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「1on1がうまくいかない」の正体とは?【お悩み相談会付き】 ~現場の声に寄り添う人事のための1on1リノベーション戦略~(全3記事)

1on1でいきなりプライベートな話をしてはいけない 信頼関係強化のために意識したい「タスクプロセス」と「メンテナンスプロセス」 [1/2]

【3行要約】
・人が集まれば力が単純に足し算になるとは限らず、時に3人より小さく、時に大きくなる――この違いを生むのがチーム内の関係性とプロセスの質です。
・北方伸樹氏は組織の成功に「タスクプロセス」と「メンテナンスプロセス」の2つが必要で、1on1がこれらを強化する鍵になると説明しています。
・効果的な1on1は単なる雑談や進捗確認ではなく、メンバー自身が考え、気づきを得る場にすることで、信頼関係構築と自発性の向上につながります。

前回の記事はこちら

同じような体格・筋力の人が集まったら?

北方伸樹氏:(スライドを示して)こういう模式図というか例でお伝えするとわかりやすいかなと思います。綱を引いている人が1人いたとするじゃないですか。そこに2人の人が手伝いに来てくれて、同じような体格・筋力の人が集まって3人で引くという状態ができた時に、引く力が何倍になるのかです。算数の問題だったら「3倍です!」って答えることになるんですけど。

普通の組織で考えると、いろいろなケースがあるんじゃないかなという気がします。3人だから3倍という答えもあると思うし、3倍よりもすごく大きくなるという捉え方もあると思うし、3倍より小さくなる人もいるかもしれません。「いやいや、一概には言えないですね」みたいに捉える方もいるかと思うんですけど。

いろいろな研修の中で参加者の人に尋ねたりするんですけど、けっこうバラバラになります。「3倍より大きくなります」とか「小さくなります」とか「いやぁ、一言では言えないですねぇ……」とか。そういう答えが返ってくるんですね。

この3人が人間じゃなくてロボットだったら話はわかりやすいんですよ。3台のロボットを並べたんだったら3倍ですよね。それ以外考えられません。3倍より小さくなるんだったら、それはそのロボットのどれかが故障しているとか、なんかおかしいですよね。修理しなきゃいけません。

人間が3人集まっても成果は3倍にはならない

人間が集まった時は、ピッタリ3倍にはならない感じがするんですね。それはなぜか。例えば3倍より大きくなったとしたら、たぶん3人で話をして、「せーのっ!」で引っ張るにはどうしたらいいかとか、引く方向とか、どう合わせればいいのかとか、そういう知恵を出し合ったりすると3倍より大きくなったりしますよね。

前に「これは3倍より大きくなります。20倍ぐらいです」って言った方がいらっしゃって、「なんでですか?」って聞いたら、「こんなのは人の手で引いていたら埒が明かないので、どこかから重機を借りてきて、それで引っ張ったら20倍ぐらいいきますよ」という意見があったんですけど(笑)。そういった知恵が出る可能性がありますね。

3倍より小さいケースは、3人が仲が悪くて、一緒にやること自体が「感じ悪い!」みたいに思っているとみんな手を抜きますから。3倍どころか1人分と変わらなかったみたいなこともあるわけです。そんなふうにアウトプットがいろいろ変わっちゃいます。3人の関係がものすごく影響しているんですよね。

スタイナーの公式

そういったものについて、スタイナーさんという人が式にまとめたんです。「実際の生産性=潜在的な生産性-プロセスロス+プロセスゲイン」と整理しました。ここでいう実際の生産性というのは、3人で引いた結果が何人分かというのが実際の生産性。「3人なので3倍のはずですよね」というのが潜在的な生産性ですね。

そこからロスを引いてゲインを足したら、実際のアウトプットになるという至極当たり前の話です。だからプロセスが影響しているということなんです。

成長する組織をつくるために必要な2つのプロセス

プロセスは2つありますので忘れないでいただきたいんですけど、1つ目はタスクプロセスと言われるやつですね。仕事の仕組みです。ビジネスモデルや仕事の目的・目標、手順、時間管理、役割分担とかですね。これらはわりと表にしたりとか、見える化しやすいです。

