オスカルの選択①
2015年06月01日23:12 オスカルの選択
「オスカル・・・愛している」
ここはジャルジェ家の庭
オスカルはアンドレからの口付けを受けていた。
先ほど婿選びの舞踏会でジェローデルに愛を告げられ求婚されたが、その口付けは愛しい人のものとは違っていた。
思わず逃げ出してしまい、私の知っている口づけは・・・そう思ったとき脳裏に浮かんだのは、アンドレの顔。
そして逃げた先にアンドレがいた。
思わず彼の胸に飛び込んで抱きついてしまった。
「オスカルどうした?」アンドレはオスカルの婿選びの舞踏会など見れず、庭で一人苦しんでいたところだった。
「アンドレ・・・お前だったのだ・・・私の愛しているのは・・・」
「オスカル・・・今なんと?」
「お前こそが私の求める男性だったのだ」
「アンドレ・・・愛している」
「オスカル・・・これは夢か・・・」
「夢ではない、真実だ」
「夢でもいい!もう二度と告げられぬと思った言葉をお前に語ることができるのだから」
「愛している・・・」
アンドレにとってオスカルと思いが通じ合った、これは世界が輝いた瞬間であった。
長年苦しんできた年月がまるで嘘のように感じられるほど心は幸福で満ち溢れ、オスカルへの思慕はますます高まる一方だった。
オスカルにしても、アンドレをこれほど愛していることにようやく気がつき、彼は何と魅力的な男性だろうと今更ながら心をときめかす想いであった。
幼い頃から私は他の姉上と違う教育をされ、母上からも姉上からも距離を置かれた存在だった。
そんな私の孤独を救ってくれたのが彼のアンドレの存在だった。
彼は私の唯一の味方で親友だった。
近衛隊にいたときも見守ってくれた、私が衛兵隊に移るとき、彼も一緒に入隊し、守ってくれていた。
彼の端正な顔立ち、優しく控えめな性格も、私を愛しているといったときの彼の情熱も何もかもがいとおしい。
彼がいない人生など考えられない、彼がいないと生きていけない。
一度火がつくと恋の炎はますます燃える物、オスカルはアンドレへの思慕を強くしていった。
二人は恋人同士になった、とはいえ、身分違いの二人ゆえに回りの人々に二人の関係をばれないようにする必要があった。
人前では今までと同じ主人と従僕の関係、そのためオスカルの後ろを警護するように歩く、決して恋人同士のような横に立つことは許されない。
それは衛兵隊の中でも同じこと。
女が軍隊にそれも荒々しい平民ばかりの軍隊の隊長を務めるのだから、他の男性よりも勇ましく堂々とした立ち振る舞いでなければいけない。
しかも、自らの従僕が恋人など隊員にばれることなどあってはいけないのだ。
だから、二人は隊の訓練のときでも執務室で事務処理を行うときでも今までどおりどころか以前よりも冷静な間柄を装うようにした。
しかし、屋敷に戻ると、アンドレにショコラを持ってくるよう命じる、これが二人の逢瀬だった。
ようやく二人きりになり、恋人同士の関係になれる唯一の時間だったのだ。
「オスカル、ようやく二人きりになれた」アンドレがソファーでオスカルの肩を抱いた。
「アンドレ、まだショコラを飲んでいる途中だぞ」とオスカルがふざけて言うと。
「さんざん待たされたのにまだ俺を待たせる気か!」
「お前の長所は根気強いところだ、それで私を陥落させた」
「お前の心を射止めた時点で俺の根気強さは失われた、もう引き返せないよ」
そういってアンドレが素早くオスカルの唇を奪った。
こうした甘い時間が二人の幸せなひと時だった。
アンドレお前はこんなに強引なやつだったんだな、これまでこの情熱を私のためにじっと耐えてきてくれたのか・・・
そう考えるとオスカルは切なくなり、アンドレを思い切り抱きしめた。
「どうした?オスカル」
「何でもない!何でもないのだ!」
「アンドレ・・・愛している、お前だけを愛している」
「おかしな奴だな、でも・・・オスカル、俺もだよ・・・俺もお前を愛している、お前以上に・・・」
アンドレは再びオスカルに深く口づけしていく。
オスカルは初めての自分の感情に戸惑っていた。
こんなにアンドレを愛している自分がいるなんて、気づけば彼を眼で追っている。
彼が好きだ。
彼をアンドレを独占したい。
男性を愛するとはこのように醜い感情に囚われるものなのか?
彼が部屋から出るときはひどく寂しい。
「もう行くのか?」ついいってしまう。
「もう遅い、俺ももっとお前の側にいたいが明日の勤務に触る」そういって優しい笑顔を残してお前は出て行く。
わかっているのだ、身分違いなだけでなく、私は軍に所属する身、そしてお前は部下だ。
私達は二重の枷がある。
アンドレ、私はなんと言う罪深い女なのだろう。