当方は30代の地方公務員である。関東の役所で働いている。役所の中ではいわゆる最前線。直接住民に接する仕事があるし、そうでない部署でも廊下で区民とすれ違う。
正直、大した者ではない。決して仕事ができる方じゃないし、勤務評価が高いということもない。ただ、地方公務員の中では学校歴が独特なので、苦労したことはある。
今回は、そういうエピソードを語りたい。いわゆる自分語りになるけど、できるだけほかの職員の面白い話も入れてみる。最近のネタはさすがにまずいので、目安は五年以上前ということにする。すでに退職してる人の場合は別だ。
守秘義務!とか言われるかもしれんが、これまでの公務員の偉大な先達が綴った増田を見てる限り、若輩である俺が語る内容は大したことじゃない。これまで人気作になった増田公務員ものを、例えばサバンナ・ライオンだとすると……これから俺が語るのは、チンチラみたいなものだ。
サバンナ・ライオンとチンチラがガチ喧嘩になった場合、100回中90回以上はライオンが勝つと思う。そういうことだ。
まず、お世辞抜きで査定が低い方である。民間の人事査定は知らないが、うちは5段階評価である。実際は英数字になるのだが。その中で、1~5の中だと、これまで取った中で一番多いのは「2」だ。合格点未満。
査定結果が悪いと、中学高校の時みたいに周りからバカにされがちだし、イベント仕事や選挙事務(最近だったら参議院)とか、市全体の行事など他部署合同の仕事があっても大した役割は振られない。上司からも軽んじられる。
だが、俺の場合はそれでいい。悪態ついてるわけじゃなくて、本当にこっちがいいのだ。てれんこやってる方がいい。なんというか、普段の職場内ではすみっこの方でしみじみとしてる……そう、「すみっコぐらし」である。それがいいのだ。
給料だって、査定が2だろうが3だろうが4だろうが、誤差は数%以内である。数段階分の役職差を踏まえても、生涯賃金差は10%もいかない(※)。これが地方公務員業界のリアルだ。どんだけ能力に差があっても、同じ年齢で給料や待遇に差が出にくいようになってる。
※国家公務員は違う。同年齢でも最終役職の違いで生涯賃金差が3割違うこともある。具体的には、本省の課長になると年収が一気に300万近く上がる
ただ、給料に差があったとしても、多くの人は経済社会では「すみっコぐらし」がいいと思う。仕事量が少ないのが一番だ。それで、定時になって職場を出たら。『家庭』とか『趣味』とか『たましいの仕事』でもなんでもいいけど、その人が人生で一番大事にしてることをするのだ。
俺も、それが目的で今の市(区)役所に入った。自分が将来何をしたいのか、どんな人間になりたいのか。そういうところから逆算をして、今の仕事――さほど適性のない事務系公務員――を選んだ。
今風の言葉で言うと、五年以上も前から「静かな退職」を選んでいた。
実際、俺の仕事がどれだけひどいのかって?一例を2つ挙げてみる。できるだけ簡潔に。
これが一番くだらないと思う。連絡とか報告とか相談とか、共有みたいな言葉もそうなんだが。
何でイチイチそんなことをしないといけないのか、と思うことが今でもある。新人時代から、あまりほうれんそうをしなかった。すると、先輩や上司が怒ることがあるし、こってり絞られる。しかし。
俺は動じなかった。学生時代からスポーツをやっていた。中学校からずっとやってて、高校と大学の時には(自分で言うのもなんだけど)優れた実績を出している。就職先の推薦話が来る程度には。
ある時、ちょっと年上の女性職員からネチネチ言われてたんだが、「まじめに仕事をする気があるの?」と聞かれた時、「答えません。意味のない質問です」って返すとさらに怒り出して、「仕事をまじめにやるとか、人の質問にちゃんと答えなさいって、小学校で習わなかったの?さっきの窓口のあの人、税金払ってないんだよ。その対応でよかったの?」と聞かれた。さすがに俺もどうしようかと迷って、「小学校で習ったこと、あんまり参考にしないですね」とか「ハハッ↑、ボク税金払わないよ♪」とミッキーマウスみたいな冗談を返したら、そこでその先輩がキレたんだ。
「いい加減にしろ!!」
って、その課長が俺と先輩女性を一喝した。当たり前だと思う。区民やその他の人も見てる中で、先輩女性はみっともなくキレやがった。
先輩女性は、次の瞬間に「なんでわたしも怒られるの!?」みたいなことを叫んだ。それで俺が睨まれたので、睨み返していたら……上司に別室に連れて行かれた。
