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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

その他の候補者たち

2010-10-28 | Weblog
今回の大統領選挙、バグボ大統領、ベディエ元大統領、ウワタラ元首相の3人だけが立候補者というわけではない。全部で14人が出ている。3人の主要候補者以外の候補者たちには、当選の見込みはほぼ無いと言われている。でも、彼らも(女性が一人いるので、彼・彼女らも)、選挙運動にけっこう力を入れて頑張っている。

その候補者たちを支えているのが、報道協定である。報道協定は、コートジボワールの主要紙である「友愛朝報」が政府系の新聞なので、政府系すなわちバグボ大統領のことばかり取り上げることになるかもしれないとの、野党側の懸念に応えて作られた。

10月13日に、「国家報道委員会」にて採択された報道協定は、選挙運動期間における政府系報道機関での報道機会を、全ての大統領候補者に平等に与えることを目的とすると、述べている。そして、「友愛朝報」の紙面において、各人の選挙活動に等しく記事が割り振られること、それぞれの主張が各人同じ区画の記事に取り上げられ、選挙スローガンは同じ大きさの活字で掲載されること、などを決めている。

テレビも、地上波(衛星・ケーブルを除く)は国営テレビ放送しかないので、そこでの取り上げ方が問題になる。これも「国家視聴覚媒体評議会」が10月8日に決定を出し、各候補者に平等な取り扱いを決めた。それによると、毎日一人の候補者が順に登場する番組、「有権者に語る」を放送する、この番組は90分間で、候補者の背景説明、政見放送、記者による質疑応答で構成する。候補者が14人なので、2週間の選挙期間の間、毎日一人でちょうど埋まるのである。

そして、10月15日に選挙運動期間が始まって以来、この「友愛朝報」と国営テレビ局の取り上げ方は、以上の決まりをやり過ぎと思えるほど厳格に守っている。毎日届く「友愛朝報」は、物差しで測ったように同じ大きさ、同じ活字、同じ写真割りの記事を、各候補者に割り当てて記事を載せている。テレビを付けると、毎晩9時半から1時間半の間、「有権者に語る」が放送されている。

これらの報道協定は、おそらくバグボ大統領の記事ばかり報道されることを嫌った、ベディエ候補、ウワタラ候補のために、結ばれたものであろう。しかし、14人の候補に平等にという原則から、ベディエ候補、ウワタラ候補の記事も相対的に少なくなり、おおいに得をしているのがその他の候補たちである。もちろん、14人の中には、泡沫候補としか言えないような人々もいる。しかし、それらの人々を除くと、弱小候補たちについても連日さまざまな記事が出ていて、名前と人物を印象付ける結果になっている。

そういう主な「その他候補者」たちの横顔である。まず、フランシス・ヴォディエ候補は、しにせの野党「労働党(PIT)」を率いている、80年代から有名な労働運動の闘士である。また、トアケセ・マブリ候補は、「民主平和連合(UDPCI)」という党を率いている。この党は、コートジボワール西部の地域政党であり、中部・南部の「人民党」(バグボ候補)、東部・南部の「民主党」(ベディエ候補)、北部の「共和連合」(ウワタラ候補)という地域による「住み分け」のどこにも属さない西部を代表している。というより、1999年のクーデタで、1年ほど政権を取ったゲイ将軍の勢力の末裔である。だから、どの3主要候補にも反発しているのだ。

アナキ・コベナ候補は、「未来勢力運動(MFA)」という政党を率いている。私のところに丁寧に挨拶に来たので聞いたら、その昔「人民党」が非合法政党として結党したとき、バグボ大統領とともに創設者の一人であったし、まっさきに逮捕・投獄された人物である。しかし、その後の「人民党」のやり方に反対して離党、今は独立して自分の政党を率いている。ソロ内閣ができるまでは、運輸相を務めていた。それで今は、強烈にバグボ批判を繰り返し、反バグボ陣営に加わっている。

ニャミアン・コナン候補は、今度の選挙で、「統一党(UPCI)」を立ち上げて、初名乗りを上げた。前のアビジャン税関所長であるから、経済界・企業界に強そうである。汚職追放を主要な公約に掲げて、とても活発に活動している。ジャクリーヌ・オブレ候補は、唯一の女性である。1990年代に、司法相に任命され、有力な女性閣僚として国民にその名を知られている。今回は、女性票に訴えて、どこまで票が伸ばせるかを探るのだろう。

変わり種は、アダマ・ダイコ候補である。コートジボワールでは著名な漫談家であり、彼が「冗談党」を立ち上げて立候補すると言い出した時、まあおそらく冗談だろうと思われた。自分でも俺はマリ人だと言っていたこともあり、どうせ憲法院の資格審査ではねられるだろう、と言われていた。そうしたら、彼はほんとうに立候補しただけでなく、憲法院も立候補を認めた。選挙期間に入って、集会を開いたり、政治主張を打ち出したり、ずいぶん真面目な選挙活動をしている。先日放送された、彼の「候補者と語る」は、とても聞かせるものがあったと評判である。

さて、当選の見込みがなくても、このように平等に発言機会が与えられ、名前が売れるとすれば、立候補する意味は大いにあるのだろう。それとしても、2千万フラン(4百万円)という高額な供託金を払う必要があるし、またけっこう本格的に、大きな看板を立てたりして選挙運動にお金を使っている。そうした出費を払ってでも、この大統領選挙に乗り出すというのには、単に名前を売るというだけの目的ではなかろう。そのあたりを、政治の事情通に聞いた。

「そうですね、何より10月31日の投票では、どの3候補も過半数を取れないですから、決選投票に持ち込まれます。そのときに、決戦に残った2候補のどちらかに、自分を売り込むわけです。自分は第一回投票で、これだけの有権者の支持がある。この票をあなたに向けるように応援しますから、当選の暁には私にポストをください、と。」

それは何だか節操がないですね。仮にも野党として一党を率いているような人が、そんな取引をするのでしょうか。
「独自の党を率いている人は、おそらく大統領選挙ではなくて、その後の国会選挙で議席を確保することを考えていますよ。今回、党と政治主張を売り込んで、国会選挙に臨むのです。こっちは、大統領選挙と違って、何議席かとれる可能性がありますからね。」

なるほど、すでに大統領選後を睨んでいるわけだ。
「もっと言えば、今回の大統領選挙は、5年後の大統領選挙の布石でもあるのです。今回は、3巨頭の間の争いだと誰もが思っている。でも、5年後には彼ら3人はもう過去の人になっているということも、誰もが分っている。今、人々に名前を売るのは、その時に向けて準備を始めていることに他ならないと考えることもできます。」
政治においては常に、次の次の次を考えておかなければならないのである。

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