祝福擬きで行く先を決めたのは間違っていただろうか


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作:刈刈シテキタ刈
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第28話【Vengeance】


 

 

 

 巨大な樹の内部のような、一帯が樹皮に覆われた通路を、幾多の光の粒を帯びた苔が照らす。

 進路の先々では、奇妙な形と色をした葉や大きな茸、銀の滴を垂らす花々など。

 地上には存在しない、ダンジョン原産の様々な植物が姿を見せる。

 

 フェイド達は目的地である24階層、大樹の迷宮に足を踏み入れていた。

 下層域が間近に迫ったこの階層は、通路一本だけでも広い。

 十七人規模のパーティが、悠々自適に移動出来る程度には。

 

 その一方で、出現するモンスターの凶悪さも増し、冒険者側にもそれ相応の練度が求められるようになる。

 だが、ヘルメス・ファミリアは余裕綽々といった様子で、襲い来るモンスター達に対処していた。

 

 大剣でソード・スタッグを両断し、大盾で仲間を守る虎人(ワータイガー)

 タイミングを見極め魔法を発動し、リザードマンを一網打尽にする小人族(パルゥム)

 短弓と手斧を巧みに駆使し、デッドリー・ホーネットに立ち回るエルフ。

 

 バックパックを装着しているサポーターに至るまで、ヘルメス・ファミリアの団員の実力は申し分ない。

 必要に応じて祈祷で援護しようとしたものの、フェイドの出番が全く訪れないのが良い証拠だ。

 

「……【彷徨う者(ストレイド)】、率直な意見を聞かせてください。貴方の目から見て、私たちはどの程度戦えるでしょうか」

 

「………………」

 

 アスフィからの質問を受け、フェイドは顎に手を当てて思考に耽る。

 

 この先に待ち受ける食料庫(パントリー)の状況については予め共有してある。

 騒ぎとなっているモンスターの大量発生の原因は、食料庫(パントリー)の占拠。

 最奥部にある大主柱は、食人花と宝玉を肥え太らせるための苗床と化していると。

 

 それだけでなく食人花の性質や弱点も隈なく周知したうえで、こちらは万全の態勢で臨んでいる。

 出てくる敵が食人花や巨大花だけならば、現状のパーティであっても問題なく攻略できるだろう。

 

「場合によっては半分以上死ぬ」

 

 しかし、それはレヴィスを始めとした怪人(クリーチャー)が居なければの話である。

 このまま、連中が食料庫(パントリー)と宝玉を簡単に明け渡す筈がない。

 彼女の奇襲を防げなければ、ヘルメス・ファミリアの何割かが持っていかれる事は予想出来た。

 

 リヴィラの街を壊滅手前まで追い込んだ先日の事件に匹敵するほど、今回の任務は危険性を孕んでいるというのが、フェイドの所感だ。

 

「本当に、厄介なことに巻き込まれてしまいましたね……」

 

 フェイドの予測を聞いたアスフィは、溜息を堪えるような表情を浮かべた。

 

「その分報酬は弾むと言っていた」

 

「生憎と、死人にお金は使えません」

 

「死ななければいい」

 

「……私達は貴方とは違う。簡単に言わないでください」

 

「そうか」

 

 パーティ全体の士気に関わるので、この話は団長であるアスフィのみに留めつつ、一行は24階層の正規ルートを進む。

 

 道中、食料庫(パントリー)から溢れ出したと思しきモンスターの大群に遭遇するも、アイズが単身で蹴散らして事なきを得た。

 

「………………」

 

 死屍累々と化した通路でモンスター達の魔石を回収しつつ、フェイドは思う。

 ヘルメス・ファミリアが生還できるかどうかは、彼女の働き次第であると。

 フェイドはパーティが瓦解した瞬間に囲まれて轢殺されるので、考慮しないものとする。

 

 そうして、大群がやってきた方向から占拠された食料庫(パントリー)を特定し、24階層を北上。

 不自然なまでにモンスターの気配が途絶えた領域を、暫しの間歩いて行くと。

 

「なっ……」

 

 30階層の物と全く同質の緑の肉壁が、フェイド一行の前に現れた。

 不気味な光沢を帯びた壁は、食料庫(パントリー)までの道を完全に塞いでいる。

 

