※この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係がありません。
・男の生き様
あるポケモンオタクの男がいた。ヒョロガリメガネで理系のいわゆるチー牛だ。
「俺は他のオタクとは違う。いつかきっと何か大きいことを成し遂げてやる。」と信じていた。
何か人と違うことをして、何かで頂点に立つことが自分が生きる意味になるような気がしていた。そうしたら自分の承認欲求が満たせる気がしていた。
だか、1番になるのは難しかった。スポーツも勉強も上には上がいた。だから運要素や戦略の開拓によって勝算のありそうなゲームをしていた。大学に入ってからは勉強もろくにせずにポケモンのネット対戦とカードゲームを続けていた。同時にゲーム配信も始めその界隈でそこそこの知名度を得た。
最高成績はゲームの月間ランキングで100万人中20位、PJCSカード部門75位、YouTube登録者4000人、Twitterフォロワー8000人。
そこそこ上位に食い込んだことはあるもののやはり1番は取れなかった。でも男は日々が楽しかった。挑戦し続けることが素晴らしいことだと考えていた。ゲーム配信や動画を見てくれる人がいてゲーム仲間やポケカ仲間もできた。
そして男はゲームで鍛えた論理的思考力に自信を持っていた。更に日常生活や人生についても論理的思考により様々な思想を導き出し、自分らしく生きていた。男は真面目で信念が強かった。
・非モテ
こんな感じなので当然非モテで大学を卒業しても彼女がいたことはなかった。彼女が欲しいと思ってはいたが、彼女がいないことにコンプレックスはなかった。男はモテ不要理論に行き着いていた。
最終的に結婚する人が1人なら大勢にモテる必要はない。過去の恋人との時間や金は無駄。寧ろモテモテで多くの女を悲しませることがないだけマシ。漢なら一生で愛す女は1人でいい。
男は彼女がいたことないくせに男らしくありたいと思っていた。自分が女性から拒絶される存在だと思っていたため、自ら女に初手のDMを送るということは絶対にやらないと決めていた。というかネット上の人間なんてどうせ会わないので性別なんてどうでもよく、ネカマだと思うようにしていた。
そんな風に生きていても珍しいことはあるもので、女のアカウントから連絡があることもあった。それはもうウキウキで、顔も出していないのに配信だけでそんなことがあることには驚いた。いうても5年やって会ったの3人とかで飯食って特に進展はなかった。
・出会い
最初はこれだった。ある女から一言「電球」とだけDMがきた。
ここから結婚まで行ったの我ながらえぐいな。ああ、これフィクションだったわ。
彼女はポケモンのゲーム界隈で普段から自撮りを上げている姫的な存在だった。頑張って会話を続けると返信も早く、それから仲良くなり毎日通話するようになった。
男は埼玉、女は大阪に住んでいた。初めて会ったのは通話して1ヶ月後くらいだった。男が新幹線代を片道出して東京で会った。女は見た目もイメージ通りでかわいだった。それよりも男は自分がキモいと思われないかの方が心配だった。
1ヶ月間毎日2〜3時間話していたので普通に話せた。出会ったその日に付き合った。
23歳にして初めての彼女だった。2人とも同い年で身長体重も同じくらいで酒もタバコもやらないかった。
付き合っていることは彼女の希望でTwitterでは言わないことにした。男は付き合うというのは互いに生活をより楽しくするためなので、他人に自慢するものではないと考えていた。
それから毎日3時間くらい通話して月一で会うような生活が続いた。
本当に金がかかった。飯やちょっとした買い物は男が全部奢っていた。旅行にも彼女の希望でたくさん行った。1年半でユニバ、ディズニー、ハウステンボス、ナイトプールに行った。チケットと旅費は各自負担だったが高い飯やらグッズやらなんでも男が払った。社会人ではあったが貯金がどんどん減っていった。
でも学生時代にそんなことろに女の子と行ったこともなかった男は幸せだった。