もう1つ、プロセスが動いています。これはメンテナンスプロセスと言われるんですが、一緒に働く人たちの関係ですね。お互いの信頼関係とか、なんでも言える雰囲気とか、仕事に対する満足度とか、一人ひとりの捉え方の違いとかですね。そういったものはなかなか目に見えないんですけど、先ほど言った人と人との間にある目に見えない糸が影響しています。

この両方をうまく機能させないと、良いアウトプットにならないんですね。そこに1on1を持ち込もうということです。

タスクプロセスについて話し、メンテナンスプロセスを強化する

1on1で話をします。話をするのは基本的には仕事のプロセスの、タスクプロセスの話ですね。「こういう課題があるんですけど、どうしたらいいですかね?」みたいな話です。

タスクプロセスについて会話をするんですけど、その話をちゃんと聞いてもらえているとか、いろいろなアイデアを出してくれるとか、そういったことによって「この人は信頼できるよね。なんでも話せるよね」という、メンテナンスプロセスが強化されるわけです。なので、1on1で話すべきなのは仕事の話です。

「なんでも話してもいいよ」「プライベートのことも悩みがあったら言ってね」というのでもいいんですけど、プライベートの悩みはいきなり職場の人には話せないです。メンテナンスプロセスが良くないと、つまりその人との関係が良くないと、プライベートの悩みなんて絶対にしゃべれないですから。でも仕事の悩みは仕事なので話さないといけないですから、話せますよね。

なので、まずやるのは仕事について話すことです。そして「この人にはなんでも話して大丈夫だなぁ」というメンテナンスプロセスの関係ができあがったところで、初めてプライベートの悩みが話せるという状態になります。

なのでまず話すべきなのは仕事の話ですし、そのことによってチームのアウトプットを高めるという重要な要素がありますから、そのために1on1の時間をわざわざ取っているわけですね。

1on1はどのようにやるのかが肝

どのようにやるのかが肝になるわけです。(スライドを示して)これは部下の心の声を書いているんですけど、1on1を始めて、うまくいっているとこんな感じだと思います。最初は「なんだろう、この時間は?」と思いながら来るわけです(笑)。「とりあえず話を聞いてくれるらしい」という感じですよね。

話しているうちに考えが整理できて、「次に何をすればいいかがわかりました」という状態になる。そうすると「リーダーと対話していると、自分の仕事が前に進むなぁ」という感じがしてきますよね。そうすると「リーダーと仕事ができて良かったな、また話したいな」と思うので、「次いつ話します?」とメンバーから言い始めるんですよね。

人間って、まじめに仕事をしている人たちがほとんどなんですが、仕事が前に進むのは、ものすごくモチベーションが上がるし、次をやってみようという意欲を生み出します。だから仕事について話せて、何かを解決して、前に進めるという状態を1on1で作っちゃうということですね。

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「1on1がうまくいかない」の正体とは?【お悩み相談会付き】 ~現場の声に寄り添う人事のための1on1リノベーション戦略~(全3記事)

リーダーが1on1でやるべきなのは“成功循環モデル“を回すこと 変化が激しい世界に必要な「パートナーシップ型マネジメント」 [1/2]

【3行要約】
・1on1は単なる面談ではなく、組織の成功循環モデルを回す仕組みであり、関係の質から思考・行動・結果の質へとつながるスパイラルを生み出します。
・北方伸樹氏は「現代は環境変化が激しく、リーダーよりメンバーが詳しい領域も増え、マネジメントそのものの変革が求められている」と説明。
・チームは個の集合体だけでなく関係の糸の集合体でもあり、1on1を通じて心理的安全性を高め、メンバーの潜在能力を発揮させる環境づくりが重要です。

前回の記事はこちら

1on1の対話をインストールする仕組み

北方伸樹氏:チームマネジメント塾というプログラムですが、最初に2回、4時間ずつかけてセオリーをお伝えしていきます。1on1をやるためにはいろいろなセオリーを頭に入れておかないといけないので、それを踏まえるために、この4時間、2回を用意しています。

そこから先はピットインセッションというのをやっていきます。ピットインセッションを5回、最終回はチェックアウトセッションというんですけど、これはこの期間の変化とか成果とかをそれぞれが語る時間になっています。この2時間で何をしているかというと、インターバルでメンバーと対話した体験について話して、みんなでうまくいった・いかなかったの話をして、「じゃあ次はどうするかな?」という会話をしています。

