昨夜(11月2日)、夜8時からのテレビ報道のあと、引き続いて選挙管理委員会からの中継になり、選管の報道官が、県ごとの選挙結果を読み上げ始めた。私は、あわてて傍らの紙と鉛筆をとって、聞き取れる限りの数字を書きつけた。発表はだらだらと続き、そのあと中断されて他の番組になった。これで終わりなのかな、と思っていたら、1時間くらい経ってから、番組はまた選挙結果の発表に戻った。
結局、発表は早朝3時まで続いた。次々に発表される、それぞれの県の投票率が、例外なく80%を越えている。中には89%の数字が出ている県もある。驚くべき高い投票率である。そして今日(11月3日)の朝までに、全国19州のうち、10州について、全部もしくは一部の県について、各候補者の得票数が発表された。
これが、本日(11月3日)朝の段階での数字である。まだ、9州の得票数が残っているとしても、すでにおおよその趨勢が読める。
(1)投票総数:258万票
(2)無効票:11万票
(3)有効票:247万票
(4)得票数
ベディエ候補:663,427票(26.91%)
バグボ候補:901.617票(36.57%)
ウワタラ候補:832,160票(33.76%)
つまり、バグボ大統領が第一位、これをウワタラ候補が追いかける。ベディエ候補が第三位である。あと残りの9州は、ベディエ候補には不利な地方ばかりなので、これから結果発表が進んでも、上位2位はこれで確定であろう。ベディエ候補は、残念ながらここで落選というわけである。そしてバグボ大統領もウワタラ候補も、その得票が過半数に達することはなく、両者の間で決選投票が行われることになることもはっきりした。
さて、私を含めて大使たちは、今日も朝食会である。今朝は、フランス大使が主催ということで、彼の公邸に集まった。選挙結果の順次公表が始まったので、次の心配は、選挙結果が各候補者と、その支持者たちに受け入れられるか、ということである。もっとはっきり言えば、ここで落選が濃厚となったベディエ候補が、平静かつ威厳をもって、落選を認めるのだろうか。
これはベディエ候補だけの話ではない。1位と2位になって、決選投票に進出することになったバグボ候補とウワタラ候補についても、今回の投票結果の数字に不満を持っているかもしれない。そして、決選投票が行われる際、つまりいよいよ次期大統領が決定する時には、投票の結果に従ってもらいたい。
昨日の会合で、ソロ首相からも同じ話が出た。ソロ首相は私たちに頼んできた。どのような結果になろうとも選挙管理委員会の発表にきちんと従ってほしい、と自分(ソロ首相)から3人の候補者に伝えているところである。外交団の大使方からも、3人の候補者に、同じ趣旨を伝えてくれないか。そこで朝食会でいろいろ話し合い、午後から大使たちで一緒に、ウワタラ候補、バグボ候補、ベディエ候補の順に回って、ソロ首相の働きかけに力添えをすることになった。
最初はウワタラ候補である。
午後2時に自宅を訪ねると、ウワタラ候補は余裕たっぷりの様子で私たちを迎える。
「私たちの党では、それぞれの投票所での開票結果を数字に書き写して、党本部にファックスやメールの形で送るという仕組みを作っています。2万ヶ所の投票所のうち、3600ヶ所を除く殆どの開票結果がすでに、私たちの手に入手済みです。それによれば、最終結果はバグボ候補が37%、私が34%、ベディエ候補が26%です。ベディエ候補と、その他数人の候補とは、決選投票になれば互いに応援するという事前の約束がありますから、決選投票では、私は62%をとって当選するという勘定になります。」
自信たっぷりである。
私たちは、選挙結果の受け入れをめぐって、争いや混乱が起きることのないようにしてほしい、と要望を伝えた。ウワタラ候補が答える。
「10月31日、全国で投票が終わって、開票作業が行われている頃です。私は、夜9時ごろにバグボ大統領に電話しました。どうだい、コートジボワール中の人が、熱心に、そして平和に、投票に参加したではないか。お互いにこのことをお祝いしよう。そして、これからもフェアプレーで行こう。そしたら、バグボ大統領も私にこう言ったのです。まったく同感だ。立派な選挙を、最後までやり遂げよう、と。」
その後、午後4時から、こんどは大統領官邸に、バグボ大統領を訪ねた。バグボ大統領も、執務室でにこやかに私たちを迎えてくれる。
「選挙運動でお疲れでしょう。」
「いや疲れるのが政治家の仕事ですから。」
などと冗談が出る。何と言っても、開票結果第一位の余裕である。私たちから、選挙結果の発表と、その受け入れについて、外交団として心配をしてきたのだ、と話を切り出した。
