収益悪化が止まらない自販機業界 結局「人手」が必要なビジネスの現実
業績に表れる「自販機依存」のリスク
自販機への依存度が高い飲料メーカーとして、ダイドーグループHDが知られるが、この業績をみれば自販機の厳しい状況は明らかだろう。図表2は、自販機チャネルが8割を占めるダイドーの国内飲料事業の売上高、営業利益の推移である。 2023年にはアサヒ飲料と自販機オペレーター事業の統合により事業規模が拡大しているが、それを加味しても売上の低迷と収益の縮小、そして直近では赤字に転落している様子が見て取れる。自販機の売上低迷と人件費の上昇が重なり、損益分岐点売上を下回った結果といえる。 この現状を打破するための主な対策として、(1)不採算自販機の撤去、(2)デジタル自販機への入れ替え、の2点が挙げられる。(1)は利用者が減少した設置場所から自販機を撤去するという、極めて合理的な措置である。(2)は、販売状況や在庫をリアルタイムで把握し、補充を最適化するとともに、売れ筋商品に品ぞろえを切り替えるという対応である。 これらの効果は以前から知られているが、自販機のDX化には多額の投資が必要となる点がネックである。市場縮小が予測される中での大規模投資には高いリスクが伴うため、業界横断での協調やインフラ共有が進む可能性が高い。
自動販売機は「全自動」ではない
実際、飲料業界では以前から、自販機オペレーションに関するメーカー間の統合が進められてきた。ダイドードリンコとアサヒ飲料の統合もその一例であり、過去にはJTの自販機事業がサントリーに譲渡されたケースもある。今後も各社はオペレーター統合を進めつつ、不採算自販機の撤去による短期的な収益改善を図っていくものとみられる。また、統合によって形成される業界横断的なオペレーターを通じて、DX投資の効率化が進められるだろう。 「自動販売機」という名称からは無人オペレーションを想起するが、実際にはDX投資が不十分な労働集約型ビジネスであるという点は、意外に思われるかもしれない。だが考えてみれば、インターネットが飛躍的な進歩をもたらしたのは情報の分野であり、物流においては依然として人手に大きく依存している。EC(電子商取引)の拡大により物流が逼迫している現状を見れば、その限界が明らかだ。インターネットがもたらす利便性は、モノの移動には及ばない。 自販機チャネルは小口分散型であり、仮にDX化を進めたとしても一定の人手は必要な商売だ。効率化によって損益分岐点を引き下げたとしても、そこに届かない設置場所は今後維持が困難になるだろう。全国のあらゆる道端に自販機が設置されているという日本特有の風景も、そう長くは続かないかもしれない。 筆者プロフィール:中井彰人(なかい あきひと) みずほ銀行産業調査部・流通アナリスト12年間の後、独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。執筆、講演活動:ITmediaビジネスオンラインほか、月刊連載6本以上、TV等マスコミ出演多数。 主な著書:「小売ビジネス」(2025年 クロスメディア・パブリッシング社)、「図解即戦力 小売業界」(2021年 技術評論社)。東洋経済オンラインアワード2023(ニューウエイヴ賞)受賞。
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