【詳しく】米関税 日本に適用 “通常に加え15%上乗せに”

アメリカのトランプ政権は、世界各国や地域への新たな関税率を7日午後1時すぎに適用し、日本には15%の関税を課しました。日本政府は、先の日米合意で、従来の税率が15%以上の品目には上乗せされないなどと説明していますが、これが大統領令などに反映されず、従来の税率に一律で15%上乗せされているとみられます。

アメリカは7月31日の大統領令に基づき日本時間の8月7日午後1時すぎ、世界各国や地域への新たな関税率を適用しました。

多くの国や地域でこれまでの一律10%から引き上げられ、日本は15%となっています。

日本政府は先の日米合意のあと、従来の税率が15%未満の品目は税率が一律15%に引き上げられ、従来の税率が15%以上の品目は新たな関税が上乗せされずこれまでの税率が維持されるなどと説明していました。

しかし、大統領令やアメリカ当局の文書には、こうした措置をEU=ヨーロッパ連合に適用すると明記されている一方、日本についての記載はなく、従来の税率に一律で15%上乗せされているとみられます。

また、日本から輸入される自動車への関税についても、日本政府は日米合意で今の27.5%から15%に引き下げられるとしていますが、その時期は不透明です。

赤澤経済再生担当大臣は、日本時間6日からワシントンを訪れ、自動車への関税の引き下げを含め日米合意の内容を早期に実行するよう働きかけていて、アメリカ側の対応が焦点となっています。

トランプ大統領 SNSで「数十億ドルもの大金が流れ込むことに」

アメリカが世界各国や地域に対して新たな関税率を適用する直前、トランプ大統領は、自身のSNSに「長年にわたってアメリカを利用してきた国々などから数十億ドルもの大金が流れ込むことになる」と投稿しました。

自民 小野寺氏 “通常の関税に加え15%上乗せに 合意と異なる”

こうした中、自民党の小野寺政務調査会長は、党の会合で、日本時間の7日午後、相互関税の新たな税率が適用され通常の関税に加えて15%が上乗せされたと述べました。

小野寺氏は、日米合意の内容とは異なるとして政府がアメリカ側に対し、速やかに合意に沿って修正するよう求めていると説明しました。

石破首相「大統領令を修正する措置を直ちにとるよう強く要請」

石破総理大臣は7日夜、総理大臣官邸で記者団に対し「相互関税については既存の関税率が15%以上の品目には課されず15%未満の品目については既存の関税率を含めて15%が課されるという認識についてそごはないとアメリカ側と確認している」と述べました。

その上で「訪米中の赤澤経済再生担当大臣がアメリカ側との間で合意の内容を改めて確認し、すでに適用が開始された大統領令を修正する措置を直ちにとるよう強く求めている。引き続き閣僚レベルを含めあらゆる形でアメリカ側に強く要請する」と述べました。

また記者団が「合意文書を作らなかったことで日米間の認識が異なっているのではないか」と質問したのに対しては「両者の認識が一致をしているので、必要な措置をアメリカ側に強く求めるということで変わりはない」と述べました。

小泉農相「大統領令の修正 アメリカ側に求めている」

アメリカの関税措置について小泉農林水産大臣は7日午後、記者団に対し「15%未満の品目については、既存の関税率を含め15%が課されるとの認識で日米間にそごがないことをアメリカ側に確認をしていると承知をしている」と述べました。

そのうえで「農林水産品の関連で言えば、牛肉だが、15%上乗せして41.4%となることはないと捉えている。その上で、大統領令を修正をする措置を直ちに取ってもらいたいとアメリカ側に求めているということだ」と述べました。

立民 野田代表「自慢げに言っていたが話が違う」

立憲民主党の野田代表は党の会合であいさつし「先の臨時国会で、政府は『相互関税が15%に下げられた』と自慢げに言っていたが話が違うのではないか。個別の産業に大きな打撃を与えかねない」と指摘しました。

その上で「合意文書をきちんと固められていないから、こんなことになっている。文書をつくらない方がメリットがあるようなことを言っていたが、解釈の違いは日本にとって決定的なマイナスだ。いったいどうなっているのか、赤澤経済再生担当大臣が帰国したら閉会中審査できちんと説明を求めていきたい」と述べました。

国民 玉木代表「説明と違う 内閣不信任にも値する」

国民民主党の玉木代表は記者団に対し「関税率について日米間で依然として認識にそごがあり、情報が錯そうしていること自体大問題だ。きちんとした合意文書をつくらずに来たことのツケが噴出していると思う」と述べました。

