今米国で注目される「出生奨励主義(プロナタリズム)」とは? #エキスパートトピ

鈴木崇弘政策研究アーティスト、早稲田大学招聘研究員
子だくさんは家庭にとっても、社会にとっても、本来はプラスのはずだが…写真:イメージマート

 世界の特に先進国などを中心に、少子化に伴う人口減少が大きな問題になってきている。それは、人口の規模は、各国の「国力」にも関わる重大な問題だからだ。国によっては、子どもを産むことを奨励する政策の採用や社会的な動きも起きている。日本ではまだあまり知られていないが、米国では、これまでの中絶容認および女性の社会進出促進やLGBTQの権利拡大などの方向性とは真逆の動きおよびそれらに対する反発の動きなどとして、その考え方が社会や個人に広まっているようだ。

ココがポイント

科学ジャーナリストのアンジェラ・サイニは、2025年が「女性の選択肢が奪われる年」になることを危惧
出典:WIRED.jp 2025/1/6(月)

シリコンバレーでは「より多くの子どもを生むこと」を支持する出生主義(プロナタリズム)が台頭
出典:GIGAZINE 2024/9/7(土)

マスク氏は人口減少に対してすごい危機感を持っている
出典:日テレNEWS NNN 2025/5/19(月)

エキスパートの補足・見解

 「出生奨励主義(プロナタリズム)」は、人間の生殖を促進し、高い出生率を支持する政策や価値観のことである。この考え方は、人口減少を防ぎ、経済成長や社会の持続可能性を確保するために重要だとされている。

 例えば、ハンガリーやスウェーデン、シンガポールなどの国々では、育児休暇の充実や減税制度などを導入し、子どもを持つことを奨励している。また、米国の著名な実業家であるイーロン・マスク氏のように、出生率の低下を懸念し、積極的に子どもを持つことを推奨する著名人もいる。

 一方で、「出生奨励主義」には社会的・倫理的な課題の側面もあります。例えば、女性の選択の自由、優生思想との関連や人権侵害に関わる問題などが議論されることもある。

 日本では、まだその明確な動きはないが、海外、特に米国でその動きがさらに広がり、社会的な波紋を生んでいるということは、今後影響がでてくるかもしれない。その意味でその動きと影響に注視していくべきだろう。

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政策研究アーティスト、早稲田大学招聘研究員

東京大学法学部卒。マラヤ大学、米国EWC奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。東京財団設立参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・阪大FRC副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与(大臣付)、城西国際大学大学院研究科長・教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。新医療領域実装研究会理事等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演等多数。最新著は『沖縄科学技術大学院大学は東大を超えたのか』

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