ある小部屋で、遠まわしに「この一年がラストだ。ダメなら辞めろ」と言われた。「課長の方も、気質が昭和過ぎて現代社会に合ってないですよ。さっきだって、あんなに大声出して、区民の方に聞かれて情けないって思いませんでした?」と問い返したところ。
課長がちょっと前の飲み会で、ほかの部下にハラスメントしてた時みたいに、「いいか。次は人事んところに行くぞ。退職勧告したろうか」と凄まれたので、「いや、意外と俺の方が勝つかもしれませんよ。勝負事、好きなんで。そんな時のために準備もしてます」と静かに伝えると、課長はため息を吐いた。
そして、これらのことを言った。
「お前、障碍者やろ」
「だったら施設行けや」
「友達いる?」
「障碍あるなら言った方がいいよ。あるなら特別扱いしてやる。こっちのメンツも立つし、お前の身も安全」
「うちの人事課も障碍者はほぼ雇わないけどな」
と捨て台詞を吐いた。
これらは、課長が怒ったら出てくる類のセリフである。かつての飲み会でも言っていた。それからまたひと問答あって、課長は小部屋を出て行った……その後、人事課に呼ばれるなんてことは当然なかった。この程度のことで人事課は動かない。しょうもないことに関わってる時間はない。
実際に『準備』はしていた。あの税務課長が人事課にダイレクトで突撃すれば、俺は人事課に呼び出されて、場合によっては説教以上の不利益を受けてしまう。でも、極力そうならないように、ダメージを少しでも減殺できるように、課長とかほかの上司や先輩が悪いことをしてる情報を証拠付きで手に入れていた。
もしかすると、あのパワハラ気味の税務課長(※この人はもう定年退職してる)も、そんな俺の気配や臭いを感じたのかもしれない。あの人は農業部署の課長だった時もパワハラを繰り返していたことで有名だった。人事課から釘を刺されていたのかもしれない。
俺にも矜持はある。査定が低いというだけで、実際に仕事はできる方だと思う。ただ、俺のことを嫌いな人が多いんで、低い査定になってしまう。実際、こんな俺が自然体で(一般公務員として)よくない仕事をしていてさえ、5段階で「3」、それも「4に近い3」をくれる評価をくれる上司が数名いた。
この当時は、泥臭い事務仕事をする部署にいた。所管業界でいうと建設・不動産である。タイトルにある企業版モンスタークレーマーは確か、都内に本社がある中規模工務店だった。ある問題案件で、うちの道路局(一部署)が窓口まで呼び出した。
そこは……セ・リーグの試合でも、スタジアム内にスポンサー企業名を載せるレベルの会社だった。だから、紳士的な対応をしてくれると思ったんだけど……以下、当時の折衝記録簿(GoogleDriveに保存)から、最低限だけ抜き出して説明する。※企業名が特定されそうな部分は削ってます
一応、かなり圧縮した。最初の発言が自分で、次の発言が相手会社のなんとか部長の人である。俺の隣には直属上司の係長が座っていて、なんとか部長の隣には、本件をやらかした一般社員がハムスターみたいに縮こまっていた。
「○○設計さんが先週、道路側溝に無断設置したグレーチングは、昨日撤去したということでいいですか?」
「ちゃんと占用許可の申請をすれば通るとは思います。追加で○△の施工が必要になりますが」
「グレーチングですが、水路端にただ置くだけではいけない、その○△の施工をしないとだめと聞きましたが本当ですか?うちは、施主さんのために無償サービスで置いてあげたんですけど」
「うちでもほかでも、店売りのグレーチングをドン!と水路蓋として置くだけだと道路占用許可は降りません。県の基準もあるので。あのグレーチング、占用物となると、あそこの新しいお家の所有物であり、あのお家の責任になっちゃうので。無許可だと十年後とかにトラブルの危険があります。老朽化とかで」
「じゃあ占用許可はいらないです。撤去するだけにします。それで、あのお家の並び、ほかのお家も勝手に……道路際に蓋や歩道ブロックを置いてる家、いくつもありますよね?」
「ありますね。昔だと、勝手に置くことができてしまったので。今は施工業者が必ず申請を出します。昔であっても法律上はアウトなんですが」
「あれらはもう無理です」
「なんでですか。うちらだって施主さんのために無償でグレーチングを置いてあげたのに。不公平です」
「いえ、けっして不公平では――」
「同じ並びの家にもきちんと指導してください。それで、その結果をうちに報告してください」