その上で「今まで説明してきたことと違うことが起きており、内閣不信任にも値する事態だ。日本の企業や経済に大きな影響を与えることであり責任を問われる事案だ。速やかに閉会中審査を求めていきたい」と述べました。

≪関税措置の適用で輸出企業は≫

≪自動車メーカーの業績に影響≫

トヨタ “当初2.5%が15%に もちろん影響は大きい”

トヨタ自動車の東崇徳経理本部長は、オンラインで開いた説明会で、日米交渉で自動車に対する関税が15%で合意したことについて「当初は2.5%だったのが15%になったのでもちろん影響は大きい。われわれではなかなかコントロールできない部分なので、大きな課題だと思っているし、厳しい結果であることは変わらない」と述べました。

エコノミスト「日本経済への影響は無視できない規模感に」

アメリカが新たに課す日本への15%の関税が日本経済に与える影響について、みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは「日本経済への影響は無視できない規模感になる。企業は利益が減るため設備投資や雇用、あるいはボーナスが減る可能性があり、そうなると消費も減るだろう」と指摘しました。

小林氏は日米合意に基づく形で15%の関税が課された場合、アメリカの関税措置全体で日本の実質GDP=国内総生産は年率で換算すると0.3%押し下げられるという試算を示しています。

ただ、日本側の説明と異なり、従来の税率に一律で15%が上乗せされた場合には、さらに大きな影響を受けるおそれがあると指摘していて、小林氏は「もともと高い関税率だった一部の品目について、さらに関税が上乗せされることになるので想定より厳しくなる」としています。

一方、現時点で自動車関税が15%になる時期が不透明なことについては「25%の追加関税が続けば続くほど経済への打撃が響いてくる。一刻も早く合意の内容を履行してもらうことに尽きる」と述べました。

その上で日本経済への影響を抑えるために政府や企業に求められる対応について、「日本政府は気まぐれなトランプ政権に粘り強く対応しつつ国益を守るために何がいいのか考えなければならない。また、霧が晴れない状況が続いていくため、企業としては、アメリカビジネスは相当なリスクがあると考え、ビジネスモデルを再構築していくことが必要だ」と指摘しています。

【詳しく】日米の“食い違い”

アメリカの新たな関税率では日本には15%を課すとしています。

これについて、日本政府は合意のあと、従来の税率が15%未満の品目は、税率が一律15%に引き上げられ、従来の税率が15%以上の品目は、これまでの税率が維持されると説明していました。

ただ、アメリカの大統領令や4日公表された関税当局の文書に日本側が説明した関税率が記載されておらず、日米の認識に食い違いがあるのではないかとの指摘も出ていました。

これについて赤澤経済再生担当大臣は5日の参議院予算委員会で「日米間にそごがないことを確認済みだ」と述べ、日本政府のこれまでの説明に沿った形でアメリカ側が対応するという認識を示していました。

仮に、15%の関税が一律で上乗せされることになると、これまでの日本側の説明と税率が変わるものがあります。

牛肉はもともと一部を除いて26.4%の関税が課されていましたが、ことし4月に10%の関税が上乗せされ、36.4%に引き上げられていました。日本側の説明では先の合意で関税率は従来の26.4%に戻るとされていましたが、15%の上乗せとなると、関税率は今より5%高い41.4%となります。

また日本酒はもともと1リットルあたり3セントの関税が課されていましたが、ことし4月に10%が上乗せされました。日本側の説明では、先の合意で関税率は15%になる見込みでしたが、15%の上乗せとなると、1リットルあたり3セントの関税に加えて15%が課せられることになります。

このほか水産物の中でアメリカ向けの輸出額が多いホタテや冷凍のブリはもともと関税がかかっていませんでしたが、ことし4月から10%の関税が課されていました。今回、関税率は15%に引き上げられることになります