それに伴って男はゲームや配信をする時間は殆どなくなっていた。でも男はそれでいいと思っていた。彼女に必要とされていることで満たされるような気分になった。「ああ、こうやって普通の人はTwitterからいなくなっていくのか」戦い続けない人間に対して、男はなんのために生きているのか疑問に思っていたが、これが普通の人の幸せの感覚なのかとも思った。
・彼女の分析
だが男が1番驚いたことは彼女が月一で理由もなく突然病むことだった。一番最初に突然「別れよう」と送られた時は会社でちょっと泣いた。
急に泣き出したり怒ったり、「好きじゃないんでしょ」と言って来たり。その度に男も泣いていた。暴言も何度も吐かれた。
「もう死ぬ」とか言ってLINEの返信が止まったときは、本気で彼女の職場に安否確認の電話をした。普通に働いてた。
男は本当に困惑した。急に怒りと悲しみ湧く状況などなったことがない。だが、男はそれを理解しようとした。男の論理的思考力はゲームから彼女の分析に注がれるようになった。
【彼女の性格】
情緒不安定なときがある。
他人を見下すのが好き。鍵垢で悪口引用。
自己中心的。自分は大切にされて当然と思っている。
快か不快かで物事を判断する。
深く考えずに発言をするため、過去の発言と矛盾が生じる。
本人は嘘をついている自覚がない。都合の悪いことは忘れる。
自分の間違えを認められない。謝れない。
まともな議論はできず、困ると泣くか怒るかの2択。泣きルートの場合は「もう死ぬ」、怒りルートの場合は「お前モテないだろ」等の人格否定。
そして「私を不快にさせたお前も悪い。お互い様だ」という究極理論で引き分けに持っていく。
考えれば考えるほど彼女は頭がおかしかった。本当に。男は喧嘩(一方的にキレられる状況)のたびに謝っていた。女は喧嘩の時は口調が荒くなって「お前」呼びする。男は精神的苦痛から逃れるために、論破ではなく機嫌をとることが正解だと気づいた。議論をやめ、一方がわがままを許す関係は地獄の始まりだった。
男は奴隷のように扱われていたが、「毎日電話したがってくれて、泣き出すのも俺のことが好きだから」と信じて女を大切にしようとした。
男は彼女ができてから他の女と関わるのをやめた。だが、彼女が勝手に男のTwitterを見て付き合う前に他の女と会話をしているのを遡ってキレてきた。「私のこと好きじゃないんでしょ」と何回も言われた。定期的にそんな状態になるので関わりのあった他の女には暴言を吐いてブロックした。ごめん。
それに対して彼女は無数の他の男と連絡を取り合ってよく会っていた。やめて欲しかったが、界隈に男しかいないから仕方ないとか言われたから許すことにした。それでも他の男と一緒に遊びに行くときはせめて事前に連絡すると約束をした。約束は何度も破られた。「あ、忘れてたー」とか言って何も改善する気はない。集団ならまだしも男と2人きりなんてのもしょっちゅうだ。彼氏を公言していないため男はナイト達を恨めなかった。彼女には逆の立場を考える脳みそはなかった。いや、そもそも平等という前提がない。
だが男は自分のことを初めて好きだと言ってくれた女性を大切にしたいと思っていた。付き合うと決めた時点で結婚する覚悟だった。女も結婚したいと言ってくれた。
指輪は30万円した。男は一度きりの仕方ない出費だと思ったが貯金がほぼ消滅した。会計をする時、詐欺にでもあったような気分だった。自分の意思のはずなのに、ただの石に30万円。いや、自分に価値が感じられない物でも彼女が欲しいなら構わないが、全資産を出費するものではない。配偶者にこんな負担させてなんとも思わないのか。言えなかった。泣くか怒り狂うかが待ち受けている。
女は転職して結婚と同時に男と一緒に埼玉で暮らすことにした。男の母親は男のことをよく気にかけていて結婚には反対だった。「暫く一緒に住んでからでいいでしょ。籍を入れるってのは重大なことなんだよ。」今思えばその通りだが、男は母親を跳ね除けた。男は結婚したら彼女が「私のこと好きじゃないんでしょ」と言わなくなると信じていたからだ。
結婚直前、彼女は「子どもが欲しくない」と言ってきた。男はかなりショックを受けた。男は子どもが好きで欲しいことも前々から言っていた。彼女は「早く結婚しないと障害児が産まれちゃう」とか、Twitterの独身子なしおばさんをバカにしていたので、男は子どもを作る気があると思っていた。
