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相次ぐアカハラ 根絶への決意と努力を

2025年8月9日 05時05分 (8月9日 05時05分更新)

 大学の教員によるアカデミックハラスメント(アカハラ)が後を絶たない。若い世代を教え育てる場である教育機関で、教員たちが圧倒的に優位な力関係を悪用して学生を理不尽に苦しませるのは、言語道断というしかない。相次ぐアカハラの根絶に向け、大学人の決意と努力を期待したい。
 愛知県みよし市の東海学園大の大学院では、経営学研究科の学生だった男性が、ゼミの指導教員で当時は副学長だった男性教授から2022年に受けた叱責(しっせき)を巡り、教授と大学を運営する学校法人の両者に賠償を求めて提訴。両者に計140万円の支払いを命じた名古屋高裁の判決が、今年5月に確定したことが分かった。
 判決によると教授は男性を「君はばかだ」などと叱責し、「おまえはサルだよ。人間らしいことやってみろ」と言って、こぼれたコーヒーを拭かせるなどした。
 男性は通学ができなくなり、23年に退学。後に抑うつ状態と診断された。判決は教授の叱責を「指導教員としての裁量を逸脱している」と判断。さらに、ハラスメントを防ぐ措置が不十分だったとして、法人の責任も認定した。
 男性は税理士を目指して大学院に進んだが、本紙の取材に「こんなことになるなら大学院に行かなければ良かった」と悔やんだ。前途ある学生が教員の言動で心を病むなど本来あってはならないことだし、社会の損失でもある。
 一方、名古屋市の中京大でも、総合政策学部の50代の男性教授が今年5月に、大学を運営する学校法人から懲戒解雇の処分を受けていたことが分かった。
 教授は複数年にわたり、多数の学生に対して性的な言動や威圧的な言動、飲酒の強要などをしたという。教授は一部を否認したが、大学側は複数の学生の話を基に、ハラスメントを認定した。
 どちらの大学もハラスメントを巡る規定を設け、教員の研修など対策も行っているというが、結果を見れば、その効果は疑問だ。それを重く受け止め、より実効性のある策に練り直すべきだろう。
 少子化で、学生の確保が大学の大きな懸案となった現在、こうした問題が起きれば、高校生や保護者から敬遠され、大学全体の評価にも影響を及ぼしかねない。他の大学も2校の事例を傍観することなく、アカハラ防止に向けた取り組みを強めてほしい。

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