日台断交半世紀

日本と台湾の防衛・安保協力は待ったなし──佐藤正久・参議院議員に聞く

政治・外交

高橋 郁文 【Profile】

2021年2月、自民党の政務調査会に、日台断交以降で初めて「台湾」と名が付く政策プロジェクトチーム(PT)が立ち上がった。座長は党外交部会長(注:取材当時)の要職にあり、“ヒゲの隊長”と呼ばれた自衛隊OBの佐藤正久参議院議員。激変する国際情勢の中、日本は台湾との防衛協力を進めるべきだとの持論を述べた。

佐藤 正久 SATŌ Masahisa

参議院議員、参議院自民党国会対策委員長代行、自民党国防議連事務局長。1960年、福島県生まれ、防衛大学校卒業後、陸上自衛隊に入隊。2004年の自衛隊イラク派遣では第一次復興業務支援隊長を務めた。07年に退職し、自民党から参院選の比例区に出馬して初当選。現在3期目。外務副大臣、防衛大臣政務官、党国防部会長などを歴任した。

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日台こそ「一衣帯水」の関係

─これまでの台湾との接点について伺いたい。

台湾には5、6回訪問している。米陸軍指揮幕僚大学に留学した時の同級生がいて、高雄市(台湾南部に位置する台湾の直轄市)の高官だった時に面会したり、彼が馬祖群島の南竿で司令官だった際に現地を訪問し、地下の司令部や病院などを見せてもらったりしたこともある。

台湾東部の花蓮も視察したが、3000メートル以上の台湾山脈は、中国にとってミサイル攻撃時の障害になるところ、花蓮などの東部に命中させるのは難しいと感じた。空軍基地にも訪れた。

国会議員としては、日台の与党間2プラス2(外交・防衛政策のトップ会談)を経験した。このほか台湾関係では、パラオとの連携強化に取り組んでいる。日米とオーストラリア、ニュージーランド、台湾で、さまざまなプロジェクトを進めようとしている。

─日本と台湾は現在、国交がなくても過去最高の関係にあると言われている。友好が深まった理由をどう考えるか。

一番大きいのは、価値観を共有しうる相手という部分があり、また日本の統治時代における、台湾の人々の日本統治に対する評価も背景にあると思う。

自由・民主主義・法の支配という部分で、台湾は相当程度、価値観を共有できるパートナーだ。「覇権的膨張主義」の中国とは異なる。日本と台湾はそれぞれ、人々がお互いを「好ましい」と思う割合が世論調査などでも大きい。

─党の外交政策を立案される立場から、台湾の位置付けをどのように考えるか。

日台は地政学的にも「一衣帯水」のような関係だと思っている。台湾は先島諸島と110キロしか離れていない。また、台湾は日本のシーレーンにあり、輸入物資の相当量がバシー海峡や台湾海峡を通過する。特に原油は9割以上がバシー海峡を通過するところ、台湾は日本の生命線上にあると言える。

また、経済安全保障の観点からも、台湾は重要だ。台湾は世界の最先端半導体の9割を生産しており、製造が止まれば日米欧などの多くの国々が痛手を受けることは容易に想像できる。

台湾は、東シナ海、南シナ海、太平洋を3分割するような位置にある。安全保障上、台湾がわれわれと同じ自由主義陣営側にいるのか、あるいは中国側にいるのかで大きな違いが生じる。中国から見れば、バシー海峡に影響力を持つことができれば、潜水艦が海南島から自由に太平洋に出られるようになる。加えて、米海軍の南シナ海への出入りをけん制できる。

自由主義陣営の結集で「台湾有事」を防ぐ

─米中対立の深刻化に伴い、「台湾有事」の可能性が取り沙汰されている。米中や日本に求められている一番大事なこと、スタンスというのはどういうものと考えているのか。

日本も米国も「曖昧戦略」を取っているが、この曖昧の割合を小さくすべきだと思う。中国の言う「一つの中国原則」に対する公式の立場は、日本が「十分理解し尊重する」で、米国が「acknowledge」(認める)だが、現状変更を行った際はその限りではないという立場を取っている。

この「その限りではない」というところで、本当に現状変更があった際、米国は武力で関与するのか、日本は関与するのか、今は曖昧にしている。しかし、「曖昧な部分」を今後小さくしていかないと、実際に台湾有事が発生した際の邦人保護、あるいは第三国の国民保護といった活動(の準備)は困難になる。つまり、日米両政府と台湾政府との間で、この件に関する事前調整はどうしても必要だ。

