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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

企画と宣伝の能力

2010-10-02 | Weblog

「国際観光フェア2010」の会場は、アビジャンの湖沼沿いのホテルに設けられていた。ホテルの庭に、たくさんのテントが建っていた。私たち招待客は、9時の開会式というので、10時には到着していたのである。それで、コナテ観光相が到着して開会式が始まったのは、11時近くになっていた。こういうあたりを、どうにかするところから、観光の復活がはじまるように思う。

テープカットの前に、コナテ観光相が演説する。
「いよいよ観光が再開します。そこで、私は内務省にかけあっています。コートジボワールに入国する人は、空港で旅行査証が取れるようにしなければならない。わが国を観光で訪れようと思う外国人は、たいへんなのです。まずわが国の大使館がある国にまで、足を延ばさなければならない。そして、そこで数日かけて、査証を取得しなければならない。そうではなくて、アビジャン空港まで飛んで来さえすれば、そこで旅行査証が下りる。そういう方式にしなければ。そこに、チュニジア大使が来ておられるが、チュニジアではそうですよね。」

私の横に座っているチュニジア大使が、「そうだ」という振りをする。私の国は観光立国ですからね、査証が観光客の邪魔になってはいけません、と私に囁く。コナテ観光相は続ける。
「外務省や内務省は、我々がフランスに行くのには査証を要求されるのだから、我々がフランス人に査証を要求するのは当然だ、と言います。でも、人々の相互交流で大きな得をするのはコートジボワールの側なのですからね、査証で相互主義というのは損なのです。」
それはおっしゃるとおりだけれど、コートジボワールは自尊心の強い国だから、フランス相手に相互主義を放棄するのは、なかなか簡単ではないだろう。

「今回の催し物を通じて、コートジボワールの観光が持つ潜在性を、ぜひとも感じ取っていただきたい。そして、観光は幅広い文化に及ぶ経済活動なのです。今回の「フェア」では、コートジボワール料理のコンテストを行います。そして、審査員の一人が、ここにご来臨の日本大使であります。」
と紹介されて、拍手が起こったので、私は立ち上がらざるを得ない。手を上げて会釈をして言った。あの、あまり辛い料理にしないでください。皆が爆笑する。ともかくも、こうして皆さんの前で審査員に任命されたからには、これは当日、しっかり役目を務めなければ。

さて、演説が終わって、ホテルの庭に出た。庭に設えられたゲートで、お決まりのテープカットを終え、招待客みなで会場に入る。お決まりの太鼓と民族舞踊で迎えられた会場では、50余りの小さなテントが張られ、旅行会社やホテル、各地の紹介などが並ぶ。健康クラブや、カジノの紹介まである。別荘地の販売などというのもある。ここで別荘を買う人がいるのだろうか。浜辺に近いあたりには、大きなテントが張られて、ここは特設レストランである。大きな鍋が持ち込まれて、たくさんの来場者に備えている。

会場のもう片側では、これまたテントが並び、彫刻、染物、陶芸、食品、装飾品、その他さまざまな手工芸品の展示即売をしている。私たち招待客は、コナテ観光相といっしょにテントを見て回った。ひとつひとつのテントに、たくさん商品を並べ、何人もの説明員が来ている。中には、目の不自由な人々による手工芸の店、特殊加工でこの国の主食アチェケを長期保存することに成功した食品加工会社などの展示があり、コートジボワールだって、観光や手工芸で頑張っているということだ。

さて、開会式の翌日、いよいよ料理コンテストがある。コンテストは昼食の時間なので、審査員の私は朝食を控え、お腹をすかせて大使館に出勤した。すると私の秘書が、
「今連絡が入って、料理コンテストは中止だそうです。」
また、どうして。
「コンテストの参加希望者が、ぜんぜん集まらないので、止めることにしたそうです。」
えっ、料理コンテストの出場者は、当日受付だったのか。それは無謀だ。そういう催し物は、もう1週間以上前から準備を固めて、出場者なども決めておかなければ。私のお腹はぐーと言って、この意見に同意してくれた。

そのまた翌日、週末に入って、私はすこし土産物を買っておこうと思った。開会式のときに見て回った中に、いくつか良さそうな物があったのである。そこで、件のホテルに出かけた。観光の催し物というのはアビジャンでは珍しく、また週末だけに、きっとたくさんの人々が押しかけていることであろう。ところが、会場に着いてみると、ほとんど客が来ていない。手工芸品のテントまで出かけたら、そこにいた売り子が、私を見つけて言う。
「先日の大使ですよね。まったくどうにも駄目ですよ。3日間、誰もお客さんが来ない。」
売り場には、どっさり土産物が積まれたままである。「フェア」の会場が賑やかだったのは、開会式のあと招待客が会場を回ったときだけだった。後は、待っても誰も来ない。

