第40話 最後の切り札
『敵の罪を暴く証拠を 父上はこの絵に隠し私に託したに違いない』
真夜中の道を パク・タルホが全速力で走っている
就寝中のイ・チョンを叩き起こし すぐに図画署(トファソ)へ行け!という
何事かと言ってみると すべての画員と茶母(タモ)が集められていた
※図画署(トファソ):絵画制作を担う国の機関
※茶母(タモ):各官庁に仕える下働き
するとソンヨンが 思悼(サド)王世子が描いた絵を広げ
亀の部分を拡大し 手分けして何枚も兵士の数だけ描いてほしいという
そしてこれは王世孫様の命令だと…!
当時 思悼(サド)王世子が泊まった宿を中心に 絵の情景と同じ場所を探す
この真夜中にそれを見つけることは かなり難しいことであった
しかし どうしても政務報告の時間までに見つけなければ!というサン
譲位の宣布と同時に彼らの罪を暴けば 老論(ノロン)の反発を抑えられるのだ
既に兵の移動は察知されているだろう
一刻も早く証拠を見つける必要に迫られていた…!
禁衛営(クミョン)の大将のもとへ テスが王世孫からの通達を出しに行く
しかし既にシン大将は殺され 副将しかおらず代わりに通達を受け取るという
※禁衛営(クミョン):首都防衛を行った軍営の1つ
この副将オ・ミョンホは王妃側の手先であり
通達は直ちに王妃の知るところとなる
光化門(カンファムン)に禁衛営(クミョン)の兵を集結させるという
何とも不可解な王世孫の命令であった
しかもすべての兵が仁王(イナン)山に向かっているというのである
王室の一大事に 明日の譲位を控えなぜ山に向かうのか
王妃には到底分かる筈が無い 想像すら出来ないことであった
その理由が何であれ 王世孫を始末すれば解決するという王妃
禁衛営(クミョン)を掌握した今 王世孫は袋のネズミだと!
『王世孫が生き延びるようなことになれば我々は誰ひとり生き残れないのだ!』
王世孫イ・サンは仁王(イナン)山にいた
敵の私兵が潜入しているかもしれない禁衛営(クミョン)を使い
謀反の証拠が隠されている亀岩を探すのだ
その場所を確実に知っているのは自分だけだと
危険を顧みず 自ら兵士に混じって捜索するサン
同じ時 王妃は禁衛営(クミョン)の副将に会っていた
『シン大将は“病死”したそうだな』と声をかけられ戸惑う副将
『今から禁衛営(クミョン)はそなたが指揮せよ
病に臥せっている王様に代わり この私が命令を下す!
そなたの“英断”に国の将来が懸かっているのだぞ!!!』
この言葉が何を意味するのか… 副将は即座に理解し忠誠を誓った
まだ王世孫の首を取っていないのに宮殿に戻ることを危惧するギジュ
もし王世孫が生きて戻ったら…!
王妃はその策を講じるべく戻るのだという
『2人のうち“どちらか”を始末すると言ったであろう!』
つまり 王世孫の暗殺が失敗した場合 英祖(ヨンジョ)王を討つということだ
王の傍にはチェ・ジェゴンが付き添っている
苦しむ王を心配するジェゴン
しかし英祖(ヨンジョ)王は 具合悪いくらいが丁度いいと笑う
うるさく御医(オイ)を呼ぶというジェゴンに
その口煩さで流刑にまでなったのにまだ懲りないのかと
※御医(オイ):王の主治医 侍医(シウィ)ともいう
英祖(ヨンジョ)王は鍵付きの小箱を取り出し 王世孫に渡せという
いつかは分からないが必要になる日が来ると…
その中身は何で なぜ必要になるのかと聞いても一切答えようとしない
『その箱の使い時は王世孫がよく知っている
必要無ければ幸いなのだが… そういうわけにもいかぬだろう
恐らく王世孫は これを使わざるを得まい』
一方チョン・フギョムは 全軍が城外に移動させられた件について
チェ・ソクチュに関わりの有無を聞く
ソクチュは ただ政治を行うのみだと答える
その頃テスは 王世孫を尾行する怪しげな兵を見咎める
暗くて道が分からなくなったという兵士たち
この暗がりで疑いの目で見れば 誰もが老論(ノロン)派の私兵に見えてくる
見咎められた兵士たちは 大きく回り込んでサンを尾行していた
テスはどうしても疑わしく感じ 尾行しているうち敵に囲まれてしまう!
先へ先へと激しく動き回るサンは いつの間にか視界から消え
ジャンボとソッキが必死に捜索していた
おまけにテスまでが行方不明になり不安が募る
サンが目指していた場所に辿り着いた頃
同行する兵士は いつの間には老論(ノロン)の私兵にすり替わっていた…!
目的の亀岩で証拠を見つけた瞬間 サンを包囲する私兵たち!
しかしいずれもサンの敵ではなかった
武芸ではどの護衛官より腕の立つ王世孫イ・サンである
しかしその時!
倒された筈の兵士がサンを狙って銃を発砲した!!!
弾は僅かにサンを外し味方に命中してしまう!
そこへ銃声を頼りにホン・グギョンが兵を率いて現れた…!
