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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

チョイ代表の正念場

2010-10-22 | Weblog
ザンザン地方での稲作の視察のために、アビジャン空港でボンドゥク行きの国連機に乗ろうとした。そうしたら、チョイ国連代表(UNOCI)も同じ飛行機に乗ってきた。途中のブアケまで一緒だという。それで隣同士に座って話をした。多忙なチョイ代表とは、日ごろゆっくり話す機会などなかなかない。飛行中1時間にわたって、いろいろ打ち合わせができるとは、たいそう都合が良い。

これだけの紆余曲折のあと、とにもかくにも、どうやら大統領選挙も投票まで行きますね。
「いや、それがなかなか安心できないところがあって、身分証と選挙人票が、いったい期日までに全国の全有権者にまで行き渡るのか。テントの代わりに建てることにした簡易小屋がちゃんとできあがっていくのか。心配はいっぱいあります。でも、とにかく日本の支援のおかげで、ものごとが大急ぎで動くようになったし、ここまで来たら何とか間に合わせたいと、みんな一生懸命やっています。」

投票とその後の結果発表が、円滑に進めばいいですね。
「そこのところが、一番心配です。とにかく、主要3候補者とも、自分がいちばん強い、落選するわけがないと思っていますからね。しかし、10月31日の投票では、少なくともそのうちの一人は落選することになります。選挙の結果発表が、すんなりと受け入れられるかどうか、ですよ。投票に不正があったとか、集計が間違っているとか、その陣営には大いに不服が出るでしょう。そして暴力沙汰や、衝突事件などに発展することを、恐れています。」

各党の支持者たちは、もう熱くなっていますね。自分たちの負けを認めることは、とてもできそうにない。
「先進民主主義国の選挙であれば、事前の世論調査などで、こんどの選挙はどういう結果になるだろうとか、おおよそ共通の認識ができるのです。負ける方は、これは危ないぞ、と覚悟する。それに、報道機関がしっかりしているので、おおよそ公正中立な立場で、事実を報じます。ところが、ここの新聞は、だいたいが各政党の宣伝紙ですから、悪いことは書かず、おおいに調子よく書きたて、優勢を盛り上げるでしょう。支持者たちが、自分たちの敗北を認める素地がまったくできていない。むしろ投票直後から、自分たちが勝利したと、どの陣営も大騒ぎを始める可能性がある。」

とにかく投票のあと、時間をおかずに結果を集計して、早く発表しなければいけません。
「そうなのですけれどね、これは選挙管理委員会の仕事ですし、早く集計が進むことを願うばかりです。だいたい、私たち国連の立場は、微妙なのですよ。つまり、他の多くの紛争地の国連ミッションでは、国連自身に選挙を実施する任務がある。ところが、コートジボワールでは、政府・政治当事者たちが、自分で選挙を実施するのを、国連(UNOCI)は補助というか促進支援というか、そういう役割しか果たせません。」

あの「同伴(accompagnement)」という用語で表す役割ですよね。これはまことに、隔靴掻痒だ。まあ、国連の平和維持活動のほとんどが、紛争などで統治能力を失った現地政府に代わって、民政を実施する話だけれど、コートジボワールには歴とした政府があり、軍・警察があるのだから、まずもって自分たちで選挙を組織するというのは、道理ではありますよね。

「その政府にまかせていたら、遅々とした歩みで2年もかかってしまった。それでも、ようやく選挙人名簿の完成、選挙運動、投票、結果発表と、大詰めに向かいつつあります。このように、選挙過程が進むなかで、国連ミッションの重要な役割には、「認証(certification)」があります。つまり、選挙のひとつひとつの段階が、間違いないものであるかどうかを、国連が調べてお墨付きを与える。これには、もちろん国際社会として満足できるような選挙過程になっているか監視をするという意味もありますけれど、それ以上に、それぞれの段階で、国連の権威で、国内のどの政治勢力にも異議を唱えさせない、という意味が大事です。」

先日、確定版の選挙人名簿について、国連が「認証」しましたよね。でも、来る選挙の投票結果については、まず、選挙管理委員会が投票数日後に行う投票結果の「発表(proclamation)」、その後8日後に憲法評議会によって行われる投票結果の「確定(validation)」、と、国内手続きがある。そこまで行ってから、はじめて国連が「認証」する、ということになるのでしょう。でも、それでは何だか遅いですよね。おそらく「どの政治勢力にも異議を唱えさせない」というためには、国連はもっと早くから、そう投票結果が発表されたその時点から、口を出さないといけないでしょう。

「その点については、法的な議論があるのです。たしかに、「選挙人名簿の認証」については、選挙管理委員会による長い長い名簿作成の作業があって、その間は国連として何も言えなくて、最後の最後に、「確定版選挙人名簿」ができあがったところで、はじめて国連が「認証」することになりました。しかし、今度の「選挙結果の認証」というのは、「認証」の性格が異なる、と考えるつもりです。つまり、「選挙人名簿の認証」は、ワガドゥグ政治合意が、合意どおり履行されているかを「認証」するものだった。だから、名簿作成の過程は、コートジボワール政府の「主権的行為」に委ねられていた。しかし、選挙結果の発表はこれとは異なって、「主権的行為」を越える部分がある。」

どういうふうに異なると考えるのですか。
「選挙結果については、ワガドゥグ合意の履行の問題にとどまらず、国連安全保障理事会のコートジボワール決議の趣旨が満たされているか、という問題に大きく絡むのです。つまり、選挙結果の出され方、その受容のされ方は、国際の平和と安全の観点から問題になりうる場合が大いにありうる。もし、平和と安全の確保、民主主義・人権の確保といった要請に反することがあれば、国連の代表としての私には、直ちに「認証できない」と言って介入する責任があるはずです。つまり、選挙管理委員会による結果発表の内容や態様に問題があったり、その発表を受けて暴力沙汰や衝突が発生し、権力濫用による結果の改竄が行われたりする場合は、そのような事態は「認証できない」と言うべきなのです。」

だから、投票結果が出された直後から、チョイ代表は、国連安全保障理事会の名において、その結果を保全し、コートジボワール問題の最終的解決につなげるという、責任を果たさなければならない。
「私は投票当日から、国連(UNOCI)本部に泊まり込みます。そして、問題のある事態が展開し始めるや否や、「政治宣言」のかたちで私の判断を公にし、必要な行動をとる心づもりなのですよ。」
チョイ代表も、いよいよ正念場を迎えようとしている。

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1 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (しょうこ)
2010-10-23 23:52:28
国連の内部にいると、politicisationやbureaucracyに圧倒されそうにもなりますが、こういうお話を伺うと国連の役割の重要性を再認識させられます。また一日本人として、日本政府が重要な役割をこの選挙において果たしていることには誇りを感じます! 
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