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マスコミ不信の処方箋

※以下の文章は、2024年5月25日にTwitterに投稿した内容を大幅に加筆修正したものです。

NHKには放送文化研究所という調査機関があり、メディアに関する研究や世論調査をしています(以下:文研)。ここでは毎年、「文研フォーラム」を開催しています。マスコミ関係者や各分野の専門家を招き、特定のテーマで話し合うというもの。今年のテーマは1日目が「能登半島地震」、2日目が「偽・誤情報対策」でした。

※8月31日まで見逃し配信中です。


フェイクニュースとSNS規制

私が注目していたのは2日目のプログラム「誤情報・偽情報にどう立ち向かう~メディアに何ができるのか」でした。

まだ新しい領域ということもあり、とにかく不透明で、怪しいことこの上ないんですよ。フェイクニュースや偽・誤情報の定義からして曖昧だし、論拠となる学説だって体系化されてないし、チェックの技法も確立しているとは言いがたい。最近書いたnoteでも、そのあたりの問題に触れています。

能登半島地震を機に「偽・誤情報対策」と称してSNS規制を強める政府と、それに乗じる形で「フェイクニュースをファクトチェック」することで特権を維持しようとするマスコミ、中立性と公正性が問われるファクトチェック団体……そして、私たち一般ユーザーも利害関係者であり、この中では最も立場が弱いですよね。

SNS規制強化によって最も割りを食うのは、一般ユーザーであることは間違いありません。投稿削除やアカウント停止にびくびくするのは、まっぴらごめんですよ。自由にモノが言えなくなったら世の中おしまいです。


ファクトチェックとマスコミ不信

双方向の対話を

今回のNHK文研フォーラムには、国内の主要なファクトチェック団体の運営者や、その分野に詳しいマスコミ関係者が登場するというので、ある意味とっても楽しみにしていました。

前半では主にファクトチェックの取り組みが紹介されていて、これについても言いたいことが山ほどあるのですが、長くなるので稿を改めますね。今回取り上げるのは、プログラム最後に出てきたテーマ「ファクトチェックとメディアの信頼」についてです。

このコーナーは、こんな辛辣な言葉からスタートしました。

「NHKは近年、フェイクニュースをファクトチェックする主体たろうとしていますが、はたしてその資格があるのでしょうか?」

はむたが送った事前アンケートの内容の一部が、番組内で紹介されました


ファクトチェックをする際に最初にぶつかる障壁は、マスコミ不信です。司会進行を務めたNHK文研の人は、「おまいう問題」と表現してました。「マスコミの報道こそ、フェイクだらけじゃないか!」と返り討ちに遭うわけです。

大手マスコミの報道にも間違いはありますし、虚偽・捏造など意図的なものさえ含まれています。それを棚上げして、SNSでの情報の真偽を「判定する」なんて、あまりに傲慢ではないですか? と前出の言葉は問うているのです。

マスコミ不信が強まると、「マスコミが発信する情報だからこそ信じない」という人も出てきます。そういう人たちに伝えていくにはどうしたらいいか、という課題がフォーラムで話し合われました。以下に登壇者の意見を要約します(敬称略)。

間違ったときの事後対応が大事。一次情報を重視する(リトマス・安藤)

ウェブ記事で間違えたらいきなり消さず、訂正の理由も示すという意識が、業界に浸透しつつある(NHK・籔内)

記事を作る過程がブラックボックス化していて、不信につながる。透明性を高める努力を(琉球新報・滝本)

事実を報道し、民主主義の発展に資するんだと信じて、突き進むしかない(日テレ・井上)

マスコミの情報を鵜呑みにする人がいたら、それはリテラシー教育の失敗。間違いがあったら指摘してね、という姿勢が必要(JFC・古田)

NHKの出す情報だから信じてください、と言いたいけど、ひと昔前とは違う。業界として信頼してもらうよう、しっかり伝えていく(NHK・三輪)

昔みたいに無条件に信じてもらえないのはなんでだろう?という戸惑いを、特にテレビの人たちから感じました。昔とは違うのだから変わらなければと思っても、どう変えていけばいいのかわからない……そんな印象を受けます。

確かに、インターネット登場以前は、テレビも新聞も立場が強かったですよね。今みたいに視聴者・読者の反応を、いちいち気にする必要がなかった。マスコミが情報を独占し、それを一方的に流すというのが「報道」だった時代です。

SNSが発達して、個人が情報発信するようになると、マスコミの地位は相対的に下がります。SNSの集合知と当事者発信によって、報道の誤りや虚偽が暴かれるようになる。そのときメディアはどうこたえるか、SNS民は見ています。もはや一方通行の情報伝達ではすまされない。双方向のやり取りが求められているのです。今はそれが成立していないので、メディアも世間の人々も、お互いに疑心暗鬼になっているのではないでしょうか。

「どう変えていけばいいのかわからない」のヒントは、双方向性と透明性にあります。「どういう意図でこれを報じ、あれを報じないのか?」「受信料を払えと言うが、公共放送っていったい何なのか?」等々の疑問に一つひとつ答えていくことで、不信感を和らげていくしかないのです。

フォーラムでの発言には、「いま起こっていることを伝えるのが優先」とありました。速報性を優先すると、すでに報道した内容の検証や結果の説明が後回しになってしまう。そういうジレンマがあるようです。

