朝、配られた「友愛朝報」(10月27日付)を見て、びっくりした。全面広告が出ていて、その下に日の丸が描かれている。
「私の武器、それは私の投票。」
「武器を手にせず投票しよう、平和を保とう!」
とてもいいメッセージではないか。民主主義の力と、暴力のない平和な投票を訴えている。日の丸と並んで、NGOの「ラザラオ」の標章が付いているので、なるほど分かった。「西アフリカ小型武器撲滅運動」の一環で、この公共広告が出ているのだ。
この「西アフリカ小型武器撲滅運動」には、日本がデンマークとともに拠出している。運動では、私が昨年7月に出かけたティケン・ジャーのコンサートのほか、小型武器を回収するための啓発活動を行ってきている。その資金で、投票前のこの時期に、広告を打ったのだ。そう思って、テレビを付けたら、同じ内容の広告をテレビでも放映している。同じく日の丸が出ている。日本の資金だから、日の丸が掲載される。それにしても、うまく時期をとらえて、広告を出したものである。
そして、日の丸といえば、選挙運動が始まって以来、候補者のポスターとともに、あちこちの壁に、端っこに小さく日の丸が付いたポスターが、たくさん貼り出された。中には、ポスターをそのまま拡大して、大きな看板にしたものが道路際に立っている。このポスターや看板には、投票に行こうと呼び掛けているもの、投票の手順を説明したもの、投票用紙への記載方法を書いたもの、いろいろな種類がある。そして、そのどれにも、日の丸と欧州連合(EU)の旗が印刷されている。つまり選挙の手順についての啓蒙・啓発活動であり、日本がEUと相談して、緊急に資金を付けることに決めたものである。だから、日の丸が付いたポスターが、全国各地に張り出されることになった。
選挙の大詰めになって、これだけ日の丸が出てくると、これは嬉しいものだ。日本の存在が、つまりこの選挙の後ろには日本の支援があることが、コートジボワールの人々にしっかり伝わることだろう。さて、少しばかりはそういう得意な気持ちとともに、私は国連(UNOCI)本部に、選挙の説明会を聞きに出かけた(10月27日)。各国大使クラスを集めての、投票前最後の説明である。
説明会での重要な議題は、安全である。投票から結果発表まで、緊張した数日間を迎える。その間に、暴力行為や騒動などの不測の事態が起こりうる。その場合、どう対処するのか。コートジボワールに展開している、国連軍(平和維持部隊)は、どういう対応を考えているのか。そのあたりが説明される。
「選挙過程の安全確保については、第一義的にはコートジボワールの軍、警察、憲兵隊などが責任を持ちます。国連軍は、この点では、あくまでもコートジボワール側を支援するだけです。」
平和維持部隊の、ハフィズ司令官が説明する。
「しかし、国連の要員、各国の選挙監視団員の安全確保については、国連軍の任務です。それから、一般市民の安全が脅かされる場合には、これも任務として市民の安全確保を行います。武器使用にあたっては、国連の交戦規則(ROE)を適用します。」
厳しい事態も想定し、その場合には武器使用も辞さない。本格的な作戦行動のための覚悟がある。
展開する兵員の数は、全部で7400名。部隊は次のように配置される。
(1)西部地域(司令部:マン)に3大隊を配置
(2)東部地域(司令部:ブアケ)にも3大隊を配置
(3)アビジャンには2大隊(ジョルダン、トーゴ部隊)を配置
(4)ヤムスクロには、緊急展開の予備部隊として、1大隊(セネガル部隊)を待機
ヤムスクロの緊急部隊は、全国での増強の必要に応じて、15分で発進できる態勢を取る。
さて、チョイ代表がマイクをとって、投票日以降、国連として考えている手順について説明する。
(1)10月31日(投票日当日)17時:投票締め切り、すぐに各投票所で開票が始まる。
(2)10月31日21時:UNOCI本部にて、各国・各機関の選挙監視団が集まって、視察結果についての情報交換と、評価について調整する会合を開催する。
(3)11月1日朝11時:チョイ代表が記者会見し、投票の実施状況などについて講評する。
(4)11月3日までに、選挙管理委員会が選挙結果の発表を行う予定。
(5)11月4日朝11時:チョイ代表が記者会見し、結果発表に対する評価を行う。これは国連による「暗黙の認証(certification implicite)」となる。
(6)11月10日:憲法院が、選挙結果の「確定(proclamation)」を行う。
