「………………」
暮れなずむ西日に照らされながら、フィルヴィスは南東のメインストリートを歩く。
本来ならば同じファミリアの者が同伴すべきだというのに、【
取り残されたのは、魔力を使い果たして
そんな彼女を放っておけずに、フィルヴィスは地上まで護衛したのだ。
「はぁ……」
やがて、ホームまで戻って来たところでディオニュソスに今回の件を報告し、フィルヴィスは一息つく。
今日は一度に沢山の事が起こり過ぎた。早々に身を清めて夕食を食べたのち、自室で休息したかった。
「……ん?」
そんな事を考えていた折。吹き抜けになった螺旋階段の奥から、エントランスの扉が開かれる音が聞こえた。
すかさず帰宅した者の姿を確認すべく、フィルヴィスは早足にならない程度の速度でそちらに向かう。
下の階まで降りると同時に目に入ってくるのは、もう見慣れてしまった黒装束。フェイドである。
任務の事後処理を無事に終え、今日の内に帰って来れたらしい。
「帰ってきたか、フェイド」
「………………」
しかし、フィルヴィスが出迎えてきてもフェイドは何も答えなかった。
沈黙を保ったまま、只々色褪せた瞳をこちらに向けるばかり。
「ああ」
そうして、たっぷりと間を置き、抑揚の失せた声で短い返事をしたのち。
フェイドはフィルヴィスに目もくれず、緩慢とした足取りで屋敷の別館へと歩き出した。
「っ………………」
初めて会った時のような素っ気ない態度に、フィルヴィスは動揺する。
異変の心当たりは一つしかなかった。
脳裏をよぎるのは、灰となった
自らの周囲で何が起きても、彼は
フィルヴィスの必死の説得によって辛うじて持ち直したように見えたが、結局はその場凌ぎ。
もしも、彼が微動だにしない鉄面皮の下で、欺かれたと思っているのだとしたら。
明かさなければならない。あの墓場で、有耶無耶にしてしまった真実を。
「………………」
遠ざかってゆく後ろ姿を見ながら逡巡するものの、フィルヴィスはフェイドの後に続く。
そうして、二人は言葉も交わさず、人の気配が無い場所までゆっくりと歩き続けた。
「……聞かないのか。どうして私が24階層まで来たのか」
やがて、本館と別館を繋ぐ渡り廊下まで来たところで、フィルヴィスは勇気を振り絞って口火を切る。
しかし、フェイドは立ち止まるものの、相変わらずこちらを見つめてくるだけだった。
「今、ディオニュソス様はロキ・ファミリアと協力して事件の解明をしようとしている。彼女らの信頼を得るために私も同行───」
沈黙が続く事に耐えられず、フィルヴィスは口を動かし続けようとする。
「───本当は」
すると、その内心を見抜いたかのように、フェイドはこちらの言葉を遮ってきた。
前髪の隙間から覗く色褪せた瞳が、無機質な光を帯びてフィルヴィスを射抜く。
「…………一度くらい、お前を助けたかったから」
逆に、お前に助けられる結果となったが。そう呟いたのち、己の不甲斐なさに俯いてしまう。
あの時、白ずくめの
フェイドが駆けつけてくれなければ、この心は暗く淀んでいただろうから。
復讐こそ成し遂げられなかったものの、フィルヴィスの心は確かに救われていたのだ。
しかし、助けられてばかりで何も返せていないというのが現状だった。
右手の薬指に嵌められた【白い秘文字の指環】に触れながら、フィルヴィスは愁いを帯びた面持ちを浮かべる。
「………………」
そんなフィルヴィスを、フェイドは依然として見つめ続ける。今ばかりは、彼からの視線が痛かった。
早々に出鼻を挫かれて二の句が継げなくなってしまい、黙り込んでしまう。
「フィルヴィス」
やがて、太陽が地平線に沈んだところで、唐突にフェイドが名前を呼ぶ。