彼女は男の愛情が自分ではなく子どもに行くのが嫌だと言った。
流石に男は「結婚したい気持ちが少なくなった」と言った。そうしたら彼女は「私より赤ちゃんの方が好きなんだ」とかブチ切れて泣き出した。
男は覚悟を決めた。どうせこいつは子育てができない。ヒスママ確定だ。
男は自分の素晴らしい頭脳を後世に残せないのは残念だが、こんなサイコパス女の脳みその遺伝子はここで根絶やしにしてやると決意した。
子どもはいなくても機嫌をとり続けて楽しく日々を過ごせればそれで幸せだろう。男は自分の信念を曲げなかった。
付き合って1年半、25歳での結婚だった。
結婚して一緒に住み始めた。家賃と家具は収入の比率で分割して買うことにした。男の方が収入は少し高かった。彼女が新築がいいと言ったので予算的にすごく狭い家になった。だが男はゲームができるスペースがあれば十分だった。彼女の希望でピンクのダブルベッドを買った。ただでさえ狭い部屋の半分が埋まった。しかも男がほぼ全部組み立てた。他にちょっと家具を置いたら生活空間はほぼなくなった。
男は「結婚したからもう飯は奢らなくていいよね?」と言ったら「奢らないなら一緒に食べない」と彼女に言われた。「男に飯は奢られたことしかない」とか意味不明なことを言われた。お互い料理をする気はないので、夫婦なのに毎晩男が飯を奢っていた。一緒に住んだら交通費が掛からなくなるだろうと思ったら毎回飯を奢るせいで結局金がかかった。遂に男は日々の収入に対して出費がほぼ同じになった。
男は金の管理だけはしっかりしたかった。お互いに貯金はない。金を貯める必要がある。だが彼女はお金の話はめんどくさがってまともに議論はできなかった。
男が飯は奢るから家賃は折半しようといったら彼女が「こんなちょっとじゃ生活できない」とか泣き出して断念した。なんなら収入の確認をしたいから明細を見せて欲しいとは言ったら「私のこと信用してないんだ」とか言われて説得に時間がかかった。
金はないため結婚式はやらないことにした。
誕生日やクリスマスもプレゼントでよく揉めた。このプレゼントのシステムも苦痛だった。物を送り合うだけで金額的には確実に男が損をする。飯を食いにいっても男が全部払う。ただ出費が増える日だった。
男は基本的に欲しいものがない。必要なら発売日に買うからだ。それでいて彼女は無限にほしいものがある。特にブランドものは機能的にも原価も普通の鞄と変わらないなのになぜ欲しがるのか男は理解できなかったが、彼女の価値観を尊重することにした。
男はワイシャツとかネクタイとか生活に必要なものを買わせていた。その日の奢った飯代とトントンだった。
男は欲しいものを聞かれてゲーム上で暁ガチグマを頼んだら断られた。そんなの捕まえる時間ないと言われたが、後日彼女は外国人の男に色違いのポケモンを貢いでいた。
男の方が仕事が早く終わるので、彼女の希望で彼女が仕事が終わるのを駅まで毎回迎えに行っていた。そして一緒に店で飯を食べる。男の奢りで。男は会話にも疲れていた。彼女は些細なことでキレたるため、男は自分の意見を言うのをやめた。「そうだねー」「すごいねー」と言うだけになった。
彼女の話題は仕事の愚痴とかTwitterで見たキモいやつの悪口ばかりで楽しくもなかった。
しかも、彼女はタダ飯なのに「お前が毎回油そば食わせるせいで太った」とか文句を言う。
喧嘩になると飯は別々になった。男は金がかからないからラッキーだと思った。そして、男は週2回はカードショップの大会に行き、その日も飯が別々になるのが嬉しかった。ポケカ仲間と戦略について話すのも唯一と言える楽しみだった。
男が一番不快だったのは自分の悪口を言われることだった。特に「お前ポケモン雑魚じゃんw」は不愉快極まりなかった。誰のせいでゲームの時間がなくなったと思ってんだ。流石に文句言ったら何故か被害者面して「ポケモン弱くなったの私のせいにしてくる」とか言って泣き出した。会話が成立しない。
男は迎えにいって飯食わせて機嫌とって子育てでもしてるような気分だった。
「俺はもっとゲームしてYouTubeして最強になりたいのに、こいつのために俺の人生を捧げる価値が本当にあるのか??」
