最近、「【偽ビートルズ番外編】全部、抱きしめたい!」というまとめをよく聞いています。



The Beatlesの「 I Want To Hold Your Hand(邦題:抱きしめたい)」のカバーを14種類あつめたものです。

これがめっぽう好きで何度も聞いてしまいます。


私はもともとこのチャンネルがあげている「偽ビートルズ」シリーズのファンです。大学の時にGSバンド「アウト・キャスト」がカバーしたすさまじい「のっぽのサリー」にいてこまされてから、往時の洋楽カバーの味が忘れられなくて・・・


「全部、抱きしめたい!」の良さ、最初のとっかかりとしては「なんじゃこれ」という気持ちでしょうか。


いつも聴いてるビートルズの「 I Want To Hold Your Hand」と全然違うのです。なんか拍の取り方とか英語の発音とかが、「違う」というか「あやしい」というか、演奏もヘロヘロさが際立ったりしていて「ええっ、こんなんやっけ・・・!ちゃうくない・・・?」とどうしても笑みがこぼれてしまいます。


「偽ビートルズ」で紹介されている音源が収録されたレコードには、ジャケットに本家ビートルズの写真や似顔絵があるけど、中身はほかのバンドのカバーというものも多く、「間違えて買っちゃった人どう思ったんやろう」と思いながら楽しむのもおススメです。


あと、「全部、抱きしめたい!」には、和訳歌詞で歌っているのもあります。英語詞で作られた曲だから仕方ないし、日本語の単語に子音だけの発音がないので、若干間のびした印象になっており、「おい、日本語~~!」となります。

あとやっぱり「 I Want To Hold Your Hand」を「抱きしめたい」と訳したのすごいですよね。小学生のときにこの訳を見て、「え、ええ?」と面喰ったあの日を思い出します。かつての洋楽の邦訳の飛躍が、「偽ビートルズ」の醸し出す空気と相まって香り高いですね。


「全部、抱きしめたい!」の良さ、次のステップとしては「また『 I Want To Hold Your Hand』かよ!」となるところです。


「 I Want To Hold Your Hand」のカバーだけを集めてるから当然なんですが、ずっと同じ曲が続きます。5曲目あたりから面白くなってきます。


中高で吹奏楽部だったのですが、コンクールで別のブロックの演奏を聴いているとき、同じ課題曲(たいていマーチ)が連続した時の気持ちに似ています。もう、いろんな人が同じ曲を続けて演奏していることだけで面白さがこみあげてくるのです。


「また次も同じ曲・・・?いやまさか、すでにいっぱい聴いたし・・・やっぱ同じ曲かい」となってニヤけます。「 I Want To Hold Your Hand」のカバーだけを集めてるとわかってるのにも関わらず、です。


「全部、抱きしめたい!」の良さ、最終的にいきつくのは古典のたのしさに気づけることです。


さっき、吹奏楽コンクール課題曲みたいだと書きましたが、どちらかというと、落語っぽいなと思うようになります。


「全部、抱きしめたい!」の中盤、この中ではもっとも本家に近いザ・ウィーセルスの「 I Want To Hold Your Hand」が流れます。「オリジナルとのそっくりさ」や、「ビートルズと間違えてレコード買っちゃった人」のことを考えると一番ザ・ウィーセルスがベストということになりますが、自由奔放なカバーを連続して聴いた耳には別の感想が浮かんできます。

いつの間にか、自分の中で「『I Want To Hold Your Hand』ってビートルズだけのものじゃないよな」と思うようになっているのです。めいめいが自由に演奏していい古典としてイメージが様変わりします。


ひとまず、「これが最高峰だ」とされているビートルズの「I Want To Hold Your Hand」はあるけれど、ほかのバンドのカバーはそのバンドの個性やクセを楽しもうとなるのです。それだけビートルズの「I Want To Hold Your Hand」が完成されているということの証にもなるかもしれません。


「全部、抱きしめたい!」がクラシック音楽より落語っぽいと思う理由は、「上手くないかもしれないがなんか味が出てて面白い」と思えるところです。

正直技術は足りてないかもしれないし、なんなら本人は真剣にやってるので、そこを面白がられるのは嫌かもしれないが、それが唯一無二で面白いんだと言っていいような隙があります。

私が大学時代に入っていた落語研究部には、「新人寄席みたい」という言い回しがありました。

「新人寄席」は落語研究部に入りたての新入生が、見よう見まねで頑張って覚えた落語を先輩たちの前でやる会のことです。

この寄席は、「人前で落語をやる」という恥ずかしさを乗り越え、頑張っている後輩を温かく見守るという通過儀礼的なところもあるし、落語自体も面白い話ではあるので、とっても和気あいあいとした笑いあふれる寄席でした。

ただちょっと言い方が難しいのですが、「うまさとは違うところを楽しむ」部分がめちゃくちゃありました。てか、8割強はそんな感じでした。(演者が技巧や構成で笑わせようとしている部分以外のところで周囲が笑う、いわゆる「裏笑い」のようなイメージです。)

同じ落語研究部員だった四谷くんは、本人が意図していないところでほかの人が笑うことの違和感がつよめで、「新人寄席みたい」という言葉を若干マイナスの意味を含めつつ使っていました。

しかし、私はどうしてもその「うまさとは違うところ」に宿るオリジナリティや破壊力にいてこまされることが多く、新人寄席のような要素を愛でに愛でてしまいます。

「全部、抱きしめたい!」はプロのバンドがやっているので新人寄席というのは失礼ですが、新人寄席のうま味である、それぞれのバンドのフラが出てるような気がしてくるんですよね・・・。「おい、日本語~~!」と思っていた和訳カバーも、それはそれで良さがある、心からそう感じるようになります。


ということで、「全部、抱きしめたい!」をぜひ聞いてください!



ちなみに、私は「歌ってみた」動画を全くみません。
本家の音源だと思って再生して「歌ってみた」だったら、いつも即閉じます!