適切な1on1により主体的でやりがいのある組織風土をつくれる
資料に戻ります。結論からお伝えしようと思っているんですが、1on1って、組織の心理的安全性にダイレクトに機能するパワフルなツール、なんでも言える職場を作ることができるツールだなと思いますね。
「心理的安全性」が最近流行りのキーワードですが、思っていること・感じていること・自分の意見がチームあるいはこの人にはなんでもしゃべれるなという安心感・安全な状態を形成するのに、ものすごく効果的に機能します。
ですが、1on1のやり方次第でうまくいったり、いかなかったりします。うまくいったら、つまり適切な1on1を職場に実現できたら、主体的でやりがいのある組織風土に変化させることが可能なんですね。
主体的であるというところが、とても重要です。もうちょっと言い換えると、チームのメンバーの主体性を引き出して、そのメンバー一人ひとりがやりがいを感じながら仕事をする風土になっていくということです。
ということで、いろいろな切り口でお伝えしていきたいなと思います。このセミナーでお伝えしたいのは2点です。
実際に1on1を始めたらどういう変化が起こるのかを、データでというかアンケート結果を使いながらお伝えしたいなと思います。
トレーニング前後のアンケート結果比較
関西の大手のエネルギー系の企業さんの営業部門のリーダーの方々17人を対象に、4ヶ月間ぐらいのトレーニングをやりました。そのトレーニングをやって、さらに2ヶ月半ぐらい間を置いて、「そのトレーニングが始まってから今と比較してどんな変化がありましたか?」というアンケートを取ったんです。
(スライドを示して)理想的なリーダーの姿が左側にいろいろと書かれているわけですね。例えば、メンバーから話しかけやすい上司である、話しかけやすい状態を作っているとか。重要ですよね。その他いろいろ、全部で19項目あるんです。その19項目について、プログラムに参加した当初から半年間で自分がどう変わったのか、自己認識を聞いてみたというのが、このグラフ。
どういう選択肢かは下のほうに出ています。悪くなった、あまり変わらない、もともとよかった、当初よりよくなったという4項目にしました。
現時点と半年前ぐらいを思い描いていただいて、「この項目は前より悪くなったなぁ」とか「あまり変わってない」とか。
あまり変わっていないということは、つまり、あまり良くないままだったということを示していますね。なぜかというと3つ目に、「もともと良かった」という項目を用意してあるからです。当初より良くなったという人は、もともとはあまり良くなかったけれど、前より良くなったという回答ですよね。
1on1のトレーニングでリーダーの自認は変わる
こうやってグラフを見てみると、当初より良くなったという人がものすごく多いんですよ。項目によってバラつきがありますが、対象者17人のうちかなりの割合の人がそれぞれの項目で、当初より良くなったとおっしゃっています。もともと良かったのを含めるとですね、かなりの割合で今がいい状態になっているという自己認識をしているということがわかりますね。
1on1をちゃんとやっていくと、少なくとも本人的には、前よりもいい上司になっていると認識しているわけですよ。単に1on1のトレーニングをしていただけです。あとで細かく説明しますが、「部下と定期的な会話をちゃんとやったらこう変わってきた」と本人たちは思っているわけですね。
(スライドを示して)この数字は黄色いところの上位5位までの順位です。上位のやつを集めたものをあとでご紹介しますが、とりあえずご本人たちはこういう変化を感じています。
部下からの評価も向上した
ご本人の認識は当てにならないとは言いませんけど(笑)。実際のチームメンバーから見たらどうなのかは、この人たちのコメントを見ていてもわからないので、対象者の部下の方々にアンケートを取りました。
母数は当然増えます。そうすると、黄色いところが先ほどより少ない結果になっています。本人が「変わったぜ!」と思っているほどには、部下からは変わっているように見えないという結果です。ただよく見ると、「もともと良かった」というのが、けっこうな割合を占めています。
部下から見ていて、もともとそんなに悪いとは思っていないという人が多かったわけですよね。ですが良くなったところもけっこうあるというのがメンバー目線ですね。
よく見てみると、例えば「話しかけやすいリーダーである」という項目について、「あまり変わらない」という人が5人いて、「当初より良くなった」という人が9人います。
