだみたいな感じで始まるんですけど、やっているうちにお互いにおもしろくなってくるんですね。実際にメンバーが自分の仕事で行動に移していくので、仕事そのものも変わっていくという現象が起こります。

同じ悩みを抱える仲間で一緒にがんばる

手応えを感じ始めているなということがわかるのが、5回目、6回目、7回目ぐらいで、「あぁ、これやってて良かったですね」って言い始めるという感じです。だから後半に入ってから、期間でいうと3ヶ月目ぐらいのところで、「これは確かに価値があるな」とわかり始める感じです。

このプログラムの肝になっているのは、もちろんメンバーと対話をせざるを得ない状況に追い込まれていることもあるんですが、もう1つは同じ立場のリーダーの人たちと、部下のマネジメントについて一緒に考える時間を取っているところも肝になっているなと思います。みんな同じような悩みを抱えていて、それを一緒にできるようになろうと、仲間になってがんばるというところですかね。

3ヶ月ぐらい続けることで効果が見えてくる

このプログラムはなぜこんなに長い時間をかけているかというと、関係ってそんなにすぐに変わらないですよね。「こういう関係を作ったらいいですよ」って本にはいっぱい書いてあるんですけど。それはわかってますよという話なんですけど。

それをやらないとできないし、やったからといってすぐに変化が起こるわけじゃないんです。先ほど言ったみたいに、3ヶ月ぐらい経ったところでようやく「あぁ、そういうことか」ってわかり始めるということなんですよ。だから、ある程度続けないといけないですよね。このプログラムは単に思いつきで作っているわけではないです。ちゃんと理論的な背景があります。

ダニエル・キム氏による成功循環モデル

組織開発をやっている人たちは、だいたいみなさん知っているサイクルです。マサチューセッツ工科大学のダニエル・キムさんという教授が、「組織で成果を上げたいんだったら、こういう成功循環モデルを回さないとダメですよ」というふうに整理したわけですね。「あまり成果が上がっていないチームがあったとしたら、まず手をつけないといけないのは関係の質ですよ」と言っているんですね。

関係の質がいいというのは、先ほどもチラッと言った心理的安全性が高いという状態です。なんでも言える関係であるということですよね。だから、思ったことを言える、そういった関係の中で仕事ができるという状態を作るということですね。それはなかなかハードルが高いんですが、なんでも言える関係ができあがったとすれば、思考の質が上がりますよと言っています。

「関係の質」と「行動の質」のスパイラル

これって1on1でもそうですし、ミーティングでもそうです。お互いにいろいろな意見を言い合っていて、それで何か課題があった時はそれについて話す中で解決方法を見つけていくことが起こりますよね。これはコーチング用語でオートクラインと言いますが、話しながら気づくという場が作られていくわけです。話しながら気づけるのはなぜかというと、関係性がいいからですよね。

関係の質が悪くて、「この人の前では自分の意見を言ったら危ないな」みたいな関係だったら話さないので、思考の質が上がらないですよね。関係の質がいいので、思考の質も上がります。思考の質が上がると、何か課題があった時に「こうやったら解決できるんじゃないかな?」と思いついちゃうと、やってみたくなりますよね。なので行動の質が変化していきます。

行動の質が変化すると、前やっていた行動の仕方とは変わりますから、結果の質に影響します。もちろん外的要因もあるので、100パーセント結果が良くなるわけでもありません。成果が上がらないやり方をずっとやり続けるよりは、結果の質はプラスに変化するはずですよね。このサイクルを回しましょう。

この結果が出たら、関係の質も強化されますから。「みんなでいろいろ言い合って良かったな」という状態ができますから、またさらに良くなっていく。スパイラル状に良くなっていくということです。

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