能登半島地震はこの先どのように報道され続けるのか:アニバーサリージャーナリズムの限界
「周年報道」というものがある。大きな事件や事故、災害があった日が巡ってくるたびにそれを振り返る報道がされることで、アニバーサリージャーナリズムと言うらしい。たとえば東日本大震災は2011年3月11日だから、毎年3月11日になると「東日本大震災から〇〇年」などと題して特集が組まれる。
今年はじめに発生した能登半島地震についても、1年後の同じ日には周年報道されるはずだ。それは2025年1月1日、来年の元日である。そして来年以降も1月1日には能登半島地震の報道が繰り返される。問題なのはそれが元日だということ。正月という「おめでたい」時期に、テレビ新聞その他マスメディアは能登の震災を大きく取り上げることができるのだろうか。
KDDI研究所の機関紙『Nextcom』最新号の中にこの件に触れている箇所があったので、以下に引用する(注)。
地震からの復旧・復興を進める上で、被災地以外からの支援は不可欠であるため、こうした周年報道を機に思い出してもらうことが需要である。だが、発生した日が元日であるという制限から、各メディアのコンテンツ作りが難しくなるのではないか。
発災日が元日であったことがメディアによる周年報道の足かせとなるのではないか、とこの記事の筆者は危惧している。震災から1年しか経っておらず、いまだ復興の途上にあるのだから、大きく取り上げる必要がある。本来であれば発災1周年の報道には各社とも力を入れるべきだが、おそらく元日というシチュエーションがそれを許さない。
メディア各社の対応が気になるが、「お正月」であることを加味してなるべくポジティブな方向に持っていくような、感動ポルノ的なコンテンツ作りをするのではないかと思われる。たとえば、スタジオと被災地を中継でつないで当事者を出演させ、「復興へと前向きに頑張る被災者のみなさん」のイメージを醸し出すなどして、ポジティブな側面を強調するだろう。その結果、政府・行政の支援が足りていない等のネガティブな面は覆い隠されてしまう。
事実、地震からしばらくたつとメディアの報道から切迫感が徐々に抜け落ち、「復興へと前向きに頑張る被災者のストーリー」が増えていったように思う。それは被災地の当事者たちがSNSで発信する、切羽詰まった実態とはかけ離れたものだ。マスのコミュニケーションとSNSの当事者発信の特性の違いと言えばそれまでだが、あまりのギャップに強い違和感を覚える。
昨今はマスメディアの影響力が低下しているとはいえ、このような大規模災害をメディアがどう扱うかは世論を左右する。能登半島地震の被害を風化させず、社会全体で問題意識を共有するには、マスメディアが重点的かつ継続的に報道していく必要がある。その意志がメディア各社にあるかどうかは、まもなく訪れる元日の「周年報道」からうかがい知ることができるだろう。
注:KDDI研究所の機関紙『Nextcom』Vol.60(2024、冬号) の特集は「災害と情報通信」。ユーザー登録すると無料で読める。
https://rp.kddi-research.jp/nextcom/volume
本稿で引用した「令和6年能登半島地震とコミュニケーションの課題」には、周年報道の問題の他にも重要な論点が示されている。
テレビでの呼びかけが津波避難のきっかけになった人は少なかった
被害の大きい地域ほど情報が必要であるのに、入手する手段が限られていた
日テレ系のローカル局であるテレビ金沢は、Youtubeでニュースを流したりライブ配信をするなどの取り組みをしていた。県外や海外から関心が寄せられているという
ちなみに、被災者へのアンケート調査はNHKの記者と東大の研究所でおこなったらしい。
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