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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

午前1時のMrビーン

2010-11-05 | Weblog
最後にアビジャン地区の開票結果が、報道官によって読み上げられた。
「これで、全部ですか。」
はい、全部ですと報道官は答えた。そうしたら、司会者が言った。
「さて、選挙管理委員長を呼びましょう。委員長が、開票の合計、つまり最終結果を報告いたします。」

11月3日、時刻は23時半。私はテレビをつけている。深夜零時までに、最終結果が公式に発表されるはずである。投票の終了から3日以内に、開票結果が発表されるというのが、憲法上の決まりだ。あと30分ほどで、いよいよ運命の宣告がある。

おそらく、全国の人々が、バカヨコ委員長が現れるのを期待して、テレビを見ているだろう。委員長が出てくるかと思ったら、急に画面が変わって、ニュースになった。そうか、そういえば、夜11時半の定例のテレビニュースの時間である。
「今日、主要国の大使たちが、バグボ大統領のもとを訪れ、今回の選挙について意見交換を行いました。」
アナウンサーがそう告げたら、昼間に私たちがバグボ大統領と会談したときの映像が映る。私の姿が、他の9人の大使たちに混じって、ちらちらと出る。

それを見ながら、私は落ち着かなくなってきた。この映像は、8時のニュースの繰り返しで、先ほど私がテレビで見たままである。ということは、8時のニュースで放送された通り、あのニュース映像も、この後に繰り返されるのだ。あのニュース映像とは・・・。私はそわそわする。
「日本大使が、先日の投票について、成熟した民主主義へのお祝いを述べました。」
アナウンサーが告げる。ああ、ついに出た。そして、私がテレビ画面の中心に登場する。

「コートジボワールの皆さんに、私の心からの御祝いを述べたいと思います。」
テレビの中の私が、こちらに向かって語りかけている。
「皆さんは、コートジボワールの未来に投票しました。私こそ、そういう皆さんを誇りに思います。私は最初から言っていました。コートジボワールの人々を信じなさい、と。」

アナウンサーは続けて、日本が選挙のために行ってきた支援を、映像とともに紹介する。投票箱と仕切り板をはじめ、選挙用具のほぼ一切を提供したこと。簡易投票小屋を各地に作ったこと。投票を訴え、投票のやり方について説明したポスターを貼るなど、選挙公報に資金を提供したこと。日本が行ったすべての選挙協力が、手短かに並べられた。

再び私の映像に戻って、
「コートジボワールの民主主義をお祝いするために、コンサートを開催することにしました。コンサートを、「平和と未来のためのコンサート」と名付けました。ほら、今こそお祝いの時ではないですか。日本のコンサートに来てください。」

そう、これは私が昨日(11月2日)に行った、記者発表の模様である。国際交流基金の文化事業として、伝統音楽とアフリカ音楽の演奏家たちが日本からやってくる。そして、週末をはさんで、3回のコンサートを行う予定になっている(11月5、6、8日)。そのうち、土曜日(6日)のコンサートを、「平和と未来のためのコンサート」ということにした。そして、皆さん見に来てください。入場は無料です。記者たちを集めて、そういう広報を行ったのである。その記者発表のついでに、私は素晴らしかった投票について、メモを取る記者たちの前でべた誉めをした。それが功を奏したのか、テレビに取り上げられた、というわけである。

私は、自分の記者会見が意外にしっかりとテレビ報道に乗ったということもさりながら、第一回投票の最終結果の発表で、多くの国民がテレビに釘付けになっているこの時間に、日本からコートジボワール国民への前向きのメッセージが取り上げられたことに、内心大いに快哉を叫んだ。こういう幸運は、狙って実現するものではない。巡りあわせが良かったということである。でも、良い巡り合わせを呼ぶために、それなりに一生懸命、種を蒔いてきたのだ。

テレビニュースの後、バカヨコ委員長は待てど暮らせど、なかなか画面に現れない。詰らない広告や番組紹介などを、さんざん見せられた後、零時半ころになって、やっと画面が選挙管理委員会に切り替わった。バカヨコ委員長は、たくさんのマイクを前に、そして居並ぶ選挙管理委員全員を後ろに、最終発表を読み上げ始めた。

「2010年10月31日、コートジボワール国民は、14人の候補者の中から一人の大統領を選ぶ選挙に、規律と責任をもって臨みました。投票所総数:19,945ヶ所、有権者総数:5,725,720人、投票総数:4,837,579票、無効票:221,655票でした。これから、各候補者の得票数を発表します。」

バカヨコ委員長が発表した得票数を、得票の大きい順に並べると次の通りである。
(1)ロラン・バグボ候補:     1,755,495票(38.3%)
(2)アラサン・ウワタラ候補:   1,480,610票(32.08%)
(3)アンリ・コナン・ベディエ候補:1,165,219票(25.24%)
(4)マブリ・トアケッス候補:    118,664票(2.7%)
(5)ニャミアン・コナン候補:     17,151票(0.37%)
(6)フランシス・ヴォディエ候補:   13,397票(0.29%)
(7)クアディオ・コナン候補:     12,355票(0.27%)
(8)ジャクリーヌ・オブル候補:    12.233票(0.27%)
(9)パスカル・タグア候補:      11.672票(0.25%)
(10)アナキ・コベナ候補:      10,661票(0.23%)
(11)アダマ・ダイコ候補:       5,967票(0.13%)
(12)エノ・アカ候補:         5,311票(0.12%)
(13)フェリックス・アコト候補:    4,767票(0.1%)
(14)アンリ・トホ候補:        2,422票(0.05%)

「以上の投票結果は、これから憲法院に通知され、最終的に「確定」されます。」
これは、前から聞いていたとおり。確定票数になるまでには、まだいくつか手続きがあるけれども、それで結果が大きく変わることはないはずだ。

バカヨコ委員長は、発表の締めくくりにあたって、各方面への謝辞を述べ始めた。
「選挙管理委員会として、投票にむかったコートジボワールの国民に、何より感謝いたします。そして、各候補者と各政党の責任感に支えられた協力に、感謝いたします。さらに、選挙の実施にあたって、国外からいただいた強い支援に、この場を借りて感謝いたします。」
そう言って、委員長は具体的な国名を挙げた。
「欧州連合(EU)、国連開発計画(UNDP)、日本、フランス、西アフリカ経済共同体(ECOWAS)、英国、ドイツ。」
日本の名前が挙がった。それも前のほうで、と嬉しく思う。

「そして、調停者の労をとってきたコンパオレ・ブルキナファソ大統領、そして国連(UNOCI)のチョイ特別代表には、とりわけ深い感謝の念をお伝えしたい。」
バカヨコ委員長はそう述べて、発表の会見を終えた。

今頃、街では片や歓声、片や失望の声が上がっているのだろうか。発表を受けて、人々は熱くなったり怒ったりして、街路に繰り出すのだろうか。国営テレビは、選挙管理委員会の中継後、すぐに喜劇映画を流し始めた。真夜中の午前1時というのに、始まったのは名作「ミスター・ビーン」である。主演ローワン・アトキンソンが滑稽な表情で登場すると、テレビのスイッチが切れなくなった。街路に出ようとする血気盛んな若者たちに、この「ミスター・ビーン」が、まあ映画を見てからにしたら、と抑えているようである。

<テレビ・ニュース>
(10:10-12:50部分)

<バカヨコ委員長の発表>

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