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「1on1がうまくいかない」の正体とは?【お悩み相談会付き】 ~現場の声に寄り添う人事のための1on1リノベーション戦略~(全3記事)

リーダーが1on1でやるべきなのは“成功循環モデル“を回すこと 変化が激しい世界に必要な「パートナーシップ型マネジメント」 [2/2]

重点が置かれているのは「関係の質」を変えること

ただ、ダニエル・キムさんは重要なことも付け足していて、「Bad Cycleのスタートもあるんです」と言っています。「成果の上がっていないチームに結果だけを求めても成果は変わりませんから」と言っています。

例えて言えば、営業の数値目標があって、未達だと。「80パーセントってどういうことだ!? お前ら100パーセントにするためにがんばれ!!」と言っても、まったく何も変わりませんから、そこにエネルギーをかけてもダメですよとおっしゃっています。

このプログラムも関係の質を変えることに重点を置いていますし、そのあとの思考の質、行動の質も変えていくように組み立てられているわけなんです。

「話して良かったな」となるサイクル

1on1を使ってそこをやるわけです。どういうことかというと、関係の質がいいというのは、つまり何を話しても大丈夫だという関係ですね。だから1on1の場でメンバーがリーダーに対してなんでも話せるような状態を作ってあげて、「このリーダーには思っていることを話しても大丈夫そうだな」という場を作るということですね。

リーダーのほうは単にボーッと聞いているだけではなく、考えさせる問いを投げる練習をしていくわけです。そうすると、いろいろ質問を投げかけられて考えるので、その考えたことを話しながらオートクラインが起こって、解決策が思いつくという場が作られていくわけです。そして、その思いついたものを実際にやってみようという話になりますよね。

だから30分の1on1の会話が終わる時に「次までに何したらいいかな?」という会話をするわけですね。「じゃあこういうのをやってみようと思います」と本人が決めて、「やってみた結果を次回聞かせてね」ということで2週間後にまた話を聞くことになります。

それが成果につながったらそれだけでうれしいですし、成果につながらなかったとしても、その行動から学んで成長するというチャンスができますから、そういうことも次の1on1の中で会話をするということですね。そして「話して良かったな」となる。こういうことなわけです。だから1on1をやる時に、組織の成功循環モデルを回す仕掛けをしておく必要があるということなわけですよ。

そういう意味では1on1ってとても使えるツールなわけですよ。こういう成功循環モデルを回していただきたいのです。

トップダウン型マネジメントが通用したのは高度成長期ぐらいまで

そもそもなぜこういうことが重要なのかですが、それはマネジメントのスタイルと、すごく密接にかかわっていると思います。

マネジメントのスタイルの話になっていくわけですが、多くの組織でいわゆるトップダウン型マネジメントが行われています。というか、そうは思っていないけれど無意識にそうなっていることもあります。

どういうことかというと、リーダーが答えを出してあげるということなんですね。例えば、「この課題を解決するんだったら、こうやったらいいよ」とか「そこで困っているんだったら、こうしてみたら?」とかというふうに、リーダーが答えを出してあげるというスタイルですね。

出した答えをメンバーに落として、役割分担して任されたことをちゃんとやるという組織の運営方法ですね。これでうまくいっていた時代は、高度成長期ぐらいまでなんですよね。

リーダーの出す答えが的外れということが増えてきた

バブル崩壊後、30年間なかなかうまくいっていなかったんです。なぜうまくいかないかというと、正しい答えがあってそれをその通りにやってもらっていれば良かったんだったらいいんですが、環境の変化がものすごく激しくなってきているので、リーダーの出す答えが的外れということが増えてきたんです。だれも答えを知らないという状態ですね。

今は生成AIがだんだん広まっていますが、この世界の中でどうマネジメントしていったらいいのかとか、どんなふうに業務を進めていったらいいのかみたいなことは、リーダーもよくわからないんですよね。むしろメンバーのほうが詳しかったりするという、そういった世界の中で仕事をしています。だから、リーダーの答えが正しいとは限らないというふうになっています。

なので、無理矢理答えを落としたりすると、メンバーとしては「違うのになぁ……」みたいな感じになりますから、うまく機能しないですね。そういう環境変化が激しいような世界に私たちはもうすでにいるので、マネジメントの状態そのもの、進め方そのものをトランスフォーメーションする必要があるんじゃないかなと思っています。

パートナーシップ型のマネジメント

そこで、パートナーシップ型のマネジメントに変更していく必要があるだろうと思っています。(スライドを示して)チームのイメージはこんな感じですね。リーダーは左側の人ですが、役割が変わります。答えを出すのではなくて、WHYとゴールを示す。ここで言っているWHYというのは、「自分たちのチームってなんのために存在しているのか」。

お客さまとか世の中のためにどういう意味があるのかという類のものですよね。なんのためにやっているのか。それから、いつ頃までに、どこをどういう状態にしていきたいのかというゴールですね。このゴールを示さないと、どれぐらいのレベルでやればいいのかわからないですからね。