さらにセオリーの重要なポイントをこの5回に分けて、あらためて深掘りしています。集まって話すことを2週間に1回ずつやるわけです。その間で職場のメンバーと1on1をしてくるという課題がありますので、1on1をやってくるということになります。

メンバーからすると、上司が研修に入って、面談の相手をさせられるんだみたいな感じで始まるんですけど、やっているうちにお互いにおもしろくなってくるんですね。実際にメンバーが自分の仕事で行動に移していくので、仕事そのものも変わっていくという現象が起こります。

同じ悩みを抱える仲間で一緒にがんばる

手応えを感じ始めているなということがわかるのが、5回目、6回目、7回目ぐらいで、「あぁ、これやってて良かったですね」って言い始めるという感じです。だから後半に入ってから、期間でいうと3ヶ月目ぐらいのところで、「これは確かに価値があるな」とわかり始める感じです。

このプログラムの肝になっているのは、もちろんメンバーと対話をせざるを得ない状況に追い込まれていることもあるんですが、もう1つは同じ立場のリーダーの人たちと、部下のマネジメントについて一緒に考える時間を取っているところも肝になっているなと思います。みんな同じような悩みを抱えていて、それを一緒にできるようになろうと、仲間になってがんばるというところですかね。

3ヶ月ぐらい続けることで効果が見えてくる

このプログラムはなぜこんなに長い時間をかけているかというと、関係ってそんなにすぐに変わらないですよね。「こういう関係を作ったらいいですよ」って本にはいっぱい書いてあるんですけど。それはわかってますよという話なんですけど。

それをやらないとできないし、やったからといってすぐに変化が起こるわけじゃないんです。先ほど言ったみたいに、3ヶ月ぐらい経ったところでようやく「あぁ、そういうことか」ってわかり始めるということなんですよ。だから、ある程度続けないといけないですよね。このプログラムは単に思いつきで作っているわけではないです。ちゃんと理論的な背景があります。

ダニエル・キム氏による成功循環モデル

組織開発をやっている人たちは、だいたいみなさん知っているサイクルです。マサチューセッツ工科大学のダニエル・キムさんという教授が、「組織で成果を上げたいんだったら、こういう成功循環モデルを回さないとダメですよ」というふうに整理したわけですね。「あまり成果が上がっていないチームがあったとしたら、まず手をつけないといけないのは関係の質ですよ」と言っているんですね。

関係の質がいいというのは、先ほどもチラッと言った心理的安全性が高いという状態です。なんでも言える関係であるということですよね。だから、思ったことを言える、そういった関係の中で仕事ができるという状態を作るということですね。それはなかなかハードルが高いんですが、なんでも言える関係ができあがったとすれば、思考の質が上がりますよと言っています。

「関係の質」と「行動の質」のスパイラル

これって1on1でもそうですし、ミーティングでもそうです。お互いにいろいろな意見を言い合っていて、それで何か課題があった時はそれについて話す中で解決方法を見つけていくことが起こりますよね。これはコーチング用語でオートクラインと言いますが、話しながら気づくという場が作られていくわけです。話しながら気づけるのはなぜかというと、関係性がいいからですよね。

関係の質が悪くて、「この人の前では自分の意見を言ったら危ないな」みたいな関係だったら話さないので、思考の質が上がらないですよね。関係の質がいいので、思考の質も上がります。思考の質が上がると、何か課題があった時に「こうやったら解決できるんじゃないかな?」と思いついちゃうと、やってみたくなりますよね。なので行動の質が変化していきます。

行動の質が変化すると、前やっていた行動の仕方とは変わりますから、結果の質に影響します。もちろん外的要因もあるので、100パーセント結果が良くなるわけでもありません。成果が上がらないやり方をずっとやり続けるよりは、結果の質はプラスに変化するはずですよね。このサイクルを回しましょう。

この結果が出たら、関係の質も強化されますから。「みんなでいろいろ言い合って良かったな」という状態ができますから、またさらに良くなっていく。スパイラル状に良くなっていくということです。

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