「か、壁が……」

 

「……植物?」

 

 尋常ならざる様相を目の当たりにし、誰しもが目を剥く様子を余所に、フェイドは一人だけ前に出ながら【黄金樹の聖印】を発火。

 

【巨人の火をくらえ】。

 

 そして、前回と全く同じ要領で、門のような器官へと灼熱を投げ放つ。

 耳を劈く炸裂音と共に、行く手を阻む門は爆発四散。食料庫(パントリー)への道は開かれた。

 

 焼け落ちた肉壁を眺めつつ、フェイドは生物の体内めいた異界へと一足先に侵入してゆく。腰にぶら下げた【ランタン】に火を灯しながら。

 

「いや、詠唱は……?」

 

「必要ない」

 

「……であれば、その左手に持った物は魔道具ということでしょうか」

 

「違う」

 

「つまり……それが貴方の必殺技、ですか?」

 

「祈祷だ」

 

 魔法とは異なる異能を目撃した冒険者達から、次々と質問の声が上がるが、あれこれと答えてやる時間も無いので無視する。

 フェイドの対応に釈然としない面持ちを浮かべるものの、24階層の異変を解決すべく食料庫(パントリー)内部への進行が始まった。

 

 

 

━━━━━━────────────

 

 

 

 生物の体内にも似た様相の薄暗い空洞を、鮮血めいた赤い光が照らす。

 其処はダンジョンの一角でありながら、冒険者はおろかモンスターの雄叫びも届いてこない。

 まるで外界から切り離されたように、迷宮の騒がしさとは無縁の静寂を保ったまま。

 

「………………」

 

 そんな静けさに満ちた空洞の片隅で、レヴィスは座り込み目を閉じていた。

 瞼の裏に思い浮かべるのは、とある男の姿。この世界に名を馳せる英雄豪傑とは真反対の、脆弱且つ矮小な男。

 

 フェイド・ストレンジア。或いは【彷徨う者(ストレイド)】。

 

 強者特有の覇気といったものは皆無。だが、筆舌に尽くしがたい圧が、彼の色褪せた双眸には宿っていた。

 これまでに戦ってきた者とは別種の底知れぬ気配が、彼の身には纏わりついていた。

 

 彼の手で刻まれた首筋に走る傷跡を撫でながら、レヴィスは彼との戦いを思い返す。

 

 27階層の広間、オラリオ東部の路地裏、宿屋代わりの洞窟、リヴィラの街西部の平野。

 都合四度、彼女はフェイドと刃を交えてきた。その悉くで深い傷を与えられてきた。

 

 彼我の間に生じた力関係が覆ることは、もはや無きに等しい。

 

 それは、レヴィスの想像の中でさえ。

 

「………………」

 

 やがて、人が動き回る複数の足音と何かの蠢く音が、レヴィスの鼓膜を揺らす。

 瞼を開けると視界に映るのは、狼狽えながら歩き回る白いローブの集団。

 忙しなく行き交う様子からして、この食料庫(パントリー)に侵入者が現れたらしい。

 

「レヴィス、侵入者だ」 

 

 そうして、レヴィスの予想を裏付けるように、横合いから報告が飛んでくる。

 顔を上げれば視界に入るのは、白髪に全身を白ずくめの衣装で包み、相貌をモンスターの頭骨で覆い隠した男。

 目的を同じとする、数少ないレヴィスの同類。怪人(クリーチャー)の一人である。

 

「モンスターか?」

 

「いや、冒険者だ」 

 

 レヴィスの問いに、白ずくめの男はやはり来たと憎々しげに答える。

 この24階層はダンジョンにおける中層。進出できる冒険者が比較的多い事から、騒ぎになるのも早かったのだと。

 肉壁の一部、月の表面を思わせる蒼白い水膜には、食人花と交戦する冒険者の一団が映し出されていた。

 

「相手は中規模のパーティ……全員手練の───」

 

 そして、白ずくめの男が映像からの印象を述べようとしたところで。

 

『──────』

 

 一団の最後尾に控えていた全身鎧の男が、左手から雷の槍を形成し、無作為に振るう。

 そのまま、迸る雷鳴と共に水膜が発していた光は消え失せ、映像は途絶した。

 