「お断りします」
「おかしくありません。指導するかしないかは道路の所有者である道路局が判断します」
「あなたの会社が上場企業だから!悪質さが違いますから。明らかに知ってて故意でしょ。はっきり言いますけど、グレーチングの所有権とか責任とか、占用許可を取らずに施主さんに押し付けて、最終的な責任とらせようとしてましたよね?」
「いやいやいや!なお、おい……うちら、都市計画課これから行きますけど。あんたの道理が正しいか判断してもらいましょうか?」
「いいですよ。どうぞ」
「てゆうか、別の人出してもらっていいですか?係長さんはいるけどさ、課長さん出してよ。今あそこの奥にいるでしょ」
「これは部署内での決定事項です。協議済です。結論は以上です」
※本当は協議してない。係長も課長も俺の判断を追認することが多かった
その後、○○設計さんは建築許可を担当している部署にクレームを付けていた。ただまあ、縦割り行政なんで、そこに行ってもどうにもならないし、こちらに情報提供があることすら稀である。行政機関はそういうものだ。うちが大きい役所だからかもしれないけど。
俺の接客態度は、正直悪いことが多かった。戸籍課とか福祉保健課とか、そういういかにも区役所みたいな名前のところに比べると、うちの接客は正直ヤクザレベルになることもある。だが……実際、モンスターハンターみたいな会社は多い。あっちが法令違反してるのに逆ギレするのである。だから、うちも反社みたいな会社の人が来たら、そういう対応をせざるを得ない。
以上の体験は、もうだいぶ前の話になるけど、係長も課長も、どちらかと言うと気が弱いタイプだった。怖い見た目の業者が怒鳴ってくるとタジタジになる。しかし、俺みたいのがリスクを背負って、ああいう土木・建築・測量設計・行政書士・司法書士・土地家屋調査士と戦うので、上司がトラブルの矢面に立たずに済む。
そして俺も、ほうれんそうとか法令順守とか社会常識とか、そういうのに囚われずに仕事ができる。WinWinの関係だった。
この部署では、なんと係長が俺に対して「4」の評価をくれた。でもそれを貰うと、次はレベルが高い部署に異動になる恐れがあったので、建設課長に頼み込んで「3」に引き下げてもらった。係長、ごめんな。今でも感謝してる。
今2つのエピソードを話したけど、俺はこういうタイプの人間だ。
仕事は正直したくない。査定が低くてもいい。"すみっコぐらし"がいい。それで毎日早く退庁して、自分にとっての『たましいの仕事』をするのである。
※たましいの仕事は内緒だ。絶対身バレするので。俺だって処分や戒告は怖い😢
でも、人生はわからない。例えば、一番最初に配属された住民税の部署で、俺は低い査定を受けた。先ほど書いたとおりである。
それは当然であり、課長に嫌われたらそんなものだ。「課長」と書いたけど、従業員千人くらいの会社だと、 民間企業の事業部長~本部長=地方公務員の課長 くらいの扱いである。多くの地方役場では、最低限の決裁権を有した課長になるのは50代以降である。行政権力を振るうにあたっては、相応の年齢を要するという考え方である。
若いうちから活躍したい人には厳しい業界だろう。でもさ、考えてもみなよ。若いうちから活躍しなくてよくて、定年までほぼ確実に勤め上げることができる組織の方が、社会人生活トータルでは幸せだと言えるのでは?
「常に新しいことに挑戦できる環境」
「あなたの成長を加速」
「常に刺激を受けながら成長できます」
とかあるけど、別にそんなこと社会人生活で一度もしなくていいんだったら、そっちの業界の方がいいのではないか。それが地方公務員の世界である。
(2)へ続きます
けっこう書いてきたけど、最後に3つ、エピソードを挙げたい。俺のはもう飽きたと思うから、俺がこれまで気になった、"尖がっている"職員を3人だけ紹介する。 いずれも千字程度で...
さてさて。でもなぜか、公務員人生の二部署目は……広報企画だった。 戦略とかプロモとか、仰々しい名前が付いてる部署。そこで広報紙グループの一担当者になった。例えば豊島区...
先達に倣って増田を投稿してみる。 当方は30代の地方公務員である。関東の役所で働いている。役所の中ではいわゆる最前線。直接住民に接する仕事があるし、そうでない部署でも廊下...
一応読んだけど、横浜市の職員だと思う。○△設計はアイダではないか? プロ野球のスポンサーであるのが本当ならだけど