特養ホーム不当解雇訴訟 元職員の解雇無効の判決 函館地裁
函館市の特別養護老人ホームで元職員が、施設で虐待が行われていると市に内部通報したあと懲戒解雇されたのは不当だとして施設の運営法人を訴えた裁判で、裁判所は原告の訴えを一部認め、運営法人側の懲戒解雇処分を無効とする判決を言い渡しました。
函館市の特別養護老人ホーム「恵楽園」に勤務していた元職員が、おととし、施設内での不適切な身体拘束などの虐待行為を市に内部通報したあと、懲戒解雇されたことをめぐり起こしたもので、運営法人に対し、解雇の無効のほか慰謝料や未払い賃金など980万円余りの支払いを求めていました。
裁判で運営法人側は「懲戒解雇は原告によるパワハラを理由にしたものだ」とした上で、「内部通報は関係ない」などとして、訴えを退けるよう求めていました。
8日の判決で函館地方裁判所の五十嵐浩介裁判長は、内部通報を理由とした懲戒解雇は違法だとして慰謝料を求める請求について、「運営法人側が解雇を決定した時点で通報の存在を認識していたとは認められない」として運営法人側の賠償責任を否定しました。
一方で、五十嵐裁判長は、「原告の行為の中には懲戒事由に該当しうるものもあるが、最も重い懲戒解雇とするには客観的で合理的な理由があるとはいえない」などとして運営法人側の懲戒解雇処分を無効とする判決を言い渡しました。
その上で、運営法人側に対して、月額給与や期末手当として未払分や将来分の賃金などを支払うよう命じました。
8日の判決のあと、原告側が札幌市内で会見を開きました。
この中で、原告の女性は、「施設は再発防止策を徹底し、入居者のために尊厳と命を守るための抜本的な改善をすべきです。そして、行政にも監査と指導の強化を強く求めます。声を上げた者が潰される社会ではなく、声を上げた者が守られる社会であることを望みます」と涙ながらに話しました。
一方で、原告の市への内部通報が懲戒解雇の理由ではなく、損害賠償請求が認められなかった点について、「解雇されたのは報復としか思えない対処だったので、不利益な取り扱いが認められなかったのは残念です」と話しました。
弁護団の倉茂尚寛弁護士は「判決で通報を理由にした懲戒解雇であると認められなかった点に課題があると思う」と話しました。
判決について、函館市の特別養護老人ホーム「恵楽園」の運営法人は、NHKの取材に対して、「コメントは差し控えます」としています。