県立芸術大が、琉球芸能専攻の男性教授に対して、元学生からのセクシュアルハラスメント被害の訴えに関して調査していることが判明した。教授は取材に対し「セクハラの事実はない」と否定している。大学は被害を訴える元学生の尊厳を守りつつ調査で事実を明らかにし、被害者への適切なケアとセクハラの根絶を図らなければならない。
県立芸大の元学生は6月ごろからSNSに被害を訴える投稿をした。大学側は投稿内容について男性教授へ聴取するなどし、事実関係を確認している。教授は大学側が調査に乗り出した後に「一身上の都合」を理由に学部長を辞任している。
取材によると2022年から23年の間に、男性教授と複数の女子学生が参加していた会食で、男性教授が複数の学生の足を触ったほか、女子学生に大学構内で抱きついたり体を触ったりしたという。元学生のほかにも、学校内外で男性教授からの不適切な行為を受けたとする声が複数上がっている。大学は他にも被害を訴える人がいる可能性も含め、調査する必要がある。
また、元学生は学内の生活相談とハラスメント対応の相談窓口にハラスメント行為を訴えていた。元学生によると、生活相談として対応したカウンセリングアドバイザーだった男性職員が「縁を切ることは命を絶つことと同じ」などと発言したという。事実であれば信じがたい発言だ。セクハラをはじめ、生活の悩みに直面する人に対応すべき職員として、あまりにも無理解な態度ではないか。
大学によるとハラスメント相談窓口の体制は、被害者の意向があれば、相談員は大学のハラスメント防止対策委員会に相談内容を報告する手順となっている。元学生は相談の継続を希望していたため、委員会への報告はなかったという。
訴えを受けた大学の当初の対応は適切だったのか。元学生に二次被害を及ぼしていないか。結果として訴えを封じる形になっていなかったか。大学は検証すべきだ。
県立芸大では過去にもセクハラによる懲戒処分などがあった。県内の他の大学でも同様の事案があった。特に文化芸術業界には師弟関係があることで強い権力勾配があることが指摘される。被害者が声を上げにくい構造があるという。そのような構造の下で表面化する被害は、氷山の一角である恐れがある。
県立芸大をはじめとする県内の大学、文化芸術に携わる人々はセクハラを根絶するために当事者として行動すべきだ。各大学や行政、芸能関係の当事者団体などは調査を実施し、セクハラについて実態を解明する必要がある。その上でそれぞれの現場の状況に即した対策を講じ、セクハラを許さないという態度を鮮明にしてほしい。その先にしか沖縄の伝統芸能をはじめとする文化芸術の発展はない。