なんのためにやっているのか、いつまでにどこまでたどり着きたいのかを示した上で、それぞれの持ち場で自分がどうしたらいいのかを自分で考えてくれということですね。だから、答えはメンバーたちが考えることになります。ただ、ほったらかしにしていたら単なる放任なので(笑)。もう1つ重要な役割があります。

対話でメンバーの答えを引き出していく

対話でメンバーの答えを引き出していく役割がとても重要です。考えさせて、自分の答えを出させるということですね。そうやって自分の仕事について自分で考えて動くということが一人ひとりにできあがってくると、当然ながら周りの人と協力し合わないと成果になっていきませんから、主体的に関わるということになります。

これが実現すると、自分の領域に責任を持って他のメンバーと関わり合いながら主体的に仕事を進めるチームになっていきます。最適解を探すというチーム形態ですよね。その時のリーダーは、WHYとゴールを示しつつ、対話でメンバーの答えを引き出していく役割になっています。ここに1on1を埋め込んでいくわけですよ。

チームは関係の糸の集合体である

先ほどのダニエル・キムさんの話ともつながるんですけど、組織で成果を上げようと思った時に、一人ひとりが成果を出せばそれでいいという話ではなくて。チームとして考えた時に、個の集合体の要素はもちろんあるんですが、もう1つ忘れちゃいけないのが、一人ひとりとの間につながっている、関係の糸ですね。

関係の糸の集合体でもあることを忘れてはいけないんですよ。どうしても見落としがちなんですけれども、ここが機能していないとチームとしての成果が上がらない。そのためにも、1on1でこの糸をちゃんとつないでいくということですね。

つまり、一人ひとりのポテンシャルを高めるのはとても重要だと思うんです。今はリスキリングとか人事の課題になっていますが、一人ひとりがものすごくスキルが上がったとしても、それを発揮しないと意味がないんですよね。ちゃんと発揮してくれたらいいんですが。(スライドを示して)この斜面をザーッと下っていっていただきたいんですけど、チームに存在する関係がマズイと、スムーズに転がらないんですね。

質がいい関係を作る。このチームだったらなんでも言える、一緒に考えられる関係を作ることがとても重要です。それが成果につながるわけです。

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「1on1がうまくいかない」の正体とは?【お悩み相談会付き】 ~現場の声に寄り添う人事のための1on1リノベーション戦略~(全3記事)

「なんか話そうよ」では1on1は上手くいかない “意味のない時間”から“有意義な時間”にするために重要なこと [1/2]

【3行要約】
・企業で広がる1on1ミーティングですが、形骸化や効果測定の難しさから「うまくいかない」と悩む声が増えています。
・北方伸樹氏は、1on1は単なる対話の場ではなく心理的安全性を構築するパワフルなツールだと説明しています。
・1on1成功の鍵は「なんでも話す」だけでなく、メンバーの主体的思考を引き出す質問力にあり、それにより組織風土が変革します。

1on1を導入している企業が増えている

北方伸樹氏:今日は現場の声に寄り添う人事のための1on1リノベーション戦略「『1on1がうまくいかない』の正体とは?」ということで、1時間ほどお時間をいただいております。後半、そんなに長い時間は取れないですが、お悩み相談の時間も取っていきたいと思っております。

1on1を導入している企業がだんだん増えてきています。それは大変喜ばしいことではあるなと思っていますが、「意外にうまくいっていないんですよね」という声が聞こえてくるので、当社でいろいろ試みていることをご紹介しつつ、ヒントにしていただければと思っております。

まずは私の自己紹介をしておいたほうが安心していただけるかなと思うので、簡単に自己紹介をさせていただきます。オフィス・アニバーサリーという会社をやっています。大阪の本町と淀屋橋の間ぐらいにある船場ビルディングという築100年のビルがあるんですけど、そちらのレトロビルの中でお仕事をさせていただいています。

仕事は何をしているかというと、基本スキルとしてはコーチングとかファシリテーションとかをやっています。そういったスキルを通じてクライアントの企業さんの中の、特に上司と部下との関係を変える仕事をさせていただいています。

いろいろややこしい案件もけっこうあります(笑)。「人間関係がドロドロで、なんとかしてください」みたいなこともあったりとか。そんなおもしろい案件をいろいろさせていただいております。

コンサル会社でのつまずき

独立してもう13年になります。長くやっているわけですが、そもそもは何の仕事をしていたかというと、今は日本製鉄株式会社という会社になっていますが、住友金属工業という鉄鋼会社で11年ほどお世話になりました。

こちらで、いわゆる大きな組織の中で仕事を動かす……。根回しとか関係性みたいなものがけっこう重要になってきますので、そういった仕事をさせていただいていました。大きな組織の中でものごとを動かしていくことを体感していたのですが、そのあとコンサル会社に入ろうと一念発起して、入れていただきました。