そのまま、フィルヴィスが肩を跳ねさせながら顔を上げると。
「服を脱げ」
よく分からない事を言い出した。
「………………え?」
唐突に告げられた要求に、フィルヴィスは思わず素っ頓狂な声を上げた。
「見たい物がある」
服の下にある見たい物。
つまり、裸。
フィルヴィスの思考は、邪な方向に流れて行く。
「み、みみみみみみ見たい物……!?」
彼の要求を受け入れるには、色々と足りていないものが多すぎる。
身を清めたり。心の準備だったり。更なる関係を築いたり。将来を誓い合ったり。
そもそも、自分はエルフなのだから、斯様な状況で伴侶となる異性以外に肌を晒すなど言語道断。
今はまだ、その時ではない。晒すならば、何もかもが終わってからの方が良い。
そうでなければ、きっとその関係に依存して溺れてしまう。というか、今ですら危ない。
「すうぅ……ふうぅ……」
などと、一頻り思考を錯綜させたところで。深呼吸して気持ちを落ち着かせる。
「…………気になるか。私の中に、奴と同じ魔石があるのか」
その紛らわしい言い回しに一瞬惑わされたが、フィルヴィスはフェイドの真意に気付いた。
「ああ」
やはり、彼が気にしていたのは、魔石を抜かれて灰となったオリヴァスだったのだろう。
長い回り道となってしまったが、ようやく話の本題に入れる。
そうして、話の取っ掛かりを得たフィルヴィスは語りだす。
「おそらく、オリヴァス・アクトは……いや、奴だけでなくお前の話に出てきたレヴィスという女も、私の同族だろう」
頭の中に響く
自分の意思では埋め込まれた魔石を抉り出せず、生殺与奪の権利を奪われた存在である事を。
「死ぬのか」
「………………」
「お前も魔石を失えば、あの男のように灰となって死ぬのか」
一通りの説明を終えると、フェイドは淡々とした声色で問うてきた。
結局のところ、
「……そうだな、死ぬ」
一拍の間を置いてフィルヴィスは肯定する。フェイドと自分の不死性には、大きな隔たりがある事を。
フェイドは何をされても死なない。フィルヴィスは自分の意思で死ねない。
同じ
「……幻滅、したか?」
あたかもお前と同類のように振る舞っていた私が、魔石を砕かれるだけで死ぬような、か弱き存在だと知って。
フィルヴィスは不安に声を震わせながらも、そう言ってフェイドの反応を窺う。
「………………」
フィルヴィスの問い掛けに対して、フェイドは何も言わずに首を横に振った。
「だったら、さっきからお前は何を気にしているんだ?」
その事実に少しだけ安堵すると同時に、更なる疑問が浮上する。
だとしたら、何故フェイドは帰ってきてから不自然な態度を取っているのかと。
「何故かは知らないが、お前の顔を見る度に想像して不愉快になった」
お前が、灰となって死ぬ瞬間を。
「ふふふ……」
と、フェイドが返答したところで、フィルヴィスは口元に手を当てて笑う。
「何が可笑しい」
「いや……ようやくお前にも、私の気持ちが分かったのかと思ってな。【
「俺はお前とは違う」
俺を置いて死ぬのは、お前だ。淡々と発せられた言葉に、そのような含みを感じ取る。
「………………」
凡俗だろうが英傑だろうが、羽虫だろうが怪物だろうが、フェイドは殺せば死ぬのであれば同じものとして扱う。
このままでは、彼はフィルヴィスを分けて隔てるだろう。死んでも蘇らない、いつか朽ちて果てる。
そんな、至極ありふれた存在の一つとして。
それは、到底看過出来ない。これまでもこれからも、彼にとっての例外で在りたい。
フィルヴィスからすれば、フェイドに只の人間として扱われるのは耐え難い事だった。
それこそ、周囲の者に悍ましい怪物として扱われる以上に。