考えたら彼女は男のためにしてくれたことなんて殆どなかった。ゴミ捨てや掃除も男が殆どやっていた。
男は精神的に困窮していた。離婚という選択肢がチラついた。
ある時、男は彼女にもう好きじゃなくなったと突然言われた。
男は何かがプツンと切れたような感覚になった。なんだ初めから俺のことなんて好きじゃなかったんだ。好きなんてほぼ言われたことないし、死ねの方が言われてた。奴隷としか思われてなかった。
男は根底にあった「自分のこと好きだから信じる」という考えが覆された気がした。男は女がろくに考えずに物事を言うことは分かっていたが、好きじゃないと直接ったらどんな気持ちになるかも理解していないことに諦めがついた。
「離婚したい」と男は泣きながら言った。
彼女は「いいよー」と軽く言ってその場で引越し先を調べ始めた。
離婚が決まってから暫くは一緒に住んでいたが飯を奢らなくなったせいで、彼女は自炊を始めた。男は1人で外で食っていた。彼女が出ていく日に作り置きの飯を消費するために「チャーハン食べる?」と聞いてきた。男は離婚の日に嫁の手料理を初めて食べた。キムチ入ってんなら先に言えよ。と思いながら黙って食べた。
半年での離婚だった。
男は結局一度も女性から愛されたことはなかったんだと思ったら本当に悲しくなった。好かれてると思い込んで自分を騙して無理していた。振り出しに戻っただけ。悲しむ必要なんてないと自分に言い聞かせた。
・辞職
男は仕事をテキトーに選んだせいで安月給でカスみたいな埼玉の職場で働いていた。100人の会社で毎年10人が自分の意思で辞め、職場には社長のイエスマンの年寄りと数年で消えていく若者しかいなかった。
高圧的な態度をとる人も多く、更に理由は不明だが1年目の後輩が1ヶ月で自○した。
男は周りの低学歴で報連相もできない人間を内心見下しながら真面目に仕事をしていた。男はよく会社の問題点を上司に物申しに言っていたら嫌われた。そして同僚や後輩だけが昇進して男の給料は上がらなかった。
それでも男は自分の仕事に加えて、会社の業務効率を上げるために改善案をよく提案していた。この行動は会社全体の業務効率が上がれば結果的に自分の作業量が減るからであって、優しさなどはない。
会社では何故か全従業員の住所が書かれた冊子が毎年全員に配られていた。質問したら年賀状を書くためと言われたが、業務と関係ない意味不明な理由だった。
男はそれを部長に確認した上で不要なのでシュレッダーにかけた。そうしたら社長に呼び出されて怒られた。部長に許可を取ったと言ったら、部長は「好きにしろとは言ったがシュレッダーしていいとは行ってない」とか言い訳をした。
個人情報の捨て場をシュレッダーしないでどうするんだと聞いたら会社に返却するのが普通だとか言われた。どうせその後シュレッダーするだろ。
男は紛失時のリスクが大きいから処分したと言った。そもそもメリット自体ほぼ0に等しい。
社長に「100冊作ったうちのお前の1冊がなくなったところで紛失のリスクはほぼ変わらない。お前は理科大数学科を卒業しているのにはそんなことも分からないのか?」と言われた。
これには男は一番腹がたった。もし誰かの冊子が流出した場合、俺がシュレッダーをしていることが知られていれば俺自身の責任が0%になるからやってんだよ。と思いながら反論しなかった。もうこいつは会話ができない。
それで男は決心がついた。ゴミみたいな会社だろうと真面目に俺が少しずつ変えていこうと頑張ってやってきたが、もうお前らのために働く気はない。
男は3年目で辞表を出した。
そして実家近くの横浜で仕事を見つけて転職することにした。
・その後の躍進と苦悩
離婚は10月で男は次の年の4月から横浜に転職と同時に引っ越すことにした。
男は彼女に飯を奢らなくなったが、彼女を追い出して家賃を1人で払うことになったので、月の収入と支出は同じままだった。
男は離婚して自分の親、相手の親、祖母、リア友に謝った。職場からの祝い金含め、物や金をくれた人には全員金を返そうとした。全員に返さなくていいと言われた。皆何も知らないくせに「大変だったね」とか優しい言葉をかけてくれた。