そのような事態が起きた場合、外国人の保護・救出は米国主導で行うのだろう。日本政府が日本人だけ救出するというやり方にはならない。米軍が全て仕切り、そこから日本などの同盟国や有志国からの航空機が派遣され、国外脱出を希望する外国人のスクリーニング・出国を行うことになる。

退避する航空機の到着地は、おそらく日本になる。一部はフィリピンもあるだろう。台湾をウクライナに例えれば、日本はポーランドのような役割を担うことになる。ウクライナの人々がポーランド経由で第三国へ避難したように、台湾有事では日本から第三国に移動することになる。

事前の協議は、実際にはまだ始まっていない。だが今回、中国の軍事演習で日本のEEZ(排他的経済水域)にミサイルが着弾したことで、検討開始の動きが加速するはずだ。2022年年末に出される「戦略3文書」(外交・安全保障政策の根幹をなす「国家安全保障戦略」、「防衛計画の大綱」、「中期防衛力整備計画」の3文書)では、邦人保護・国民保護は焦点になるだろう。問題は、台湾には防衛省から出向した駐在武官がいないことだ。解決すべきことが多く、まだこれからだ。

─「台湾有事」を未然に防ぐ外交について考えを伺いたい。

安倍政権の時代から、日本はある種の中国包囲網づくりをしてきた。米国やオーストラリア、あるいはカナダや英国、フランスなどの自由主義陣営勢力の総和が中国の台湾侵攻能力や軍事力を上回る体制を整えておく必要がある。

それが(台湾の国際政治学者の林泉忠氏が唱えた)「345中国包囲網」で、3が「AUKUS」(米国、英国、オーストラリア)、4が「QUAD」(日本、米国、オーストラリア、インド)、5が「ファイブ・アイズ」(米国、英国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ)を指す。他の対中包囲網としては「CPTTP(環太平洋パートナーシップ協定)」や「IPEF(インド太平洋経済枠組み)」も挙げられる。

NATO(北大西洋条約機構)をいかに巻き込むかという点で「FOIP(自由で開かれたインド太平洋)」構想もある。英仏独を含む欧州諸国においてもインド太平洋戦略を打ち出しており、同地域への関心が高まっている。

英国はEUを脱退したことで、CPTPP加入を申請し、軍事面では「クイーン・エリザベス」など空母打撃群を日本に寄港させるなど、日本との関係を深めている。航空自衛隊の次期戦闘機も、日英共同開発の方向で進んでいる。

佐藤正久参院議員
佐藤正久参議院議員

安全保障分野の関係強化は重要

─米国の政治家や高官の訪台が相次いでいるが、日本も交流促進を考えているのか。

日本高官の台湾訪問はおそらくないであろう。首相も衆参両院の議長もないと思う。中国は、先のペロシ米下院議長の訪台後に軍事演習で対抗したように、高官の訪台を利用して新しい常態(ニューノーマル)を作ろうとするだろう。例えば、台湾海峡に中台の「中間線」は存在しない、という主張などだ。今、日本から動くのは得策ではないし、中国にいる日本人の安全も考えなくてはならない。一方で、日台間の議員交流はもっと盛んにやるべきだと思う。人道的な分野や、防災分野などの協力関係も強化すべきだ。

私が外交部会長(注:取材当時)になって、初めて自民党の政務調査会に台湾政策PTを作った。時代の流れとはいえ、画期的なことだと思う。日中国交正常化後、これまで自民党内での台湾とのやり取りは、青年局の主導で進めていたが、これは幹事長室の下にあり、あくまで友好・交流中心という建前であった。

また、日華議員懇談会などの議員連盟の交流もあるが、超党派という立場があるので、安全保障や経済安保の話をするチャンネルにはならない。そこで台湾PTを作り、日台与党間での外務防衛の2プラス2を始めた。このような手法に、カナダやオーストラリアの政治家も強い関心を示している。

感染症や気候変動、防災対策などの分野でも台湾との連携を進めたい。昨年3月、台湾と米国が海上保安分野での協定を結んだが、私たちは以前から、日米台で海上捜索救助訓練をやるべきだと言っている。しかし、関係強化の本丸はやはり防衛・安全保障分野で、待ったなしでやらなければならないと思う。

写真は全てnippon.com編集部撮影

バナー写真=佐藤正久参議院議員

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    ニッポンドットコム翻訳編集者。大学院でバイリンガリズムを研究後、大手メーカー、出版社などを経て、2011年より現職。台北生まれ台北育ちの台北っ子。

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