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コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

TICAD閣僚会合の開催

2010-04-30 | Weblog
日本が音頭を取って、アフリカ各国の閣僚級の代表を一堂に集める。そして、アフリカ諸国の経済開発にかかわる問題を、一緒に議論していこう。そういう会議が、来週5月2-3日に、タンザニアのアルーシャで開かれる。「TICAD閣僚会合」と名付けられ、日本の岡田克也外相が議長を務める。

「TICAD」というのは、日本が主催(世銀、UNDP共催)して、1993年以来5年に一度開催してきているアフリカ首脳会議のこと。その年には、アフリカ諸国の全首脳を日本に招いている。前回は、2008年5月に、第四回会議が横浜で開催された。この「TICAD」首脳会議が開催されない年には、首脳会議で行われた決定事項がちゃんと進んでいるかなどの検討会を、アフリカ各国の閣僚を集めて行っている。それが「TICAD閣僚会議」である。

日本はつくづく思うに真面目な国である。首脳会議で表明した公約を、きちんと守るだけでなく、毎年「閣僚会合」を開いて、アフリカ諸国からの意見を聞く。こうした生真面目さこそ、アフリカ諸国が高く評価するところだ。有言実行の日本である。

2008年の「TICAD横浜会議」では、2012年までに、対アフリカ向け政府開発援助を倍増すると公約した。つまり、それまでの約9億ドルを、約18億ドルに持っていくという約束をした。財政が厳しい中で、これは大風呂敷ではないだろうか、ほんとうに倍増できるかな、と思っていた。そうしたら、2008年の拠出額は、すでに17.5億ドルに達したらしい。つまり、目標にほぼ到達しつつある。有言実行である。

また、「横浜会議」で日本は、アフリカ向け直接投資についても、2012年までに倍増するという目標を示した。それまでの投資残高(過去5年平均)が17億ドルであったものを、34億ドルにするという。こちらの目標についても、2008年の実績でみると、33億ドルに大きく伸びていて、ほぼ達成している。有言実行である。

アフリカ諸国にとって、有言実行の日本は頼もしい兄貴である。それだけではなく、日本がアフリカの声をとりまとめていくというのは、大変ありがたいことだ。日本は、アフリカが抱える問題、アフリカが先進諸国に求める要望などを、他の援助供与国側に伝える、橋渡し役を請け負っているのだ。「TICAD(アフリカ首脳会議)」も「TICAD閣僚会合」も、だいたい3月から5月にかけての時期に行われる。つまり、夏前に行われる「先進諸国首脳会議」いわゆるG8サミットの前に、日本がアフリカの声を纏めるという段取りになる。

このように、もうかれこれ20年にわたり「TICAD」を通じて、日本はアフリカ諸国に対して、兄貴分としての影響力を維持して来た。と思っていたら、最近になり、他の各国も同じような会議を開催し始めた。そういう兄貴分の役回りを、日本だけに独占させてならじ、ということだろうか。欧州共同体(EU)は、2007年に「アフリカ・EU戦略パートナーシップ」という枠組みを構築した。そして同年12月には、欧州とアフリカ両方から67ヶ国の首脳が集まって、リスボンで第2回首脳会議(第1回は2000年にカイロで開催)が開かれた。今年の11月には、第3回首脳会議が予定されている。

中国も、2000年以来、「中国・アフリカ協力フォーラム」と名付けられた会議を主宰してきている。2006年11月には、それまで閣僚級の会合だったものを首脳会議に格上げし、アフリカから47ヶ国(中国と国交を持つ国)の首脳を北京に招待して、中国とアフリカの経済協力について話し合った。昨年(2009年)11月には、エジプトのシャルム・エル・シェイクで閣僚級の会合を開催、今後3年間で100億ドルの借款を実施すること、さらに中国の対アフリカ投資を促進するために、「中国・アフリカ開発基金」を50億ドル規模で設置することを決定するなど、なかなか羽振りがよろしい。

韓国も負けてはいない。2006年に引き続き、昨年(2009年)11月に「韓国・アフリカフォーラム」を、アフリカ15ヶ国の閣僚をソウルに招いて開催した。そして、インドがこれに参入して来た。2008年4月に、「インド・アフリカ首脳会議」をニューデリーで開催し、これにはアフリカの14ヶ国から首脳が集まった。

というわけで、アフリカとの協力会議は、日本が本家本元だと言っても、だんだん競争が激しくなりつつある。新たに参入して来た国々は、新興国として開発協力や貿易投資を拡大する勢いがある。一方で日本は、残念ながら緊縮財政下で、政府開発援助も縮小の一途である。政府開発援助(支出額)は、今や世界第5位に落ちていて、1位の米国に比べても、金額で半分以下になってしまった。今回の閣僚会合も、宿泊も旅費も日本側では出せないので、アフリカ諸国側が負担してください、と昔に比べたら随分寂しい話になっている。しかし、そういう厳しい条件の中でも、今度の閣僚会議には、ほぼ全てのアフリカ諸国から参加がある。やはり、日本の「TICAD」が本家本元だし、有言実行の国として評判が確立しているからだ。

さて、今回の「TICAD閣僚会合」では、4つの議題が挙げられている。「TICAD」横浜会議で採択された「行動計画」の履行状況、世界金融・経済危機の影響、国連ミレニアム開発目標の達成、といった議題に加えて、気候変動対策、と出ている。日本は、気候変動対策の分野で、アフリカを味方につけられると踏んでいるのだろう。

気候変動対策の分野では、温室効果ガスの排出削減をめざす「京都議定書」の枠組みを、新しいものに改定していかなければならない。しかし、それを議論しようとした昨年12月のコペンハーゲン首脳会議では、各国の議論が大きく分れた。「コペンハーゲン合意」という文章を採択しようとしたけれども、これに反対する国がいて、採択に至らなかった。日本は、環境問題に関する「鳩山イニシアティブ」を打ちだし、この「コペンハーゲン合意」を主導している。そして、コートジボワールは、「コペンハーゲン合意」に賛同を表明した国の一つである。

大使として私は、ここに両国関係を前向きに進める切り口があると気付いた。コートジボワールは、日本の進める環境政策を、しっかり支持してくれるはずだ。そして、日本側からは、すでに森林保護への協力のかたちで、具体的な資金援助を開始している。「TICAD閣僚会合」では、そういう方向で話が進むといいな、と秘かに期待をするところである。

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