フィルヴィスの意は決した。ゆっくりと歩み寄って、フェイドの前に立つ。
「………………」
そのまま、彼を抱きしめた。
「……ちょっとそこ座れ」
「分かった」
彼我の身長差からフィルヴィスがフェイドに甘えるような構図となり不本意だったので、位置調整の為窓の縁に座らせる。
「………………」
気を取り直して、フィルヴィスは彼の頭を抱えるようにして抱き寄せた。
そして、本来の目的を果たすべく、己の想いを語り始める。
「私は胸の中に魔石を埋め込まれた、人間と怪物の混ざりもの……いいや、もういっそ
「それがどうした」
「お前は何も気にしていないようだが、辛かったんだぞ? こんな話、今まで誰にも打ち明けられなかったのだから」
己を蔑むような言葉を、化け物に堕ちた絶望を、フィルヴィスは淡々とした面持ちで語る。
「……今も、この身体を許容するのは難しい。元の身体に戻れたらと思った事は数え切れない」
「………………」
「けどな、今までとは違って、何もかもを拒絶している訳では無いんだ」
何故ならば、それは、もう既に乗り越えた過去だから。
「一つ。一つだけ、この身体になって良かった事があった」
「それは何だ」
「お前に出会えた事だよ」
いずれにせよ、死にゆく仲間を見捨てられずに立ち向かっていた。
人ならざる、偽りの命を与えられた代わりに、本当の出会いを手に入れられた。
そう考えれば、この穢れた身体も受け入れて良いのではないかと思えた。
「死ねば終わりだ」
そんなフィルヴィスの吐露を、フェイドは短い言葉で一蹴する。
灰となって崩れ落ちたあの男のように、後には何も残らない。
お前が何を思っていようが関係は無い。フェイドは無感動な声色で、そう呟く。
「………………」
確かに、彼の言う通りである。置いていく側が幾ら想いを伝えたところで、置いていかれる側からすれば何の慰めにもならない。
寧ろ、伝えた言葉や状況によっては、それが一生消えぬ傷となりかねない。
だが、フェイドの傷となるつもりなど、フィルヴィスには一切無かった。
「そうか……だったら───」
そして、フェイドの耳元で囁く。
「───
これからの未来、絶対にお前を置いて死なない事を。
空を覆っていた雲が風に流され、満月が露わとなる。雲間から差し込んだ光が、重なった二人の影を投影する。
「そう、言い切れる、根拠は」
「……根拠は明かせないが、証明は出来る」
らしくない、途切れ途切れの問い掛けに対して、フィルヴィスは微笑みながら述べる。
「さっきはああ言ったが、私は他の怪人と違って特別だ。魔石を砕かれたとしても蘇られる」
そのまま、フェイドの手を掴んで自らの鳩尾に沿えた。
「此処だ。此処に私の魔石が埋め込まれている」
「………………」
「砕くなり、貫くなり、断つなり、抉るなり、好きにしろ」
「………………」
「私の言葉が信じられないなら……お前になら……大丈夫だ」
それに、そうするだけの資格が彼にはある。この証明には、フィルヴィス自身の贖罪も含まれていた。
「分かった」
そうして、自らの手を見つめたのち、フェイドは逡巡もせずに頷いた。フィルヴィスが期待した通りに。
これで良い。彼の隔意が解消されるのならば、自身の罪悪感が緩和されるならば、これ以上の事は無い。
「……ただ、あまり音は立てるなよ?」
そう言いながら目を閉じて、その時を待つ。
しかし、一向にその時は訪れない。
「………………フェイド?」
「分かった」
薄目を開けて名を呼ぶが、フェイドは先程と同じように頷くばかり。武器を取り出す気配は皆無。
「……何が分かったのか言ってみろ」