一方、自動車関税が15%に見直される時期はいまも決まっておらず、引き続き、もともとの2.5%の税率に25%の追加関税が加わり27.5%が課されています。

【詳しく】自動車関税の引き下げは

アメリカの関税措置を受けた日米交渉の中で日本側が特にこだわってきたのが自動車関税の見直しです。

去年1年間の日本からアメリカへの自動車の輸出額は6兆264億円でアメリカへの輸出全体の28.3%を占め、最も多くなっています。

アメリカは日本から輸入する乗用車に対して2.5%の関税を課してきましたが、トランプ政権はことし4月、これに25%を追加し、現在の関税は27.5%になっています。

自動車産業を「日本経済の屋台骨」と位置づけている日本政府は自動車関税の見直しに強くこだわり、閣僚交渉では当初、追加関税の撤廃を求めていました。

ただ、交渉が進むにつれて日本側は関税の引き下げに軸足を移し、アメリカの自動車産業への貢献度に応じて、追加関税を引き下げる仕組みなどを提案してきました。

最終的に日米両国は日本時間の7月23日、25%の追加関税を半分の12.5%にし、従来の税率である2.5%とあわせて、自動車関税を15%にすることで合意しました。

石破総理大臣は合意の後、「世界に先がけ数量制限のない引き下げを実現することができた」と成果を強調しました。

しかし、自動車関税が実際にいつ引き下がるのか、時期が見通せない状態が続き、政府関係者の間では「自動車関税の見直しに合意したEUや韓国と同じタイミングで大統領令が署名される可能性が高く、まだ時間がかかるかもしれない」との見方も出ていました。

自動車の追加関税が始まってから4か月がたち、自動車業界では影響が顕在化しています。

このうち自動車メーカーのマツダは8月5日に発表した4月から6月までの3か月間の決算で、追加関税で営業利益が押し下げられた結果、最終的な損益が421億円の赤字になりました。

赤澤経済再生担当大臣は日本時間の8月6日からワシントンを訪れ、自動車関税の引き下げなど日米合意を速やかに実行するよう求めていました。

【デスク解説】結局、関税は? 日本側はどう対応?

経済部 池川デスク解説(動画1分55秒)

Q.政府の説明と違うことになっているのはなぜでしょうか?

A.日本政府としては「合意内容をめぐって日米の間にそごはない」という認識を繰り返し示していて、きょう午前の林官房長官の会見でも、同様の説明がありました。

しかし、アメリカ側では、日米の合意に沿った関税率にするために必要な、大統領令などの手続きが、現時点では行われていません。

今回、日本とアメリカとの間で合意文書が作られていないこともあり、どうしてこうなったのか詳しい経緯はまだ分かっていません。

アメリカ政府内で何らかの理由で手続きが遅れたのか、それとも、もともと日本とアメリカの間で合意に対する考え方が違っていたのか、しっかり検証する必要があると思います。

Q.日米の間でそごがないとすれば、いつ、合意に沿った形になるのでしょうか。

A.まだ分かっていません。

ただ、このままですと、品目によってはこれまでの想定以上に関税が上乗せされる状態が続くことになります。

専門家からは「もともと高い関税率だった一部の品目で、さらに15%の関税が上乗せされれば、影響は厳しさが増すのではないか」という声も聞かれ、アメリカへの輸出などの影響が懸念されます。

いま訪米中の赤澤経済再生担当大臣は、アメリカ側の閣僚との協議の中で、合意を確実に実行するよう求めていく方針で、この働きかけが速やかなアメリカ側の対応につながるのか、日本経済にとっても重い意味を持つことになりそうです。

日本側の働きかけが実を結ぶのか。日本経済への影響を見る上でも重要なカギになっています。

赤澤経済再生相 米商務長官と会談“日米合意 速やかな実行を”

アメリカの関税措置をめぐり、赤澤経済再生担当大臣は訪問先のワシントンでラトニック商務長官と会談し、自動車などへの関税の引き下げをはじめとした日米合意を速やかに実行するよう求めました。

先の日米合意以降、初めてワシントンを訪れている赤澤経済再生担当大臣は日本時間の7日未明、アメリカ商務省でラトニック商務長官とおよそ1時間半会談しました。

この中で両氏は、日米合意に基づき両国の利益となるような取り組みを着実に進めていく重要性を確認しました。

その上で、赤澤大臣は自動車などへの関税の引き下げをはじめとした合意を速やかに実行するため必要な措置を講じるよう求めました。

さらに相互関税については、15%とする合意内容を改めて確認しました。

赤澤大臣は合意を確実に実行していくため引き続き、アメリカ側と意思疎通を続けていくとしています。

林官房長官「日米間にそごがないこと 米側に確認してきている」

林官房長官は記者会見で「相互関税に関しては既存の関税率が15%以上の品目には課されず、15%未満の品目には既存の関税率を含め15%が課されるという認識について、日米間にそごがないことをアメリカ側に確認してきている」と述べました。

また「現在、訪米中の赤澤大臣もアメリカ側に対し相互関税についての合意内容を改めて確認したところだ」と説明しました。

その上で「アメリカ側と緊密に意思疎通を続けていく中で、合意に関する共通認識を確認しながらしかるべく対応をしていく」と述べました。

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