だからこそ、報道内容を検証したり、報道による被害を救済したりする、独立した機関が必要です。放送の分野にはBPOがありますが、新聞や出版はそういった機関がありません。読者や関係者とのトラブルを仲裁するどころか、苦情を持ち込む先すらろくにないんですよ。まずはそういう第三者機関を作って、どうか視聴者・読者の声に耳を傾けてください。「伝える」だけでなく「聞く」ことにも、ぜひ力を入れてほしいです。


過ちを認める勇気

たとえば、マスコミがウェブ記事の誤りを指摘されると、何の説明もなく訂正・削除することがよくありますね。訂正・削除すればいいだろう、という認識は甘いです。かえって反感を煽ることになりかねません。

マスコミは間違いを認めないし、謝らないことで有名ですが、謝っても死にはしないので潔く謝りましょう。

間違いを犯すことよりも、間違いを素直に認めず、謝ろうともしないことの方が、ずっと悪質なのです。今回の文研フォーラムではファクトチェック団体「リトマス」の安藤理事が、間違った時の事後対応が大事だという趣旨の発言をされていました。しごくまっとうな意見ですよね。間違いを犯したらそれを認めて謝る……小学生でも知っている常識です。エリート揃いの大手マスコミ人がなぜできないのでしょうか?

報道した内容に間違いがあったときに取るべき対応は、訂正するにせよ削除するにせよ、経緯と理由をできる限りすみやかに示すことです。どのような指摘がどこからあって、どういう理由で訂正・削除するのかという説明を、見る人が納得のいく形でしていくこと。「説明責任」というと大仰ですが、やることは単純です。事実を隠蔽したり歪曲したりするから、ややこしくなるんですよ。

ちなみに、去年私がNHKクロ現で捏造報道された時には捏造された内容がウェブ記事にも掲載されました。抗議した結果、その部分は削除されましたが、削除の理由や経緯は何も書かれていません。都合の悪いことは徹底的に隠すNHKの体質が、こういうところによく表れています。

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はむたに関する捏造部分が、本人の抗議により削除されたが、経緯の説明はない。
クローズアップ現代公式サイトより。


「作り手の顔」が見える報道?

「透明性を高める」の意味を勘違いしているのか、記者や番組制作者がやけに前面に出てくることがあります。彼らの思いやこだわり、人となりといった私的な事柄を明かすことは、透明性とは何ら関係がないはず。報道関係者は芸能人ではないのです。重要なのは報道の内容であって、報道関係者の個人的な情報ではありません。

「作り手の顔が見える卵」と言うのがスーパーに売っていて、生産者の写真が卵パックに貼ってありますが、あれと同じノリなのでしょうか? 顔写真を出せば信頼度が増すと思っているのなら、あまりに短絡的です。

顔を出し、趣味嗜好を公開し、記事ないし番組に込めた思いを語り、人となりをわかってもらう……記者や番組制作者、アナウンサーなどの報道関係者を「タレント化」し、親近感を持たせようとする傾向が、最近は顕著に見られます。親近感があれば多少は大目に見てもらえる、という魂胆なんですかね?

「透明性を高める」というのは、もっとシンプルで当たり前のことです。都合が悪いことを隠したり、ウソやごまかしで逃げようとしたり、面倒がって伝えなかったりといた、マスコミの常套手段をやめて、誠実にありのままを伝えればいいだけです。

「ありのままを伝えるのは、大人の事情があるから無理」というのなら、それとは引き換えにマスコミが社会からの信頼を失うまでです。ただし、社会の側でも大切な機能を失うことになる。私はそれが嫌なので、こうしてマスコミ批判をしているのです。

悪のシンジケートを解体せよ!

フォーラムに参加していたテレビ業界の人たちは、精神論を口にしていたけれど、「しっかり伝える」とか「事実を伝える」では信頼回復は無理ですよ。ここ最近明らかになったマスメディアの不祥事、不正は、業界全体を覆う深刻なものでしたからね。

芸能事務所社長の性犯罪・児童虐待を、業界全体で見て見ぬふりをした旧ジャニーズ事務所問題、NHKニュースウオッチ9でのワクチン偏向報道、日テレのドラマ「セクシー田中さん」原作者が脚本トラブルで自死したこと……

これらは人の生命と健康、人生、人権を脅かすほどの重大な犯罪であり不正であるにも関わらず、マスコミはお互いにかばい合い、業界全体で隠蔽し続けました。いまだにきちんとした検証がされず、誠意ある対応もなく、説明責任を果たされないまま、苦しんでいる人たちがいます。

マスコミには自浄作用がないため、これらの組織犯罪ともいうべき悪を暴いたのは、海外メディアや当事者のSNS発信でした。あたかもシンジケートのようにマスコミ各社が暗黙裡に結託して犯罪者を守り、罪を隠蔽していたことが、白日の下にさらけ出されたのです。それを目にした時の絶望たるや……。

業界全体で国民を欺いておきながら、「なぜ信用されないんだろう?」とは笑止千万です。自分たちのしてきたことを、よく振り返っていただきたい。

話はそれからです。ファクトチェックなんか、100年早いですよ。

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