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説明不足が否めない予測

やはり元自衛官の軍事評論家の西村金一氏も、ウクライナのクルスク侵攻作戦は、「ロシア国家・プーチン政権を不安定にさせ」、「今後の停戦交渉を有利に進めるカード」にするなどの効果に加えて、「軍事戦略としてはロシア軍東部・南部の戦線の戦力を引き抜きクルスク正面に転用させ、東部・南部戦線を弱体化させる」という効果があると評価した。西村氏によれば、「ロシアは東部・南部・西部の戦線から、現に戦っている部隊をいったん戦闘をやめて後方に後退させ、クルスクに転用しなければならない」ので、「ロシアにとって、この重大な危機に対応することは極めて難しい」のだった。

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そのうえで「ウクライナは、原発を最終目標とするのであれば、その目標を部隊が占拠することが最も望ましい」と述べ、「それができない場合でも、目標をHIMARS(High Mobility Artillery Rocket System=高機動ロケット砲システム)や長射程精密誘導砲弾の射程に入れる位置まで前進して占拠できれば、支配下に入れたことになる」と主張した。原発を狙うべき理由は、モスクワに被害を及ぼすカードにして核抑止を図ることだ、という。クルスク原発の距離は、「ザポリージャ原発と首都キーウまでの距離とほぼ同じ」だと、西村氏は強調した。

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しかし西村氏は、なぜクルスク原発は、モスクワよりもキーウにより近いことを言わないのだろうか。なぜより近いキーウに対する被害は全く度外視して、より遠いモスクワの被害だけを強調することを、ウクライナにとって非常に合理的な行動だ、と考えるのだろうか。

HIMARSについて言えば、現在ウクライナ軍が保持しているものでも、80キロ程度の射程距離は持っている。クルスク原発から、ウクライナとロシアの国境までは、70キロ程度である。つまりウクライナ領内からでも、クルスク原発をHIMARSで攻撃することは可能である。なぜ射程距離の話をしながら、越境攻撃を仕掛けてロシア領を占拠する、という射程距離とは全く別の事柄の意義を強調するのだろうか。西村氏は全く説明してくれない。

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