「……いや、一人妙に勘のいい奴が紛れ込んでいるな」

 

 忌々しげな呟きを皮切りに、レヴィスはその場からゆっくりと立ち上がる。

 終始様子見に徹するつもりだったが、彼が此処に来たならば事情は変わった。

 

「あの全身鎧の男を、周りの奴等から引き剝がせ」

 

 そして、白ずくめの男に対して要求する。一瞬だけ映像に映ったあの男と、一対一で対峙できる状況を作れと。

 

「なんだ、勝手な行動は───」

 

「───二度も言わせるな」

 

 底冷えするような声で言葉を遮り、レヴィスは彼を睥睨する。

 次に口答えするならば殺すという意思を視線に乗せながら。

 

「っ………………」

 

 先程までの気怠げな雰囲気とは打って変わり、彼女は身に纏う気配を殺伐としたものに豹変させていた。

 有無を言わせぬ眼光を真っ向から受け、白ずくめの男は一歩後ずさる。

 

「ちっ……わかった」 

 

「………………」

 

 怯えを誤魔化すような舌打ちと了承を聞き、レヴィスは大空洞から動き出した。

 鮮血めいた赤い光が、彼女の手に持った長剣を禍々しく照らし出す。

 

 レヴィスは見逃していなかった。映像が途絶える直前、あの男が行使した異能を。兜の隙間から垣間見えた色褪せた瞳を。

 戦鬼の鎧を身に纏うあれは、間違いなくフェイド・ストレンジアだった。レヴィスが待ち焦がれる死に甲斐だった。

 

「くくっ……」

 

 対峙すれば命を刈り取られる。そう予感しながらも、足を止める事が出来ない。

 対峙すれば死の淵に立たされる。そう予感しながらも、笑みを抑える事が出来ない。

 

 そうして、レヴィスは薄暗い通路の奥へと、色めきだった足取りで消えて行く。

 

 

 

 逢瀬の時を待ち侘びる生娘のように。

 

 或いは。

 

 炎に向かう蛾のように。

 

 

 

━━━━━━━━━─────────

 

 

 

 木の根のように無数に分岐する通路を、ルルネが地図に書き記しながら進んでゆく。

 内部への突入から暫く経ったものの、怪人(クリーチャー)が出てくる気配は無い。

 時折、複数体の食人花が襲い掛かってくるばかりで、進行そのものは順調だった。

 

「………………」

 

 だとしても、一風変わった青白い花から何者かの視線を感じたので、間違い無くこの食料庫(パントリー)に敵は居る。

 問題は、いつ仕掛けてくるか。パーティの最後尾に陣取りながら、フェイドは神経を尖らせる。

 

「また分かれ道か……」

 

 やがて、何度目かも分からない岐路に差しかかり、パーティの歩みが止まった。

 

「アスフィ、今度はどっちに───」

 

 広く左右に開けた二つの道を前に、ルルネがアスフィの指示を仰ごうとした直前。

 通路の奥から長大な体軀を引きずる音を響かせ、食人花の群れが毒々しい花頭を覗かせながら現れる。

 

「両方からかよ……」

 

「違う……後ろからも」

 

「げっ」

 

 呻くルルネに追い打ちをかけるように、アイズからの注意が飛ぶ。

 左右のみならず後方も含めた、計三方向からの挟み撃ちであると。

 天井と地面を這って出現する多くの食人花に、ヘルメス・ファミリアの他団員も顔をしかめた。

 

「……【剣姫】、片方の通路を受け持ってくれますか?」

 

「わかりました」

 

「【彷徨う者(ストレイド)】は私達の後ろに控えていてください。敵が仕掛けてくるとすれば、ここでしょう」

 

「ああ」

 

 間もなくして、鋭い号令によって総勢十六名の冒険者達は飛び出した。

 後方に八名、右に七名、そして左にアイズが分散してゆく。

 フェイドは岐路の中心に留まり、彼女らの背中を見送った。

 

 アスフィの言う通り、奇襲が来るならば分断されたこのタイミング。

 フェイドは敵の魂胆に目星を付けて、周囲に意識を割く。

 怪人(クリーチャー)の姿を視認した瞬間、真っ先に飛び出せるように。

 

