壮絶な「いじめ体験」から「セクシー女優」デビューまで…“黒歴史”を歌い飛ばす「異色の歌姫」20年目の告白
「本当にそれでいいの?」
大学進学も問題ないだけの成績を残したが、一日も早くプロデビューしたいと思い、高校卒業と同時に上京。昼はアパレルの販売員として働き、夜は曲作りに没頭した。 地道な努力を続けた結果、上京から5年後に現在も所属する音楽事務所の社長の目にとまり、華々しくCDデビューする。しかし、前述のように売れない日々が続いた。 「お医者さんから正式に『うつ』と診断されて、静養するために高知の実家に帰ったんです。そこで将来のことも考えて、一度は歌手をあきらめようと決意して、地元で就職先も決めてました」 ところが、高知に引き揚げるために荷物を取りに東京のアパートに戻った際、“不思議な声”が聞こえてきたという。 「どこからともなく“本当にそれ(引退)でいいの?”。10回とか20回は聞こえた。それで、“よくない!”って答えたら、その声が止まったんです」(同)
デビュー作が売れて「命がつながった」
歌手の道をあきらめきれず、再スタートを切ることにした大和は、まわりが思ってもみなかった手段に打って出た。セクシー女優デビューを決めたのだ。 「知名度を上げるためにはこれしかない、と思い込んでいたんです。いま振り返れば“うつだったから”としか言いようがないのですが……。病んでいて、まともな判断能力がなくなっていた、というか」 セクシー女優としてのデビューが大々的に報じられると周囲の状況が一変した。記事が出た当日にアパレル店をクビになったのである。 「当時といまでは周囲の受け止め方が違ったと思います。その時は、同僚の店員たちから面と向かって“同じ空気を吸いたくない”とか言われましたね」 デビュー作が発売されてからもネット検索すると酷評が書き込まれていた。一部の音楽関係者から罵詈雑言を浴びせられ、古株のファンからも「裏切られた。もう、あなたの歌は聴きたくない」と突き放され、「セクシー女優なんか呼ぶな」とクレームが入って商業施設でのイベントが中止になったことも。 「また病みそうになりましたけど、中学時代に経験したいじめに比べれば何ともない。なによりデビュー作が売れたことで命がつながったと思った。叩かれるのは表に出る人間の宿命。それより命が続いていくことの嬉しさを強く感じました」 結局、驚きの“転身”が大きな話題になったことで歌手としても注目され、自身の楽曲がテレビ番組のエンディングやプレステ2のゲームのオープニング曲に採用されるなど、再スタート後は活躍の場を広げることに成功した。 現在も全国を回って精力的にライブ活動を行うかたわら、ボイストレーニングの講師として後輩たちを指導。人気セクシー女優らを集めた音楽イベントの主催者としても活躍している。 昨年リリースした新曲に続き、今年は初の写真集も発売した大和。8月31日の誕生日には、天王洲アイルKIWAで20周年記念ライブ「Hiromi Yamato 20th Anniversary & Birthday LIVE」を予定している。 壮絶な過去を「黒歴史」という曲にのせて歌い飛ばし、歌手としての新たな目標に向かって進む彼女の目は、高校時代の輝きを取り戻しているようだ。
デイリー新潮編集部
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