2025-08-10

ご飯について

私は太っている。

近頃たくさんの人が美しくあるためのダイエットをしていて、食欲を無くす注射を打ったりしているけれど、私はまず健康のために痩せなければいけない。それくらい太っている。

ご飯が好きかと聞かれると「好きだ」と答えるけれども、純粋な好きではないことは確かで、でもそれを言うとややこしいので言わない。

そのややこしい部分をここに書こうと思う。

小さい頃太っていたかと聞かれると、そうではなかった。父も母も弟も肥満体型で、食べれば食べるほど「凄い、凄い」と言われるような家庭だったが、私だけが普通の体型だった。親戚の中でも相対的には痩せていたから「首が長いね」「おしりが小さいね」とよく褒められた。

ただ、小学生からはじめたバレエ教室では違った。周りの子のような華奢さが私にはなかった。衣装合わせの時に私だけ後ろのチャックが閉まらなくて赤面したし、先生が優しく甘い声で「痩せようか」と言ってきたのも恥ずかしかった。

今思えばその頃は普通の体型をしていたと思う。シンデレラともモデルともいかない、普通の体型。

でも痩せたかった。だって衣装が入らないから。レオタードから伸びる白タイツを履いた足。私だけ太い。正座をした時にぷにゃりと余る太ももの肉。他の子には無い。

母にそれを伝えると、気にしない方が良いと言われた。相変わらず家庭では山盛りの唐揚げが出てきたし、白米をおかわりすると褒められた。

ある日、母に「夜ご飯お腹がすいていないから食べない」と言った。その時は本当にお腹が空いていなかった。痩せたかったのもあったが、その日は一日中家にいたから、本当にお腹が空いていなかった。そう言う私に母は強く叱責した。父も叱責した。「拒食症じゃないんだから」「せっかく作ったんだから」。その通りである普通に考えたら自分がせっかく作ったものを突然いらないなんて言われて許せる人なんて少ないし、もしかしたら心配から出た言葉かもしれない。でも当時の私は全然からなかった。食べたくないのに食べなくちゃいけないのかと思った。

中学に上がって1年くらい経つと、軽いいじめが始まった。とても軽いものだった。クラス全員に無視されたり、足を踏まれたり、制服ボールペン落書きされたり、すれ違いざまに悪口を言われたり、隣の子に机を離されたりした。それだけだった。なぜこんなことをされたかは知らないが、「自分体験記をこういう所に書き込んじゃうようなところ」が原因なんじゃないだろうか。

私立学校だったので、母は毎日弁当を用意してくれた。焦げて黒い線の入った卵焼きと、ぎゅうぎゅう詰めにされたご飯絶対入っていた。サンドイッチの日もたまにあった気がする。

お昼になると机同士をくっつけて班の形にする。私は嫌われていたので、少し机を離されていた。お弁当朝一番に保温室へ入れたのを取ってきて、風呂敷を解いて、食前のお祈りを皆でして、やっとご飯が食べられた。でも机と机の隙間を見ると、ご飯がすごく不味くて、いつもだいたい半分くらいで弁当の蓋を閉じた。

最初の頃はお弁当を残したまま母に弁当箱を出していたが、やっぱり次第に怒られるようになった。

だいたい同じ頃に近所にコンビニができた。夏頃だったと思う。家に帰る前に必ずそこに立ち寄るのが日課になった。学校からヘトヘトで帰ってきて、コンビニトイレに入って、鍵を閉めて、お弁当の残りを極限まで細かくぐちゃぐちゃにして、流した。(今調べたら下水管に負担がかかるそうです。もうやりません。というかもうやっていません。そして当時のコンビニさん本当にごめんなさい)ご飯に対して申し訳ないという気持ちが少しと、親に怒られなくて済むという気持ちがたくさんあった。トイレから出ると店内放送底抜けに明るい声と冷たい空気に当てられた。カゴを持つ。ファンタポテチ、あとラーメンおにぎりも買っちゃおう。すみませんチキン1つお願いします。

だいたい1000円だった。お小遣いお年玉節約したバス代と、親の財布から盗んだお金レジに出す。重い袋を受け取る。カバンに詰め込む。何食わぬ顔で家に帰る。お弁当を出す。お母さんが喜んでいる。夜ご飯を食べて皆が寝静まったあとにお湯を沸かしてラーメンを作る。コンビニパーティをした。一人で。

その時間は間違いなく至福で生きた心地がした。お腹が膨らむと自然と眠気が襲ってきて、今日反省会なんてしなくていいまま眠りにつけた。

そんな生活を送っていると、次第に学校に行けなくなった。不登校になっても母は変わらずお弁当を作ってくれたが、それを燃えるゴミに捨てて上からティッシュを沢山重ねてコンビニに向かった。母にはお弁当が美味しかったと言い続けた。

どんどん太る私を見て、両親共々ちくちく言ってくることはあったが、ご飯を食べなかった時よりは言われなかった。

母は食を楽しむ人で、不登校だった時から、今も私を色んなところに連れていく。インド料理屋、フレンチコース鉄板焼き、回る寿司、回らない寿司、回る中華。いつもこう言われる。「あなたは他の子より経験値が多いよ。色んなところに連れて行ってるからね」そうだね。お弁当トイレに捨てる経験をしている人なんて相当少ないよ。

こういう経験を重ねるにつれてそもそも提供される」事が苦手だと気がついた。もちろんこちらがお金を払ってはいるが、ご飯を与えてもらっているのが恥ずかしく思える。椅子を引いてもらうのも、落ちたフォークを拾うのも自分で出来る。それに、食べている間みんな豚になるのだ。私も、横の人も、どんなに上品に食べていても皆豚。提供する側は高尚な人間で、与えられた餌を食べるのは豚。だから「人と一緒に食べる」ことも苦手だ。豚になっているところを皆、誰に見られたいんだろう。家でのご飯で、母が「美味しい?」と聞いてくるのも嫌だ。何、勝手に高尚な人間になってるんだ。勝手に豚側にするな。見ないでほしい。父親のくちゃくちゃした音がうるさい。

高校生から普通学校に行けたし、今も普通大学生をしている。

でも一人で部屋にこもって食べるご飯が好きだ。便所飯が辞められない。可哀想なのが好きなんじゃなくて、一人で心置きなく食べる時間が好きなだけ。学内コンビニで買ったホットスナックを誰にも見られない場所で汚く食べるのが好きだ。

たまに会食があって、教授や友人と飲むこともあるけど、それらが終わる度に一人でなにかを貪る。なにか取り返すように貪ってしまう。

毎年健康診断で呼び出される。太っていることを後ろめたく思うし、早くこんな体辞めたい。でもどうしたら、食べずに不安から抜け出せるんだ。どうして、こんなに食べてしまうんだ。友人の前で「ご飯だーいすき!」と笑顔を振りまきながら、家で汚らしく手づかみでご飯を食べる私はなんなんだ。やめたい。こんな体早く辞めたい。ご飯は好きだ。食べなきゃ不安からご飯に左右されている。食べないと怒られる。食べないと眠れない。食べないとフラッシュバックする。食べ続ける。満足したい。太っても太っても足りない。安心したい。

  • 糞つまらない長文書くアイデンティティ得られてるし太っててよかったじゃない。

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