バグボ大統領が答える。
「そうですねえ、このたびは十分準備したことはうまくいって、準備が不十分だったことは、やはりことごとく失敗しましたね。私たちは、選挙運動と投票をどううまく進めるかで、とても精力を使った。それで、ほんとうに素晴らしい投票になりました。ところが、投票の後、どうやって結果を集計し、発表するかについては、あまり深く考えてこなかったのです。だから、こんなに発表が遅れ、混乱が生じてしまった。」
開票結果を早く伝えることが、社会の混乱を防止するために重要ということです。
「とても変な話なのですよ。すでに投票日の夜中には、3人の候補者の誰もが、結果がどうだったのかを、かなり正確に知っていたのです。結果を知らないのは選挙管理委員会だけだった。でも、結果がどうだとは、3人の誰も口にできない。フランスなどだったら、投票を締め切ったら、すぐに結果が出ますよね。ところが、なかなか結果が出ないままに日がすぎると、工作をしているに違いないとか、妨害があるに違いないとか、そういう憶測を呼ぶ。そんな妨害や工作など、誰にもできないし、してもいないのに、そういう噂が出てくる。そして、選挙管理委員会の出す数字が、どんどん疑いの数字になってしまう。これは考え直さなければいけない。」
素晴らしい投票をしてみせたコートジボワールの人々の、民主主義への熱意と、選挙による信託に応えなければいけません。
「昨夜のこと、米国の「カーターセンター」の選挙監視団長として滞在している、ガーナのクフォー前大統領と、夕食を一緒にしたのです。彼は、私に言いましたよ。カカオ生産では、コートジボワールがガーナを上回っているが、民主主義ではガーナがコートジボワールを上回っていると思っていた。でも、今度の選挙を見て、これは民主主義でもコートジボワールに負けたかなと思った、と。」
そして、これから行われる決選投票でも、素晴らしい民主主義をみせてほしい、と要望した。
「決選投票でも、平穏な選挙をやってみせますよ。意外に思われるかもしれないが、私はウワタラ候補とも、しばしば電話で話しているのだ。たとえ誰が勝とうが負けようが、われわれには選挙結果に静かに従う心構えがあることを、お約束します。」
最後に、午後5時から、ベディエ候補の邸宅に赴いた。ベディエ候補は、すでに第一回投票で敗色が濃厚なので、表情はとても厳しい。選挙結果を、静かに受け入れてほしいという要望は、ベディエ候補については今日の問題である。大使たちが、丁寧な言葉でそのメッセージを伝えたら、ベディエ元大統領はにこりともせずに、答えた。
「私も、民主党も、挑発は行いません。これは約束します。まして、暴力に訴えることはいたしません。」
大使たちは、はっきりと述べるベディエ元大統領に、はじめは安心し、そして大物の風格を感じたのである。しかし、彼はこう続けた。
「ただし、今回の選挙の開票には、多くの問題が見られました。投票結果について、選挙管理委員会が発表したあと、候補者には誰も、48時間以内に不服申し立てを行う、正当な権利があるのです。そのことは、大使がたにも分っておいていただきたい。」
投票結果を素直に受け入れるつもりはない、と明言された。結果発表後48時間以内に、不服を申し立ててごねる積りなのだ。これには、大使たちは顔を見合わせた。しかし、憲法上の権利だと言われれば、それを否定することはできない。
筆頭格のバチカン大使が、こう答えた。
「選挙は勝ち負けだけが重要なのではなく、国民がその国の未来を選ぶというものなのです。選挙の結果が出たら、その結果を受け入れて、未来の建設に向かってください。神の前に、真実の数字は一つだけなのですから。」
バチカン大使だから、神様にお出ましいただくことができる。しかし、ベディエ元大統領は、憮然としたまま私たちを玄関に見送った。
建物の外には、おおぜいの支持者たちが集まっていた。皆、ベディエ候補の落選を感じているらしく、眉根を寄せている。私が車に乗ろうとしたら、一人の支持者が私を引き止めた。
「大使、分ってください。私たちは知っているのです。開票結果は改竄されています。調書の数字を、堂々と書き変えた例が、もう無数にあるのです。わがベディエ候補は、これらの不正を正すことなく投票結果を受け入れることはありえません。」
夕闇が迫る中で、さまざまな階層の人々が、厳しい表情をしながら、ベディエ邸の周辺に続々集まって来ていた。選挙管理委員会の最終結果発表が出たら、何か行動を起してやると言わんばかりの怒りが、静かにたぎっている。こういう支持者の人々の手前、ベディエ元大統領は、素直に結果を受け入れるなどとは、口が裂けても言えないのだ。政治が道理だけで動いているのだったら、話はどんなに簡単だろうか、と私は思った。