(7)11月11日朝11時:チョイ代表による記者会見。憲法院の宣言に対する評価を行う、これは国連による「公式の認証(certification explicite)」となる。
この説明では、選挙管理委員会による選挙結果の公式発表は、11月3日頃ということになっている。そんな悠長な話でいいのだろうか。開票結果は電送され、投票日翌日の11月1日朝には、もう公式発表をする段取りにするのではなかったのか。この点に質問が出て、チョイ代表は、投票結果がどのようにして集計されていくのかの手順を解説する。
「得票の集計について、いろいろ混乱がありましたが、結局のところ開票結果を書きこんだ調書(proces-verbal)を運搬して中央まで伝達するものが、正式なものとなります。」
私は耳を疑った。投票結果の伝達は、電送をすることで一見落着したのではなかったのか。そういえば今朝の新聞で、ベディエ候補が依然として電送に反対しているというような記事が出ていた。結局、ソロ首相の妥協案の提案にも、野党側は立場を譲らなかったということなのだろうか。
チョイ代表によると、次のような手順で投票結果が伝達される。
(1)10月31日17時に投票が締め切られ、すぐに各投票所での開票作業が始まる。各投票所(全国約2万ヵ所)で数えられた得票数は、開票結果調書に書き込まれ、1枚は地方選挙管理委員会(全国338ヵ所)に届けられる。あと1枚は、投票所の壁に張り出される。開票作業は夜8時までには終わる。
(2)地方選挙管理委員会では、その地方の調書を集計し、結果を新たな調書に記入し、1枚を県の集計所(全国58ヵ所)に届け、1枚を委員会の壁に張り出す。
(3)県の集計所でも同じ作業をして、調書を張り出すとともに1枚を地域集計所(全国19ヵ所)に届ける。
(4)地域集計所の調書は、アビジャンの中央集計所に、UNOCIのヘリコプターなどで届ける。
やっぱり悠長ではないか。私はさっそく手を挙げて質問する。11月3日にならないと正式な選挙結果を公表できないというのは遅い。各投票所にて集計結果が張り出されるということなら、携帯電話などでの連絡で、その結果はすぐに各党に知れ渡るし、なにより10月31日の夜には、テレビ特集が組まれ、各地の結果が順次報道され、翌日(11月1日)朝には、誰もが結果を知っているということになるでしょう。それなのに、それから選挙管理委員会の正式発表まで3日間も何もできないというのは不自然ではないですか。
チョイ代表は、私に回答する。
「ご指摘のとおり、11月1日の朝には、殆どの人がだいたいの選挙結果を知ることとなるでしょう。でも、逆に言えば、それは透明性の確保のためには良いことです。最後の地域集計所での段階で、わずか19ヵ所での張り出しになりますから、その数字を加算すれば、誰もが結果について、共通の情報を持つことになるわけです。そうした明確な投票結果の情報がある中で、負けていても勝手に勝利宣言をする政治勢力がありうるか、という問題ですよ。それを避けるためには、結果は誰もがもう分かっていても、あくまでも選挙管理委員会の正式発表を待つということを、各候補者に徹底することが重要と考えます。」
そして付け加えた。
「選挙を実施することだけでなく、選挙結果を保全することが重要です。非民主的な手段により、選挙結果に違背する事態が生じることは、絶対に避けなければなりません。そういう事態が見られれば、私は国連として、積極的に行動し、選挙結果を保全するために介入する積もりです。」
映画や歴史小説などの話ではない。あと数日後に、私たちの目の前で何が展開していくのかの、現実の話なのだ。大使館としても、在留邦人の安全、旅行者への情報提供などに、できる限りの手立てをとらなければならない。すでに、東京の外務省からは、「渡航情報」を出してもらった。それでも何より私が祈っているのは、日の丸のついたあの公共広告が訴えるとおり、平穏な選挙である。
「平和を保とう!」
このメッセージが、全国民に伝わるといいが。 10月27日付「友愛朝報」
「私の武器、それは私の投票」
「武器を手にせず投票しよう、平和を保とう!」
広告の下に日の丸 街角のポスター
「投票とは、他の人を尊重すること」 投票の手順を解説したポスターもある。
ポスターの右肩に記された日の丸
「ご婦人方も選挙に行こう」
煙草屋の店先にも啓蒙ポスター
立看板には「皆で投票に行こう」
角に小さく日の丸がある。
この立看板にも、右肩に日の丸
投票方法を図解
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