甲子園取材の裏で「美談探しに疲弊」「球児からセクハラ」 記者5人が語る「聖地」の不都合な真実
●メディア格差と異常な取材環境
──「3分ルール」ですか。主催社とそれ以外のメディアで、そこまで明確な差があるとは驚きです。 記者E:格差は露骨ですよ。朝日と毎日は球場内に専用の記者室があるのに、他のスポーツ紙なんかは狭いスペースにすし詰め状態で、見ていてちょっと気の毒になるくらいでした。 記者B:一番うらやましい、いや、ズルいと思ったのは、幹事社の記者が選手と宿舎で一緒に過ごしたり、バス移動まで共にすることですね。「報道機関が取材対象とあまりに一体化しているのでは?」という気持ちと、「近くでじっくりネタ取りしやすくていいな」という汚い感情が半々ありました(苦笑)。 記者E:私も「朝日の記者は球児たちと宿舎が同じで、一緒に朝食食べたりしてるらしい」と聞いて、正直「主催者の特権」のように感じました。 記者D:取材環境自体も過酷です。地方大会だと1日3〜4試合を1人で担当する。試合中は活躍した選手の親御さんを探してスタンドを駆け回り、写真を撮るために一塁側、三塁側、バックネット裏と移動し続け、試合が終わった瞬間に監督や選手を囲み、次の試合が始まるまでに原稿を書き上げる。昼ごはんを食べる暇なんてまったくありませんでした。 記者A:テレビ局もワンクルー(記者1人、カメラ1人)が基本なので、常に時間との勝負。試合終了のサイレンが鳴り、両校の選手が礼をする、あの拍手の瞬間までは絶対に映像として押さえたい。でも、すぐに取材ブースに移動しないとインタビュー時間がなくなる。終了後すぐに移動できる新聞記者が本当にうらやましかった。
●「彼氏いるの?ヤってる?」女性記者が受けたハラスメント
──過酷な労働環境に加えて、記者がハラスメントを受けるといった話も聞いたことがあります。 記者C(元新聞社):思い出したくもないですが…。密着取材を続けるうちに、記者に慣れてきた高校生たちから「彼氏いるんですか?ヤってますか?」とか「合コン行くんですか?ワンナイトとかありました?」とか、平気でセクハラ発言をされました。聖地とか教育の場とか言われている裏で、こんなことが起きているのかと。 一同:うわぁ…。 記者C:さらに呆れたのは、同僚の男性記者たちです。取材先の甲子園に近い宿舎から「これから風俗行ってくるわ」と堂々と出ていく。高校生たちがプレーする野球の取材に来て、夜はそれか、と。そもそも、スポーツ紙や運動部は男性記者が圧倒的に多く、取材でも自然と彼らが優先されているような空気を感じました。 記者A:他のテレビ局をみても、甲子園の担当には若い女性アナウンサーが起用されることが多かったように思います。「そのほうが監督や選手に喜ばれるから」という計算もあったのではないでしょうか(笑)。僕が担当したときも、監督から「〇〇アナ(女性アナ)が良かったなぁ」なんて軽口を叩かれましたから。 記者B:うちの紙面では、もっと直接的でしたね。「かわいい女子」を探すコーナーがあって、観客席やチア、吹奏楽部にいる子に声をかけるんです。大会期間中に「だいたい何人」というノルマも課せられていました。