小さいコンサルティング会社なんですが、コンサルタントなので、いろいろ教えるのが仕事だと思っていたんですね。業務の改善とか、マネジメントサイクルがうまくいっていなければ「ここを直してくださいね」と言うとか。そういう仕事をしていたんですが、最初のプロジェクトでつまずきました。

質問して考えさせて、相手に話させる

行動変化をしてもらわなきゃいけない仕事だったんですが、ぜんぜん行動が変化しないんです。「こうしてください!」って説明したらですね、「はい、わかりました」と言って、リーダーの方々がやってくれるかなと思ったら、やらないんですよね。口だけ「やりますよ」と言いながら、実はやっていない。本当に日々そんな感じでした。

そうすると、私は上司から怒られますね。「北方さん、ぜんぜん何も変化が起こってないよね」と言われるんですよね。毎晩詰められまして(笑)。困ったなと思っていたら、先輩のコンサルタントが「北方さん、最近コーチングというのが世の中で流行り始めているらしいよ」って教えてくれたんですね。

その先輩もよくわかっていなくて、「質問して考えさせて、相手に話させるらしい」と、それだけ教えてもらったんですね。じゃあちょっとやってみようということで、毎日1対1でリーダーの方々と会話していましたので、その中で質問することにしました。

それまでは「ここのフローは、こうしたほうがいいんじゃないですか?」みたいなことをやっていたんですが、聞いてみることにしました。

マネジメントを扱っていたので、「マネジメントをしていらっしゃって、どういうところが課題だと思っていらっしゃるんですか?」と。素人なのでド直球に聞いてみたら、「ここが課題だと思うんですよね」「こういうところも、なんとかなったほうがいいと思っているんですよね」というような感じで、いろいろしゃべってくれるんですよね。

やらない理由がいっぱいあるから行動になっていない

その時にわかったんですが、こちらから「あなたの課題はこうですよね」と言っていたけれど、本人が一番よくわかっていることがわかりました。課題があることがわかったわけなので「じゃあ、それをどうやって解決したらいいと思います?」って聞いたら、解決方法まで考えているんですね。

やらない理由はいっぱいあります。やらない理由がいっぱいあるので、結局行動になっていないことが、すごく多かったなと思うんですね。

「それ、どうやって解決しますか?」と聞いた時に、さまざまな要因があるんですが、大きいのは上司との関係ですね。「どうせこの案を上司に言っても、結局変わらないと思っているんですよね」と。「YESと言ってもらえない」という、そういう思い込みみたいなものがあるわけですよね。私は外の人なので「ちょっとその上司と一緒に話しません?」と言うと、話すことになるんですね。

それで実際に話してみると、「そういうことを考えているんだったら、やってみたらどう?」と上司のほうも言ってくれたりするんですね。なんとなく距離があるので言えていないみたいなことが、すごく多かったなと思います。

そうやって自分で「これをやったらうまくいくんじゃないかな」と話して、「やってみたいな」と思えば、けっこう行動が変わっていくということに立ち会うことができました。

最初のうちは、コンサルタントは向いていないかなと思っていたんですけれども、成果がちゃんと出るようになると、おもしろいなと思い始めました。

リーダーの方々には共通した悩みがある

どこかでちゃんとコーチングをやってみようかなと思っていたんですが、途中で人事の責任者をやらないかという話があり、ベンチャー企業にお世話になりました。その後、コーチングの専門の会社があることを知り、そちらに移ることにしました。ここで5年半ほど修行して、独立して今に至るという経歴ですね。

このコンサル会社に入って以来、リーダーの方々とさしで話すということがものすごく多くて。会社によっていろいろですが、リーダーの方々には共通した悩みがあるなぁと感じております。

「人を育てる」のは本当に難しい

みなさんにも、どんな関心を持って、このセミナーに参加されたのかを書いていただきたいなと思います。

(コメントを見て)「人材育成の大切さと難しさを実感している」という状態ですね。これは人事の方に限らずリーダーの方々は本当にお悩みだと思います。実際のお悩みです(笑)。

たくさんのリーダーの方々とお付き合いしていますけど、人を育てるというのは本当に難しいんですよね。でも人が育たないとチームが成り立っていかないので、本当にこれはみなさん共通のお悩みというか、感覚ではないかなと思いますね。

「部下とのコミュニケーションが円滑に取れず、本音を引き出したい」。あぁ、そうですね。これもリーダーの方々のお悩みでよく出てきます。ありがとうございます。

「1on1がうまくいかない理由の1つとして、効果があったのかがわかりづらい点があります」。確かに。

「効果測定のヒントがあればと思い、参加させていただきました」。そうですね。手応えがあったなと思っても、何が変わったのかがよくわからないということがあります。そのあたりをどうしたらいいのかということで今日来てくださったということです。ありがとうございます。

「形式的ではない1on1はどうやったらできるのか。コツやポイントなどを知りたいと思いました」。ありがとうございます。そういう要素も盛り込んであるので詳しくお伝えしたいなと思います。

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