結局、発表は早朝3時まで続いた。次々に発表される、それぞれの県の投票率が、例外なく80%を越えている。中には89%の数字が出ている県もある。驚くべき高い投票率である。そして今日(11月3日)の朝までに、全国19州のうち、10州について、全部もしくは一部の県について、各候補者の得票数が発表された。
これが、本日(11月3日)朝の段階での数字である。まだ、9州の得票数が残っているとしても、すでにおおよその趨勢が読める。
(1)投票総数:258万票
(2)無効票:11万票
(3)有効票:247万票
(4)得票数
ベディエ候補:663,427票(26.91%)
バグボ候補:901.617票(36.57%)
ウワタラ候補:832,160票(33.76%)
つまり、バグボ大統領が第一位、これをウワタラ候補が追いかける。ベディエ候補が第三位である。あと残りの9州は、ベディエ候補には不利な地方ばかりなので、これから結果発表が進んでも、上位2位はこれで確定であろう。ベディエ候補は、残念ながらここで落選というわけである。そしてバグボ大統領もウワタラ候補も、その得票が過半数に達することはなく、両者の間で決選投票が行われることになることもはっきりした。
さて、私を含めて大使たちは、今日も朝食会である。今朝は、フランス大使が主催ということで、彼の公邸に集まった。選挙結果の順次公表が始まったので、次の心配は、選挙結果が各候補者と、その支持者たちに受け入れられるか、ということである。もっとはっきり言えば、ここで落選が濃厚となったベディエ候補が、平静かつ威厳をもって、落選を認めるのだろうか。
これはベディエ候補だけの話ではない。1位と2位になって、決選投票に進出することになったバグボ候補とウワタラ候補についても、今回の投票結果の数字に不満を持っているかもしれない。そして、決選投票が行われる際、つまりいよいよ次期大統領が決定する時には、投票の結果に従ってもらいたい。
昨日の会合で、ソロ首相からも同じ話が出た。ソロ首相は私たちに頼んできた。どのような結果になろうとも選挙管理委員会の発表にきちんと従ってほしい、と自分(ソロ首相)から3人の候補者に伝えているところである。外交団の大使方からも、3人の候補者に、同じ趣旨を伝えてくれないか。そこで朝食会でいろいろ話し合い、午後から大使たちで一緒に、ウワタラ候補、バグボ候補、ベディエ候補の順に回って、ソロ首相の働きかけに力添えをすることになった。
最初はウワタラ候補である。
午後2時に自宅を訪ねると、ウワタラ候補は余裕たっぷりの様子で私たちを迎える。
「私たちの党では、それぞれの投票所での開票結果を数字に書き写して、党本部にファックスやメールの形で送るという仕組みを作っています。2万ヶ所の投票所のうち、3600ヶ所を除く殆どの開票結果がすでに、私たちの手に入手済みです。それによれば、最終結果はバグボ候補が37%、私が34%、ベディエ候補が26%です。ベディエ候補と、その他数人の候補とは、決選投票になれば互いに応援するという事前の約束がありますから、決選投票では、私は62%をとって当選するという勘定になります。」
自信たっぷりである。
私たちは、選挙結果の受け入れをめぐって、争いや混乱が起きることのないようにしてほしい、と要望を伝えた。ウワタラ候補が答える。
「10月31日、全国で投票が終わって、開票作業が行われている頃です。私は、夜9時ごろにバグボ大統領に電話しました。どうだい、コートジボワール中の人が、熱心に、そして平和に、投票に参加したではないか。お互いにこのことをお祝いしよう。そして、これからもフェアプレーで行こう。そしたら、バグボ大統領も私にこう言ったのです。まったく同感だ。立派な選挙を、最後までやり遂げよう、と。」
その後、午後4時から、こんどは大統領官邸に、バグボ大統領を訪ねた。バグボ大統領も、執務室でにこやかに私たちを迎えてくれる。
「選挙運動でお疲れでしょう。」
「いや疲れるのが政治家の仕事ですから。」
などと冗談が出る。何と言っても、開票結果第一位の余裕である。私たちから、選挙結果の発表と、その受け入れについて、外交団として心配をしてきたのだ、と話を切り出した。
バグボ大統領が答える。
「そうですねえ、このたびは十分準備したことはうまくいって、準備が不十分だったことは、やはりことごとく失敗しましたね。私たちは、選挙運動と投票をどううまく進めるかで、とても精力を使った。それで、ほんとうに素晴らしい投票になりました。ところが、投票の後、どうやって結果を集計し、発表するかについては、あまり深く考えてこなかったのです。だから、こんなに発表が遅れ、混乱が生じてしまった。」
