「ホントにツキがなかったなぁ」大谷翔平がいま明かす“衝撃の告白” じつは「運が悪かった」と感じていた…「なぜゴミを拾うのか?」の真意とは?<単独インタビュー>―2025上半期 BEST5
Number Web4/25(金)6:01
「ホントにツキがなかったなぁ」大谷翔平がいま明かす“衝撃の告白” じつは「運が悪かった」と感じていた…「なぜゴミを拾うのか?」の真意とは?<単独インタビュー>―2025上半期 BEST5 photograph by Nanae Suzuki
2024ー25年の期間内(対象:2024年12月〜2025年4月)まで、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。大谷翔平部門の第4位は、こちら!(初公開日 2024年12月27日/肩書などはすべて当時)。
新たな伝説となるシーズンを終え、世界一の野球選手は落ち着いた柔らかな表情で、われわれの前に腰を下ろした。WS制覇の味、「50-50」達成、二刀流への意欲、家族のこと。30歳の成熟した言葉で、野球と、人生について、真摯に語った。<全2回の前編/後編に続く>【初出:発売中のNumber1111号[スペシャルインタビュー]大谷翔平「まだまだ伸びしろは残っているなと」より】
大谷翔平、次はどこを目指す?
――ドジャースのユニフォームを着ていきなり1年目に山頂に辿り着いて、次はどこを目指すんでしょう。
「それは連覇じゃないですか。優勝すること以上に難しいでしょう。長い歴史がある中で、ワールドシリーズの優勝チームは100年以上の歴史があれば100チーム以上、出てきますけど、連覇したチームは数えるほどしかなくて(過去7チーム)、21世紀にはまだゼロなんです。連覇できる確率はグッと減っているのは事実なので、来年もワールドシリーズで勝てたらそれは特別なことだと思います」
――ドジャースとの10年契約、10回の世界一を本気で目指しているんですか。
「もちろん、そうなんじゃないですか。1年1年が勝負ですし、オーナーもフロントスタッフも、みんなが世界一になるために動いていると思います。チームが同じ方向を向いてるかどうかは一番大事なのかなと思います」
――今年はバッターに専念したら、いきなりの史上初の“50-50”達成です。打つほうでいえばホームランはキャリアハイの54本、打率も3割を超えて(.310)、OPSも目標の“千”超え(1.036)でした。大谷さん、いったいどんなバッティングを作り上げたんですか。
「そこは徐々に成長しているなと感じています。いくつもの要素があって、ここまで来ました。いろんな選手を見て、いいところを自分の中に取り入れようとして、ドライブライン(シアトル郊外にある、選手の動作を科学的に解析し、その数値を野球に活かしてパフォーマンスを向上させようというトレーニング施設)で理想の形を模索して……いろいろとやってきたことがこうして形になってくれているのが何よりも嬉しいし、励みになっています」
ホントにツキがなかったな
――開幕前に大谷さんは「バッティングに関しては太い枝ができている」と仰っていましたが、今年はさらに前へ進んだ感じはありますか。
「ありますね。スイングに関しては基本的なことができているかどうかが一番なんです。バッティングというのは、いかに可能性を広げていくかという確率のゲームでもあります。打てる確率をフォームによって上げていく作業をしているんですが、正しく構えて、タイミングを合わせて、イメージ通りの軌道でスイングすれば、ヒットやホームランを打てる可能性は限りなく広がります。そうすれば数字は残りやすくなるんですが、最後、そこにツキという要素が加わってくるのが野球の厄介なところです」
――ツキ?
「とくに今シーズンの前半はツイていなかったなということが多くて、運が悪かったと思っています。僕の感覚では8月も最悪で、ホントにツキがなかったなぁと……114、115マイルのライナーを打っても捕られるし、強いゴロが野手の真正面に行く。ホームランだけがヒットになるみたいな感じで、なんともなりませんでした。逆に9月はいい数字が残ったんですが、とくに状態がよかったというわけじゃなく、やたらとツイていた。野手の間を抜けてくれるし、『ああ、ファーストゴロだ』と思った当たりが相手の守備力のおかげでヒットになったこともけっこうあって、月ごとに考えると運の要素でかなり数字がバラついていましたね。ファンのみなさんは数字にこだわると思いますが、プレイヤーとしては感覚にこだわっていかないと、長いスパンで見たときの数字が残らないんです。運がもたらしてくれた数字はやがて収束してしまいますし、結局は実力に伴う数字に近づいてきます。となれば、数字より感覚を大事にしたほうがいいよね、と思います」
――ツキを取り戻すために、何かしていることはないんですか。一生懸命、落ちてるゴミを探すとか(笑)。
「それはないですね。ツキはもう、どうにもできない。短いスパンで見たときのツキは、運の良し悪しでしかないと思うんです。これが10年、20年、30年となれば、ゴミを拾うとか、普段の行いが周りとの関係を作ってくれて救われることもあると思います。でも打球が抜けるかどうかは、野球の神様のみぞ知るところで、その要素を験担ぎによって広げようということはありません。ただツキがなかったな、と解釈したほうが、自分がやろうとしていることは間違ってないと正確に測れますからね」
運を呼ぶためにゴミを拾うというのは…
――でも、高校生のときには他の人が捨てた運を引き寄せようとゴミを拾っていたんですよね。そうすれば野球の神様も味方してくれるんじゃないか、みたいなところから始まっていたんじゃなかったんですか。
「打球が抜けてくれたらいいなと思ってゴミを拾っていたわけじゃないんです。それが野球につながるからではなく、人に対してどういう自分でいられるか、というところにつながっていると思っています。たとえば挨拶しない人と挨拶する人が僕の前にいて、どちらを僕が大事にしたいかと思ったら、絶対に挨拶する人に好印象を持つじゃないですか。そういう人と友だちになりたいなと思うし、優しくしたいな、僕も何かしてあげたいなって思うでしょう。審判に挨拶するのもそうだし、相手の選手に対してリスペクトの気持ちを持つこともそう。勝負の世界で生きていれば、敵になることも味方になることもあります。僕が野球を辞めたあとも、自分がどういう人でいられるか……それを運と呼ぶかどうかはそれぞれだと思いますが、運を呼ぶためにゴミを拾うというのは、そういうことだと思っています」
――野球につなげるためにゴミを拾っているんじゃなかったんですね。
「違いますよ。ゴミを拾って、ヒットになったらいいな、とかではないので」
<後編に続く>
文=石田雄太
photograph by Nanae Suzuki