私がソロ首相といっしょに身分証と選挙人票の配布作業の視察をした翌日(10月8日)、「友愛朝報」の2面に、写真入りで記事が出た。私も写真に入っているし、記事には日本大使が同行、と書いてある。でも、記事の読者には、なぜ日本大使がこんなところに登場しているのか、まったく分らない。日本が、配布作業に資金協力したのだ、ということが、どこにも書いていないからだ。
私は、とりあえず、知り合いの「友愛朝報」の記者に電話をした。あの、今朝の記事ですけどね。私が唐突に写真に出ている、あの記事です。あれ、なぜ私が写っているかというと、それは日本が資金協力したからなのです。それで、私も視察に呼ばれたのです。私がそう説明する。
「はいはい、大使、分りましたよ。日本からの資金協力を、どうもありがとう。」
いや、ありがとう、というだけでなくて、読者に資金協力のことを分ってほしいのだが。例えば、次に配布作業を題材にして記事を書くときに、ちょっと日本の協力について、触れてもらえないかなあ。
「それは、どうすればいいかな。」
少し考えてから、その記者はこう言った。
「大使のインタビュー記事でも作りますか。その中で、大使がご自身で説明してください。」
何と、棚から牡丹餅というか、瓢箪から駒というか、私の発言を記事に書いてくれるということになった。そうなると、今回の配布作業への資金協力のことだけではない。大統領選挙について、私からの期待と希望の言葉を伝えたい。しっかり言い方を準備して、インタビューに応じよう。いや、もう自分で記事を書いてしまおう。というわけで、私は問いと答えを全部原稿に作った。その記者がやって来たときに、私はその原稿をUSBキーごと、はい、と渡した。ははぁ、これなら原稿起しの手間も省ける、と記者も喜んだ。その場で原稿を読み合わせ、言い回しなどを手直しして、出来あがり。
そして、私の記事は、翌日(10月11日)の「友愛朝報」の紙面に出た。私の写真も、どこから探してきたのか、ちゃんと付いている。「自由・公正・正当な選挙のために、私たちは力を出す」と題された記事は、次のような内容である。
「問い:あと数週間で大統領選挙です。ほんとうに10月31日に、選挙が実施されるとお考えでしょうか。
答え:ここ最近、選挙に向けて物事が進んでいることを、たいへん喜ばしく思います。これはコートジボワールの政治指導者たち、関係する省庁や機関、そして何よりコートジボワール国民の、努力のたまものです。国民は選挙に向けて、一丸となっています。誰も、この団結を崩したいとは考えていません。だから、10月31日にちゃんと選挙があることを、私は確信しています。」
「問い:すると10月31日の選挙実施には、もう障害はないということでしょうか。
答え:現在、全ての政治指導者が、選挙に向かうことに合意しています。政治的な意思はしっかりあって、この点では何ら障害はありません。しかし、実際に選挙を実施するというのは、これは別問題です。つまり、ちゃんと態勢をつくって選挙を運営できるのか、という技術的な問題があります。まず身分証と選挙人票を、まず全ての有権者に配らなければなりません。選挙のための、投票箱などの道具一式を、全国1万6千ヶ所の投票所まで運ばなければなりません。選挙係員は、全国で計6万人に上ります。この人々に、選挙の実施方法についてよく習得してもらわなければなりません。他にも、自由・公正・正当な選挙のために、必要なことがたくさんあります。そのために、私たちは一層力をだして、協力をしていきます。」
「問い:そうした選挙運営面で、日本が協力するとすれば、どういう形になるのでしょうか。
答え:バカヨコ委員長をはじめ、選挙管理委員会の人々は、昼夜を分かたず、10月31日の選挙実現に向けて働いています。これは、膨大な仕事なのです。日本と欧州連合(EU)は、選挙管理委員会と緊密に連絡してきています。委員会は、予算面での支援を私たちに求め、私たちはその困難を十分理解しました。日本はコートジボワールの友人ですから、こういう困難な時、とくに歴史の一頁を繰る大統領選挙の実施について、助けるのは当然でしょう。そこで、運営面での資金協力をすることとし、国連(UNOCI)や国連開発計画(UNDP)、国連調達サービス機関(UNOPS)とともに、計画を進めています。選挙資機材の運搬、国民への周知、屋根つきの簡易投票所の設置など、選挙運営のためにあと必要な作業について、どれくらい費用が必要なのかを算定しているところです。私は、この緊急計画を、「最後の一押し(coup de pouce)」作戦、と名付けました。」
「問い:もう少し具体的には、どういう協力でしょうか。
答え:まず選挙を行うのに必要な選挙人票を、国民一人一人に届けなければならず、そのために配り方について、選挙係員に周知徹底しなければならない。そこで、日本は「選挙基金」にある日本の資金から、4億2150万フラン(約8400万円)を充当することにしました。数日前から、実際に、身分証と選挙人票の配布作業が始まっています。これらのカードを引き取るときには、皆さん日本のことをちょっと思い出してください。」
「問い:有権者の皆さんに、なにかお言葉がありますか。
答え:繰り返しになりますけれど、このたびの大統領選挙は、コートジボワールの歴史を作る選挙です。だから、国民の皆さんには、ぜひとも民主的で、それから公正で平和な選挙を実現してもらいたいのです。日本はすでに、投票箱と仕切り板を提供しました。それは、コートジボワールに民主主義を歩んでいってほしいからです。これは全ての国民が担うべき使命です。民主主義の勝利のため、一人一人が力を発揮してください。もし大統領選挙が暴力なしに実施され、敗者も勝者とともに新たな国家建設に取り組む気持ちを表明するならば、コートジボワールの民主主義が大きく前進したということを、世界に示すことになります。それはコートジボワールの国民にとって、大きな誇りではないですか。そして、アフリカにとっては、大きな希望となるのです。日本の人々は、この誇りと希望を、皆さんとともに分かち合えることを、期待しています。」
私の作った原稿が、ほぼそのまま掲載された。「最後の一押し」作戦、というのも、そのまま出ている。イラクで「砂漠の嵐」とか作戦に名前がついていたので、ここでもせっかくだから、思いつきで名前をつけてみたのである。「最後の一押し」というのは、人が何かしようかしまいか迷っている時に、誰かがぽんと背中を押してやると動き出せる、その一押しのことである。もし、大統領選挙が順調に行われれば、「日本が最後に一押ししてくれたおかげだ」という評価にならないだろうか、と欲張りなことを考えて命名したのである。
<新聞記事>
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