開票結果を早く伝えることが、社会の混乱を防止するために重要ということです。
「とても変な話なのですよ。すでに投票日の夜中には、3人の候補者の誰もが、結果がどうだったのかを、かなり正確に知っていたのです。結果を知らないのは選挙管理委員会だけだった。でも、結果がどうだとは、3人の誰も口にできない。フランスなどだったら、投票を締め切ったら、すぐに結果が出ますよね。ところが、なかなか結果が出ないままに日がすぎると、工作をしているに違いないとか、妨害があるに違いないとか、そういう憶測を呼ぶ。そんな妨害や工作など、誰にもできないし、してもいないのに、そういう噂が出てくる。そして、選挙管理委員会の出す数字が、どんどん疑いの数字になってしまう。これは考え直さなければいけない。」
素晴らしい投票をしてみせたコートジボワールの人々の、民主主義への熱意と、選挙による信託に応えなければいけません。
「昨夜のこと、米国の「カーターセンター」の選挙監視団長として滞在している、ガーナのクフォー前大統領と、夕食を一緒にしたのです。彼は、私に言いましたよ。カカオ生産では、コートジボワールがガーナを上回っているが、民主主義ではガーナがコートジボワールを上回っていると思っていた。でも、今度の選挙を見て、これは民主主義でもコートジボワールに負けたかなと思った、と。」
そして、これから行われる決選投票でも、素晴らしい民主主義をみせてほしい、と要望した。
「決選投票でも、平穏な選挙をやってみせますよ。意外に思われるかもしれないが、私はウワタラ候補とも、しばしば電話で話しているのだ。たとえ誰が勝とうが負けようが、われわれには選挙結果に静かに従う心構えがあることを、お約束します。」
最後に、午後5時から、ベディエ候補の邸宅に赴いた。ベディエ候補は、すでに第一回投票で敗色が濃厚なので、表情はとても厳しい。選挙結果を、静かに受け入れてほしいという要望は、ベディエ候補については今日の問題である。大使たちが、丁寧な言葉でそのメッセージを伝えたら、ベディエ元大統領はにこりともせずに、答えた。
「私も、民主党も、挑発は行いません。これは約束します。まして、暴力に訴えることはいたしません。」
大使たちは、はっきりと述べるベディエ元大統領に、はじめは安心し、そして大物の風格を感じたのである。しかし、彼はこう続けた。
「ただし、今回の選挙の開票には、多くの問題が見られました。投票結果について、選挙管理委員会が発表したあと、候補者には誰も、48時間以内に不服申し立てを行う、正当な権利があるのです。そのことは、大使がたにも分っておいていただきたい。」
投票結果を素直に受け入れるつもりはない、と明言された。結果発表後48時間以内に、不服を申し立ててごねる積りなのだ。これには、大使たちは顔を見合わせた。しかし、憲法上の権利だと言われれば、それを否定することはできない。
筆頭格のバチカン大使が、こう答えた。
「選挙は勝ち負けだけが重要なのではなく、国民がその国の未来を選ぶというものなのです。選挙の結果が出たら、その結果を受け入れて、未来の建設に向かってください。神の前に、真実の数字は一つだけなのですから。」
バチカン大使だから、神様にお出ましいただくことができる。しかし、ベディエ元大統領は、憮然としたまま私たちを玄関に見送った。
建物の外には、おおぜいの支持者たちが集まっていた。皆、ベディエ候補の落選を感じているらしく、眉根を寄せている。私が車に乗ろうとしたら、一人の支持者が私を引き止めた。
「大使、分ってください。私たちは知っているのです。開票結果は改竄されています。調書の数字を、堂々と書き変えた例が、もう無数にあるのです。わがベディエ候補は、これらの不正を正すことなく投票結果を受け入れることはありえません。」
夕闇が迫る中で、さまざまな階層の人々が、厳しい表情をしながら、ベディエ邸の周辺に続々集まって来ていた。選挙管理委員会の最終結果発表が出たら、何か行動を起してやると言わんばかりの怒りが、静かにたぎっている。こういう支持者の人々の手前、ベディエ元大統領は、素直に結果を受け入れるなどとは、口が裂けても言えないのだ。政治が道理だけで動いているのだったら、話はどんなに簡単だろうか、と私は思った。
Lionnel Kouassi
www.africashogi.blogspot.com
lionnelkouassi1@gmail.com