つまり14人の人たちは、このプログラムが始まる前は話しかけやすいリーダーだとは思っていなかったということです。その14人の方のうちの9人が右側に移動したことになります。そう考えると、けっこうな変化を起こしていますね。
ということで、いろいろな切り口でアンケートを取っていますが、1on1をちゃんとやると、望ましいリーダーの姿により近づいていっていることがわかります。
1on1が有意義な時間に
メンバーの方々にはさらに複数回答可のかたちで「どうですか?」と聞いています。
「当初に比べてどんな変化を感じていますか?」ということですが、まず「リーダーと会話をする機会が増えた」というのがけっこう多いですね。つまりリーダーとの関係性が向上した。面談が有意義な時間になった。業務改善や課題解決など仕事が進むようになった。この4項目が多くの人が選択していることになります。
ですが、「仕事にやりがいを感じるようになった」までは、ほとんどいっていない感じではあります。ということなので、「1on1をやっていてなにか意味があるんですかね?」というと、この4項目を見ていただいたらわかるとおり、確かに価値が生じていることがわかります。
面談が有意義な時間になっているわけですから、やっていて良かった状態になっていると言えると思います。
自己認識の変化として大きかったもの
先ほどの上位5項目をリーダーとメンバーとで並べてみました。リーダーが自己認識として一番大きく変わったなと思っている項目を順に並べています。
まずは、「メンバーの伝えたいことをきちんと受け止めるようになった」ということですね。今まで受け止めていなかったという話なんですね。リーダーの方々はけっこう忙しいので、十分にメンバーの話を聞けていないことは多いなと思います。一人ひとりに期待を伝えていなかったけれど伝えるようになった。
それから、「メンバーはあなたの質問をきっかけに新しいアイデアや解決方法を思いつくことがある」。会話の中でメンバー自身がいろいろ気づくということですよね。そういう場が作れるようになった。
それから、「ちょっとした変化に気づいて声をかけている」。これはよく見ていないとできないんですよね。だから、よく見ている状態になっているということです。
そして、「感謝やねぎらいの言葉をかけている」というところも変化したわけです。それまではちょっと照れくさくて言えなかったとかの状態だったんですが、それを言えるようになったということでもあります。
1on1で重要なのは主体的な思考を引き出せるか
メンバー側はどうかというと、「私の目標や達成するための計画について相談に乗っている」というものが1位に来ました。これには私も、ちょっとだけビックリしました。この項目はあまり上位に来ないんですけど、この会社の場合は上位に来ました。おそらく1on1の中で仕事の内容について話を聞いてもらっている状態ができあがったんだろうなと思います。
そして、リーダーの3番目にも出ていますが、「質問をきっかけにいろいろ思いつく時間になっていた」ということですね。そして当然ですが、1on1で1対1で話す機会を定期的に確保しているはずです。プログラムの中でやりなさいとなっているので、確保されたということですね。リーダーの方々が一生懸命に取り組んだということです。
「リーダーの率直な指摘が私の仕事の改善や、やる気につながっている」。これはいわゆるフィードバックをちゃんとしているかどうかなんですね。「あなたってこう見えているよ」「ここが課題だよね」とかをちゃんと言うということです。それがメンバーにとって機能しているということを示しています。
それから「私の強みや弱み、個性を理解して関わってくれている」。これもよく見てもらっていることを示している項目で、ここも変わってきたと捉えられています。これは一言で言うと、リーダーとメンバーとの関係の質が変化してきているんですね。だから単に1on1をやって、「なんでも話そうよ」というだけではなくて、2人の関係が変わってきているということです。
それから、その話の中でいろいろ気づいたりするということは、思考の質も変わってきていることを、このアンケートの結果は示しているなと思います。なので1on1でとても重要なのは、メンバーの主体的な思考を引き出せるかどうか。単に「なんか話そうよ」だけではうまくいかないです。
相手に考えさせる。自分がどうするのかを決めさせるような会話をしないと、良い1on1にならないということなんですね。逆に言うと、今回のこの対象者の方々はそれが実現できていたので、こういう変化を起こしていることを意味しているなぁと思います。