明け方
サンは証拠を持って無事宮殿に戻る
その足で大殿(テジョン)に行き 英祖(ヨンジョ)王に見せた
証拠の文書には 重臣の殆どが陰謀に加担していると記されている
チェ・ソクチュが約束してほしいと言った意味がこれで分かった
すべての者を弾劾すれば朝廷が覆るのは必至である
王世孫が生きて戻ったという知らせにうろたえるキム・ギジュ
しかし王妃はまだ終わりではないという
大殿(テジョン)では 内官が薬湯を前に悩んでいた
王妃から 指示した時間に王様に出すようにと命じられた薬湯である
それを出すべきか… 王妃に従ってよいものか… 悩む内官だった
サンは政務報告を前に 母ホン氏のもとへ行く
嬪宮(ピングン)孝懿(ヒョイ)王后もその場に呼び
譲位宣告の件について報告した
※嬪宮(ピングン):王世孫の妃
秘密裏に動かねばならず 最も心配をかけている2人なのに
話せなかったことを心から詫びるのであった
『宮中に動揺が広がり 朝廷は破局に向かうかもしれません
ですがお2人は 私を信じて安心してお待ちください』
政務報告が始まる辰の刻が迫っていた
王妃は ひたすら王の身に起こる“異変”の報告を待つ
しかしいくら待っても 何の報告も無いままだった
重臣が集まり出し 王世孫イ・サンもまた政務報告の場へ向かう
チェ・ジェゴンが大殿(テジョン)へ 王を迎えに行く
交泰殿(キョテジョン)には 内官の姿があった
内官は 指示された薬湯は出さなかったと王妃の前で言い切った
※交泰殿(キョテジョン):王妃の寝殿
『恐れながら 私は王様にお仕えする内官でございます
今まで王妃様の仰せに従って来たのは 王様のご病気に詳しいので
治療法もご存知だと信じていたからです ですがいかに王妃様でも…
御医(オイ)の許しの無いお薬を出すわけにはいきません』
毅然とした内官の言葉に では自ら持って行くと言い出す王妃!
しかし内官は 既に捨てたと…!
大殿(テジョン)では
返事の無い英祖(ヨンジョ)王の様子を見ようと チェ・ジェゴンが中に入る
するとそこには意識の無い王が!!!
政務報告は中止になり 王世孫が駆け付ける!
ファワン翁主(オンジュ)もまた 父王のもとへ駆け付けた!
そこで王妃と鉢合わせ 敵意の目で王妃を見つめる…!
※翁主(オンジュ):側室から生まれた王女 正室から生まれた王女は公主
『2人のうち“どちらか”とは… 父上のことだったのですか!』
『黙れ!誰に向って怒鳴っておるのだ!』
王様が倒れたのは別の理由だと言い起き 王妃は王のもとへ
御医(オイ)の診察によれば 英祖(ヨンジョ)王の病名は脳梗塞だという
絶望的な病名に驚愕するサン
そこへ現れた王妃に対し『帰れ!』と怒鳴る
このことが誰かの手によるものならば それが誰であれ決して許さないと!
ホン・グギョンは 絶対に奴らのせいだと憤る
山中でも王世孫は命を狙われた
譲位を阻止するため 手段を選ばない策に出たのだと…!
物証を手に入れ 正に譲位の宣布を待つだけだったのだ
英祖(ヨンジョ)王の容態は絶望的であった
このまま亡くなることがあれば 王世孫が即位することになると…!
譲位を阻もうとした苦労は何だったのかと 打ちひしがれるファワン
しかしそうとも限らないというフギョム
王妃は 王様を殺めようとしていた
ということは 王が死んでも王世孫が即位出来ない何か…
その理由を知っている筈だというのだ
王妃は内官を押しのけ大殿(テジョン)に入る!
そして意識の無い王に語りかけた
王妃となったその日から 人生の全てを懸けてお仕えしたのだと
そんな自分を変えたのは王様なのだと訴える…!
『一生を懸けてお仕えした心を 王様は無視したのです!
こんなお姿の王様に酷い言葉を吐き捨てる程…ここまで追い詰めたのは王様です!
もう二度と… 二度と目覚めないでください!!!』
英祖(ヨンジョ)王が危篤だという噂は 民の間にも広まっていた
図画署(トファソ)はにわかに忙しくなる
崩御となれば図画署(トファソ)は 国葬に向けて騒がしくなるのだ
ホン・グギョンは 譲位の件を推し進めようと進言する
チェ・ジェゴンも 朝廷が混乱する前に公布すべきだという
サンは納得し 明日重臣たちに王様の意向を伝えるという
その夜 サンは意識が戻らぬ王を見舞い
何としても守ると言ってくれたことを思い返すのだった
翌日
王世孫イ・サンが 意識を失う前の王様から譲位の意向を賜ったと
今にも告げようとしたその時 王妃が現れる!
『一体何の真似ですか!まだ王様がご存命だというのに…!』
『王妃様こそ何の真似ですか ここは王妃様が来るべき場所ではありません』
『王世孫こそ!この場にいるべきではない 理由はお分かりでしょう!!!』
貞純(チョンスン)王后は “王世孫を廃位する”という宣旨を持っていた…!
重臣たちの間にどよめきが起こる!
王が既に王世孫を許したことも
亡き王世子に対する懺悔の念も
王世孫に譲位するという意向も…
すべては王と王世孫の間で 秘密裏に取り交わされたことなのだ
公の場においては “王世孫を廃位する”という意向のままであった…!
『その王命は失効しています
王様はその王命を取り下げ 新たな王命を下されたのです』
正式な王命であれば 都承旨(トスンジ)を通している筈だと主張する王妃
しかし都承旨(トスンジ)は そのような王命は承っていないという
※都承旨(トスンジ):王命の公表・伝達をし民の上訴を王に伝える官職
『もう結構!真の王命がどれかはいずれ明らかになります お引き取りを!』
『黙られよ!何という言い草ですか!ここは王妃様がいるべき場所ではない!
力づくで追い出される前にお引き取りを!!!』
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