彼の分かったという言葉の意味は、了承ではない。認識したという意味か。そう思ったフィルヴィスは、フェイドに質問する。
「先程の誓いに、嘘偽りは無い事だ」
「どうしてそう思った?」
「俺に弱点を触らせているだろう」
彼の返答を受けて、視線を下ろす。その手先は、依然としてフィルヴィスの鳩尾に触れたままである。
鳩尾。この場所に
鳩尾。人体を大きく分けるとするならば、胸に該当する部分。
胸に該当する部分。
胸。
「……………………」
がっつり、フィルヴィスの胸に、フェイドの手が当たっている。
そうして、暫しの沈黙の後。
「~~~~~~っっ!!??」
脳が湯気を立てて沸騰する。頬が茹だって紅潮する。心臓の鼓動が早まり、動悸に変わる。
自覚したのだ。話の流れで彼を抱き寄せてしまったが、ある意味肌を晒すよりも凄い事をしてしまったのではないかと。
今の状況を俯瞰して見れば、異性に自分の胸を触らせているような状況だ。
今の自分を俯瞰して見れば、貞淑を重んじるエルフにあるまじき
「心臓の鼓動が早くなった」
至近距離であるが故に、こちらの変化を瞬時に感じ取ったらしい。フェイドは何食わぬ顔で呟く。
それに気づいたフィルヴィスは、ゆっくりと音一つ立てずに彼から離れた。
「忘れろ!」
そして、胸を隠すようにして押さえながら叫んだ。一連の流れを忘却しろと。
「どこまでだ」
「お前を抱き締めた辺り!」
「分かった」
フェイドは頷くと同時に窓の縁から立ち上がり、ゆっくりと歩き出す。先程、自分が立っていた場所まで。
そして、何を言うかと思えば。
「俺はお前とは違う」
俺を置いて死ぬのは、お前だ。
「〜〜〜〜〜〜っっっっっっ!!!!!!」
一言一句違わぬ発言の内容、声の抑揚、口を動かす速度、話すタイミングに至るまで。
さながら、時間を巻き戻したかのような、本のページを数枚戻したかのような様相である。
「そこまで忘れろとは言ってないだろ!!!!」
「お前は何を言っている」
「思い出せ!」
「何をだ」
「お前を抱き締めた辺り!」
「分かっ───」
「───分かるな!!!!!!」
結局、忘れた演技をしていただけだったらしい。あっさりとボロを出したフェイドに、フィルヴィスは怒鳴り散らした。
「ふー……ふー……ふー……」
そうして、フィルヴィスは息を整えて、熱暴走する諸々の沈静化を試みる。
「…………あ」
そこで、ふと気付いた。
彼の記憶力は凄まじい。一度見たもの、知ったものは決して忘れない。
長い付き合いのフィルヴィスが、一瞬騙される程の演技。もとい、再現から見てもそれは明白だ。
そして、フェイドが記憶するものには、その手で触れた物も含まれている。
間違いなく、彼の海馬には刻まれた事だろう。フィルヴィスの胸の感触が。
「っ……っっ……っ……」
繰り返すが、彼の記憶力は凄まじい。一度見たもの、知ったもの、触れたものは決して忘れない。
決して、忘れてくれない。
「う、うわああああああぁぁぁぁぁぁっっっっっっ!!!???」
際限なく湧き上がる羞恥心が、絶叫に変換されてフィルヴィスの口から溢れ出す。
そのまま、荒れ狂う嵐の如く、フィルヴィスはから屋敷の本館の方まで逃走した。
「………………」
この場に一人取り残されたフェイドは、駆け抜けて行ったフィルヴィスの背中を黙って眺める。
自分から胸に触れさせたというのに、何故ああも動揺するのか。そんな事を考えながら。
しかし、いくら考えても答えは出なかったので、回れ右をして自室に戻ろうとする。
「──────」
刹那、何処からか視線を感じた。
万物を魅了してしまうかのような、抱擁してしまうかのような、無垢なる輝きを帯びた視線を。
