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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

確定版の名簿ができた

2010-09-15 | Weblog
大統領府での「米生産農家の集会」が、午後11時開始予定から午後2時開始に変更になった。これは、準備の都合もあったようだけれど、それより重要な事情があった。大統領府で10時から急遽閣議が開催され、「確定版」選挙人名簿が、バグボ大統領により裁可されたのである。これで、大統領選挙に向かうために、何より大きな関門であった手順が完了したことになる。つまり、10月31日の大統領選挙実施が、もう目の前に見えてきた。

選挙人名簿の裁可は、大統領令として、その日(9月9日)のうちに公布された。
「共和国大統領は、首相からの報告に基づき、憲法並びに2007年3月4日付ワガドゥグ政治合意及び同補足合意に従い、さらに緊急性に鑑みて、次の通り指令する。
第一条 危機脱出の選挙にむけて、選挙管理委員会が認証する確定版選挙人名簿に掲載の5,725,720名に対して、身分証の配布を行うことを許可する。
(・・中略・・)
第三条 首相および選挙管理委員長は、本大統領令の実施を、それぞれの権限に応じて所掌する。」

そして、バグボ大統領は、閣議後にテレビに向けて演説を行った。
「本日、確定版の選挙人名簿を公表したことで、私たちの苦労にも先が見えてきました。去る月曜日(9月6日)に、ソロ首相、ベディエ元大統領、ウワタラ元首相、バカヨコ選挙管理委員長、そして私とで集まったのは、さあ、確定版の選挙人名簿がここにある、われわれはこれに合意するのか、と尋ねるためでした。そして、皆で合意したのです。だから、今日ここに、私はこの名簿に署名することができます。これから、各人は選挙運動に出ることができる。そして、いよいよ選挙が実現する。」

バグボ大統領が述べたとおり、9月6日、大統領選挙の当事者たちが、全員で大統領府に集まり、確定版選挙人名簿の内容について合意した。異議申し立てで、誰が選挙人となるかならないかが問題となってきた。およそ5万6千人の人々が、選挙人と認定されなかった。その人々にとっては重大な問題だから、これが紛糾してまた大統領選挙ができなくなるという可能性もありえた。しかし、それは止めよう、選挙人名簿の確定については、これでけりを付けよう、ということで、対立する主要政党勢力の間での政治的合意が得られたのである。

「ここにまで至ったことを、皆さんに感謝したい。しかしですね、まだ今日のところは、選挙結果の発表日を迎えたというわけではないのです。つまり、まだ準備のため、片づけていかなければならない技術的な課題が、たくさんあるのです。」
バグボ大統領は、まだ安堵してはいけないと言う。

「まず、印刷ですね。投票用紙、投票所での公示物などの印刷は、法律では、国立印刷所が行うことになっています。私は、法律に従うことに固執しましたよ。ソロ首相は、既に国立印刷所に、印刷作業を行うように命じました。財務大臣には、予算を付けるように命じました。あとは、技術的に印刷ができあがるのか、これが第一の課題です。」

「次に、身分証と選挙人証の輸送ですね。これには、国連の協力が必要です。幸いなことに、もう国連の専門家は作業を始めてくれていて、コートジボワール国民は誰もが、身分証を受け取ることになります。私だって、今もって身分証がないのだ。また、北部の人々には、身分証が与えられないと思っている人々が、けっこういる。それは違っていて、そもそも1992年以来、身分証の発給に支障をきたしていたからなのです。」

コートジボワール国民として認められるか否かは、土地相続の権利を主張できるかどうかなど、多くの重大問題に関連する。選挙人名簿への登録は、そうした権利の根拠となる身分証がもらえるのかどうか、という問題だから、人々は真剣になる。バグボ大統領は、この問題の経緯を説明する。政治当事者の各人が、問題にかかわっている。

「まず、ウワタラ首相は、1992-93年に発給しようとしたところが、ウフエボワニ大統領の死去に伴って、首相の権限から外れてしまい、それで発給が頓挫した。ベディエ大統領も、発給をしようとしたけれど、1999年のクーデタで、また頓挫した。私は、2000年に大統領になって、さっそく国立身分証局(ONI)を設置して、発給しようとしたところが、2002年から紛争に突入してしまった。こんなに混乱が続いたので、身分証を持たない人がたくさん出てしまったのです。私だって、身分証を失ってしまった。まあ、幸いなことに今はどの役所でも、身分証を出せと言いませんからね、私も助かっています。だから、身分証と選挙人証の発給は、とても実務的な課題なのです。そして、それらを各地に運ぶという仕事があります。」

「私たちは、憲法の改定について、これから検討していかなければならない。憲法には揉め事をもたらすような規定があって、そういう面は除去しなければならないからです。」
バグボ大統領が取り上げているのは、大統領選挙への立候補資格の問題である。大統領になるために、「母親または父親」の片方がコートジボワール国籍の必要があるのか、「母親および父親」が両方コートジボワール国籍であることを求めるのか。この「または」か「および」か、の問題は、この国の国政を紛糾させてきた。

「そして、選挙人名簿の上では複雑な扱いになってしまう人々がかなりの人数いて、もしこれらの問題を全て今片付けてからということになると、もう何事も前に進まなくなるのです。これからの話として、こういう人々のうちで、実はコートジボワール人であるような人は、ちゃんと国民として包含していかなければならない。もし、コートジボワール人でないという人でも、大統領としてはこういう人々が帰化できるようにしなければならない。」
今回の選挙人名簿で、登録要件を満たさなかった人も、これで国籍取得の窓口が閉じられるわけではない、ということを言いたいのだ。

「名簿掲載に関して詐欺事件が起こりました。でも、この事件は、選挙に関する詐欺があったというだけの問題ではない。コートジボワールの政府の証明書を得て、この国に安住したいと思っている人々の問題なのです。私の故郷の文化ではね、外国人がやってきて、一緒に村に住みたいと言ったら、タムタム太鼓を叩いて踊りを踊ってお祝いする。一人男手が増えたといって、喜ぶのだ。」
大統領の故郷とは、ベテ族のことを指す。ベテ族は外国人を大切にするのだ、とガニョアの県会議長も言っていた。

「だから、私は誰かがコートジボワール国籍がほしい、と言ったら、その人が麻薬密売人でない限り、すぐに同意の政令に署名しますよ。コートジボワール人になりたい人は、法律に基づいて申請すれば、国籍が得られるでしょう。でも、暴力や詐欺によって、国籍を奪い取ろうとする人々には、私たちは断固反対する。しかし、人口増加を、政令によってきちんと管理する。そのことには反対ではない。帰化を求める人々は、それを申請してもらえれば結構なのだ。」

「私はよく、人に説明するのだ。悲観的になってはいけない。コートジボワールは、あっちにふらふら、こっちにふらふらする国ではあるけれど、その時が来れば跳躍するのだ、と。だから、政治家の皆さん、騒ぐことなく選挙運動に出かけよう。」
バグボ大統領は、最後にこう述べた。
「皆さん、よい選挙活動を。そして、騒擾のない平和な選挙を。」
いよいよコートジボワールは選挙に向かう。これからの問題は、選挙が行われるかどうかではなくて、どのように選挙が行われるかである。



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