男は全ての不利益は自己責任だと考えいた。もっと金があれば悩まなかった。それも就活を舐めたせい。もっとしっかり対話をして、彼女にたまに飯を作らせるようにしていたら、奢ってもいいかと思えたかも知れない。いくらでも理由は思いついた。
付き合う前「メンヘラでもいい?」と聞かれて何も考えずに「うん」と言ったのを思い出した。その発言に責任を持とうと男は思っていた。
全ての人間は分かり合えないが、男は全ての人間を理解したいと考えていた。彼女がこんなわがままな大人になったのは、容姿がよく甘やかされて育ったからかもしれない。パワハラジジイも誰も反論しないから常に自分が正しいと思い込んできたのだろう。
育てた親が悪いのか、過ごした環境が悪いのか考えると、そもそもこの社会が完璧でないことに気づいた。そしてそれを作った人間もまた完璧ではない。皆始めは赤ちゃんなのに、そこからこの社会をある程度形成している時点で寧ろ奇跡なんじゃないかと思えてきた。
だからこそ全ては仕方ないことだと考えられる。更にそう考えることで他人に期待しなくなるので怒りや悲しみの感情を抑えられることに気づいた。
男は誰のことも恨んではいない。クソ人間が誕生するのも必然的なことなのだ。ただそいつらと関わることで精神的苦痛を被るから避けるだけだと。
男は離婚して自由になったのでポケカをやりまくったら、運良くシティリーグで2連覇して日本ランキングで瞬間1位をとった。
ただこれは年間ランキングの半年の段階での記録で結局その後勝てず、最終125位だった。40位以内で世界大会の権利だったが、6年やってまた今年も取れなかった。
埼玉のポケカ練習仲間達はカドショで知り合って2年かけて徐々にメンバーを増やしてきた。この年は男以外も皆自己ベストを更新していて高め合えるいい練習仲間だった。
横浜に引っ越してその人たちとも頻繁に練習するのは難しくなってしまった。別れを惜しまれた。
男が職場を辞めるときも、上司以外には結構別れを惜しまれた。有能な人材を失うからな。
男は不快な人間との関係を断つために自分の意思で離婚と転職を決意したのに、それに伴って大切に思ってくれた別の人に別れを惜しませたことにやるせない気持ちになった。
4月。男は転職と同時に引っ越した。
貯金0の状態だったが、以前より家賃も安くなり、給与も上がり、ボーナスも貰えて金が増えてきた。
職場にもまともな人が多かった。ミスしても高圧的な態度で怒る人がいないことに驚いた。普通の会社では当然のことだったのか。
男はここ数年YouTubeも更新せず、ポケモンのゲームも弱くなり、Twitterのフォロワーも減り続けてしまっていた。
だが、男が久々にツイキャスをやったら5人くらい古参リスナーが来てくれた。そこで好き勝手に話すことが楽しかった。自分のために人が来てくれることが嬉しかった。
男は離婚して暫くは夜中によく目が覚めた。彼女の機嫌を害さないようにしなくちゃ。とかそんなことを夢に見ていたような気がする。
それから感情を表に出している女性を見るとフラッシュバックしてすごく不快に感じるようになった。
男は様々なことを思い出すと1人でいるときにたまに涙が出た。理由はよくわからない。理論的に考えたら悲しむ必要などどこにもないのに、心に傷でも負ったのだろうか。男は自分が思う以上に人間的であった。
考えれば考えるほど人間には生きる意味がないという思考に至った。自殺も選択肢には浮かぶ。だが男はまだ何も成し遂げていない。なら存在できる80年の間せめて1番目指して挑戦し続けようと考えた。
幸福な人生とは本人が楽しいと感じるかにある。他人と比べて金がないとか悲観的にすら思わない。男は衣食住があってゲームができれば幸せだ。
子どもを育ててみたかったけど、もう結婚は無理だろうな。意味不明な恋愛してたらバツイチになってしまった。乞食に飯を奢りたくもないのでマチアプ等もやらない。
泣きました。僕は26歳で、バツイチで、チー牛で、ポケモンカードオタクで、受けルーパーで、オニゴーリ使いです。
それでも男はポジティブに生きることを決意した。
自分の人生を楽しく面白く過ごせるように模索し挑戦し続ける。
最後までお読みいただき本当にありがとうございました。