フェイドは辺りを見渡して視線の主を探す。バベルの最上階からではない。あそこからでは、あの女神の視線は届かない。
「………………」
やがて、色褪せた瞳は夜空を見上げる。窓の向こう側、宇宙に浮かぶ星々を見据える。
そこで、フェイドは視線の主を発見した。
影の地。
そこは、黄金樹の影に隠された地であり、謳われぬ粛清の戦いが行われた場所。
そこは、狭間を黄金に律する神が生誕したのち。見捨てられ、忘れ去られた場所。
幻影の墓標が立ち並ぶ平原を、戦禍の痕が色濃く残る焼け野原を、醜く歪んで捻じ曲がった影の大樹が見下ろしている。
そんな影樹を仰ぎ見るように聳え立つ、影の城の最上階。
固く閉ざされた暗室にて、褪せ人と
「──────」
黄金の針が燦然と煌めき、真紅の炎が轟然と迸って飛び交う。
けたたましい金属音と共に、白亜のサーコートと赤いマントが翻って行き交う。
八角形の広間を照らすのは、辺りに散りばめられた蠟燭の火と燃え盛る紅い炎。
広間の奥の暗闇では、赤子を抱いた母の像が目の前の光景を粛然と眺める。
「はあっ……はあっ……っっ……」
やがて、幾度かの剣戟が鳴り響いたのち、膝をついたのは褪せ人の方だった。
白亜のコートは見るも無残に焼け焦げ、黒字に金の装飾が施された兜は罅割れ、相貌が露わとなっている。
針の騎士、レダ。神人たるミケラの導きに従い、影の地を訪れた褪せ人の一人。
彼女には使命があった。封印の木を燃やし、神の塔へと至り、王の依代を神に届けるという使命が。
彼女には理想があった。神となったミケラと約束の王による治世により、世界を優しくするという理想が。
「貴公が如何に崇高な理想を掲げようと、我が使命は不変なり」
しかし、目の前の
串刺し公、メスメル。影の地唯一の
母たるマリカの命に従い、塔の一族を焼き尽くした、慈悲無き粛清者。
「黄金の祝福無きすべてに、死を」
メスメルの言葉に偽りは無く、同志達は彼の手で殺された。
残るは、満身創痍となったレダのみ。救世という理想が潰えるのは時間の問題だった。
「………………」
一歩進めば、其処に待ち受けるのは死。それでも、屈する訳にはいかない。
此処で屈してしまえば、今まで命を奪ってきた者達に顔向け出来ないのだから。
そう己に言い聞かせ、レダは立ち上がる。右手に携えし軽大剣を構え、無垢金の瞳でメスメルを見据える。
そうして、最期の攻防に臨まんと、メスメル目掛けて駆け出した瞬間。
「──────」
レダの足元に光が生じた。その光は、瞬く間にレダを包み込んだ。
───旧律の王たる者を探してください。
意識の暗転に伴って、レダの頭の中に声が響いてくる。それは、聞き間違えようのない、自らの主の声だった。
どうやら、自らの主たるミケラは神となったらしい。あとは、彼のもとへ王の依代を送り届ければ、救世は成される。
───彼は、狭間の地とも、影の地とも異なる世界……数多の神々が降臨した世界の中心に居ます。
旧律の王たる者。ミケラの言うそれが、エルデの王に最も近づいた褪せ人を指しているのであれば、レダの耳にもその名は届いている。
破砕戦争を生き延びた
狭間の地の象徴たる黄金樹に、滅びの火を放った大罪人。
燃え盛る黄金樹の内に向かったきり、彼は狭間の地から姿を消したという。
今も尚、エルデンリングの修復は成されず、狭間の地は壊れたままだった。
───もしも、彼を連れ戻すことが出来たなら。彼が、メスメルを打倒したならば。
おそらく、ミケラは判断したのだろう。もはや、影の地にも狭間の地にも、種火たるメスメルを倒せる褪せ人は残されていないのだと。
───
であれば、であるのならば。
───優しき理、千年の旅を。
その御心に従うまでである。