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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

これが選挙運動だ(3)

2010-09-23 | Weblog

バグボ大統領は、続いて貴賓席に座る面々に向かって語り始める。まず、ティアサレ市長のほうを向く。
「ティアサレには、思い出があります。20年前、私の政党が合法化されて、はじめて公然と政治活動ができるようになった。私はティアサレにも来ました。1990年。でもまだ、誰もが当時の政権に遠慮して、私の演説をする場所を認めてくれない。私は仲間といっしょに、仕方がないからということで、そこの公設市場に来た。将来の大統領は、今この立派な会場で演説している大統領は、はじめてこの町に来たときは、市場の片隅でしか演説できなかったのです。」
バグボ大統領は、当時のウフエボワニ大統領に盾突く、唯一の野党の党首であった。その頃の苦労を振り返っているのだ。

「こんな風に、私は地道にやってきたのだ。今、政治家たちは、政党をこさえたと言って、2回ほど記者会見して、それで大統領になれると思っている。とんでもない。大統領は、そんな風にしてなれるものではないっ。」
何人も立っている、他の弱小の大統領候補を、ちょっぴり批判している。

そして、次にその隣の国会議員に向かう。
「このティアサレの近くで、私は自分で運転していて、自動車事故を起こした。1996年のことだ。ティアサレの総合病院に運び込まれた。医者は頑張ったが、病院にはろくな設備が無い。これはいかん、ということでアビジャンの病院まで私を運んで、面倒をみてくれたのが、ここに来席している国会議員先生である。事故のために私は首の骨を痛めて、今も首が回らない障害が残ったが、それでも一命は取りとめた。私は「人民党」、この国会議員先生は「民主党」の議員であります。それでも面倒をみてくれた。どうもありがとう。」
おおーっと拍手が沸いて、議員先生の面目躍如である。

「ティアサレは、バウレ族、アニ族、アティエ族、マレンケ族、ディダ族、多種多様な部族が混在し、仲良く共存して生活していることで知られる町です。昔、ティアサレに来たときに、人々に挨拶したら、ア・ヤオーと答える人がいて、ああ私のベテ族もここに住んでいるのだと。これが今のコートジボワールには必要なのだ。政治家たちが、ここからここまでは自分の支持母体の部族だと、領域を区切るようなことは、決してやってはいけない。その意識が、無意味な喧嘩を引き起こしてきた。」
バグボ大統領は、部族意識にたった政治や選挙を、固く戒める。
「もう、そういう政治から脱しなければ。ティアサレの市民よ、この混在と寛容の町にこそ、私は信頼をおきたい。ティアサレが、喧嘩のない選挙を、実現して見せてほしい。」

私は満場の聴衆のまなざしを見た。聞いているティアサレの人々も、町の寛容の精神を讃えられ、心を熱くしたであろう。選挙運動として自分への支持を訴えるというよりは、平和な選挙の実現を訴えた大統領に、私もおおいに共感を覚えた。大統領演説のあと、精米工場のテープカットである。私も呼ばれて、大統領と並んで写真に写った。午後4時近くまで、食事にもありつけず、手洗いにも行けない式典であったけれど、私はひとまず満足して、アビジャンに戻った。

さて、後日談である。数日たって、ティアサレの友人に会った。どうだった、大統領の訪問には、町の人々もずいぶん熱狂した様子だったね、と尋ねた。
「そうだったかな、あまり大統領の政党の支持者のいない町だからね。」
えっ、私には町じゅうがバグボ支持に沸いていたように見えたが。

「まあ、「彼ら」は結局、土曜日までいたよ。」
何だその「彼ら」とは。式典があったのは水曜日だった。土曜日まで、というのはつまり、式典後もさらに3日間ということだ。

「バスで20台ほどだったかな。「彼ら」は国のあちこちからやってきていた。土曜日までは、バスの中とか、精米工場の敷地内に陣取って、宿泊していた。」
バス20台とは、たいへんな数である。つまり、国内各地からバグボ支持者が集まってきていたのである。
「それで、式典後、大統領側から手当てが出なかったみたいだ。だから、代表者がアビジャンにでかけて、大統領と掛け合ったということで、土曜日になってようやくお金が「彼ら」に配られたらしい。それで、バスも退散したというわけさ。」

どうりで聴衆のなかに、ティアサレの私の知り合いがいなかったわけだ。ティアサレの人々は、騒ぎを外側から見ていただけなのだ。早朝から陣取っていた群衆、バグボ万歳を歌う歌手たち、腰振り踊りのおばさんたち、総立ちで拍手する人々、彼らはほとんどが、バスに乗ってティアサレの外から来ている人々であった。それもそのうちの相当の人々が、バグボ大統領の支持者というよりは、後でもらえるお手当て目当ての連中、そして次にバグボ大統領が別の町で選挙運動をすると聞けば、またバスで出かける連中だったのである。

 演説するバグボ大統領

 女性団体から表彰状を貰った。

 精米工場に設置された精米機

 お米の山

 お米を視察する。

 説明を受けるバグボ大統領


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