そういえば、私もこんな「フェア」を開催する予定があるなんて、コナテ観光相から教えてもらうまで知らなかった。その後も、新聞などのどこにも、広告が出ていない。街角でポスターなども見かけない。これだけの会場を設営しても、ぜんぜん宣伝をしなければ、お客さんが誰も来ないのは当然だろう。もったいないことだ。私は、テントで手持ち無沙汰にしている人たちのことが、おおいに気の毒になった。コートジボワールには、観光に力を入れるという理念はあっても、観光産業に一番大事な、企画と宣伝の能力に決定的に欠けているのだ。

いくつか土産物を買ったら、奇跡が起こったような顔で感謝された。私はやはり、この国の観光は、まだまだサファリ・パークどころではないな、と納得したのである。

 開会式で演説するコナテ観光相(中央)

 ここにも出てくるザウリ

 蛇皮製品の展示即売

 陶芸は実演販売

 目の不自由な人も手工芸で自立

 アチェケ(芋でつくった主食)の真空パック製品を紹介

 週末にもう一度訪れたら、誰も来ていない。

 閑散とした航空会社のブース

 ツアー会社(手前)にも、ゴルフ場会社(奥)にも、客は来ない。

 ガラの夜に、ファッションショーが始まる。

 これも観光と言えるのだろうか。

 いやいや、伝統織物によるファッションだから、手工芸の紹介だ。

 最後には、伝統衣装そのものになって、たしかに観光の一環である。


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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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cheerleaderの生みの親から ( PISCES)
2010-10-03 21:25:02
 たまたま拝見したのですが、興味深い記事でした、あまりコメントはしないのですが・・・
アフリカには興味を持っています、小さい頃から、でも行くのは怖いかなと思っています、よくアメリカには行くのに。。。。でも行ってみたいです!
たまにアフリカのテレビ番組を見たりしても、戦争など怖いことがあるので、考えてしまうと思うので、何かいい方法があるといいなと思いました。
 ☆一番大事な、企画と宣伝の能力に決定的に欠けているのだ===という言葉に、色々考えさせられました! 日本の政府や、教育も…同じでは。
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企画と宣伝の能力 (コバヤシ)
2010-10-04 09:27:00
一か月間アビジャンに滞在して、もし私が観光客としてこの地を訪れたのであれば、何を魅力と感じたであろうかと、考えてみました。まず道行く女性たちの身につけている、色鮮やかな美しいパーニュ(アフリカ布)と、その姿勢の良さです。素朴でおいしいアフリカの家庭料理、作り方を教わって食べる時の満足感、必ず挨拶を返してくれる人々の笑顔、他にもいろいろありますが、それは普通観光案内のパンフレットには書かないものばかりです。
穴だらけの道路、車の渋滞、排気ガスによる空気汚染、至る所ごみだらけで、外国人とみればふっかけるタクシー、決定的なのはトイレがないことです。
日本人は、世界一トイレの近い国民ではないかと思います。観光バスが止まると、全員がぞろぞろとトイレに向かいます。外国を旅行していると、世界中で日本の公衆トイレが、数や内容からして一番充実しているのではないかと思います。
サファリパークに行くのであれば、ケニヤかタンザニアに行くのではないでしょうか。
ファッションショーを見るより、自分の好きなパーニュを適正価格で買えて、すぐに仕立ててもらえたり(アビシャンの仕立て屋さんは、すごいです)、何度洗っても色落ちしないろうけつ染のテーブルクロスを工房で購入したり、さまざまな部族の伝統料理を作り方を教わりながら味わったり、プロの技を見るかたわら、太鼓やダンスのワークショップに参加したりと、土産物を買ったり、ショーを見たりと駆け足で観光するそういう観光客ではなく、もっと文化交流しながら人々が親しくなれる機会を作ることを考えてみては、いかがでしょうか。
長い目でみれば、そういう地道な活動が、コートジボワールの魅力を引き出し、宣伝につながり、ひいては観光事業につながっていくと思います。
査証をとるのが、どんどん難しくなっています。私の前は、招聘状だけでOKでしたが、私の時は、市役所の判が必要で、次の人は、市役所と内務省と外務省の判が必要でした。
大統領選挙が終わって、もっと簡単に査証がとれるようになることを期待しています。
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