 斯くして、その予想は的中した。

 

「──────」

 

 しかし、標的がフェイド自身である事は、予想外だった。

 

 地面から伸びた蔓に足を取られ、左の通路の奥へと投げ飛ばされながら、そのように思う。

 

 着地した途端、追い打ちと言わんばかりに頭上から巨大な柱が降り注ぐ。

 圧殺されるわけにもいかないので、フェイドは地面を転がり回避してゆく。

 

「………………」

 

 全ての柱をやり過ごしたのち顔を上げれば、退路を塞ぐかのような隔壁が出来上がっていた。

 

 敵の狙いは、ヘルメス・ファミリアとの隔離。孤立無援の所を、数の暴力で押し潰すつもりか。

 フェイドがそう悟ると同時に、未だ通路に残る五体の食人花が涎を撒き散らしながら襲い掛かってくる。

 

「───下がって」

 

 刹那、そんな一言と共に駆け抜ける一陣の風。

 

 その後ろ姿は、アイズのものだった。

 

 そのまま、彼女はフェイドの代わりに食人花を迎え打ち、旋風の如き勢いで異形の花々を細切れにしてゆく。

 

「何故ついてきた」

 

 金髪を靡かせて剣を振るうアイズを眺め、フェイドはわざわざ後を追いかけてきた理由を問うた。

 戦力的に不安が残るのも、雑に使い捨てられないのも、取り残されたヘルメス・ファミリアの方だというのに。

 

「助けようとしたら、つい……」

 

「そうか」

 

 申し訳なさそうに弁明するアイズに対して短い返事をしつつ、フェイドは邪魔な柱を破壊しようと聖印を翳す。

 

「──────」

 

 だが、フェイドの懸念は間も無くして払拭された。通路の奥、背後から発せられた尋常ならざる殺気によって。

 

 十中八九、気配の主はレヴィスである。

 

 フェイドからすれば、ヘルメス・ファミリアと隔離してくれたのは寧ろ好都合だった。

 あの岐路で食人花を交えた乱戦に持ち込まれれば、同行する冒険者達を巻き添えにしてしまう危険性があったから。

 

 もしも彼女と同格の怪人(クリーチャー)が隔壁の向こう側に居たら、その時はその時だ。

 

「………………!」

 

 アイズもレヴィスの気配を察知したのか、眦を吊り上げて警戒を露わにする。

 この気配の持ち主を前に、いつまでも背を向けていられないと判断したのだろう。

 

「進むぞ」

 

「……はい」

 

 そうして、ヘルメス・ファミリアとの合流を一時中断し、フェイドとアイズは踵を返して暗がりへと歩き出す。

 

 

 

「一人、余計な奴が紛れているな」

 

 

 

 接敵までに、然程の時間はかからなかった。

 

 長大な一本道を進んだ末、フェイドは薄闇の中で待ち構えるレヴィスと向かい合う。

 彼女の他に敵影は皆無。広々とした通路は、侵入者を無視するかのように閑散としていた。

 

「本来ならば相手をしてやりたいところだが……私用が優先だ。失せろ、アリア」

 

 そのまま、レヴィスは憮然とした面持ちで、隣に立つアイズへこの場から立ち去るよう命じる。

 視線で指し示す先には、食料庫(パントリー)の最奥部に続くと思しき道が有った。

 どうやら、番人という本来の役割を放棄してまで、彼女は一対一での戦いを所望しているらしい。

 

「私は、アリアじゃない。アリアは私のお母さん」

 

 だが、アイズはレヴィスの言葉に従わず、この場に留まった。

 

「貴方は、どうしてアリアを知っているの? アリアの何を知っているの?」

 

 これまでとは打って変わった様子で口数を増やし、手に持った剣を構えながら詰問する。自らの母の名を呼ぶレヴィスに対して。

 

「………………」

 

 動こうとしないアイズを無感動に眺めたのち、レヴィスは無言でフェイドを見やってくる。

 その眼差しに含まれていたのは、この頑固な小娘を説得しろという要求。

 

 前回の戦いで、彼我の力関係は覆った。もはや、一対一の状況で遅れを取る可能性は低い。

 フェイド一人でも対処出来る以上、アイズをレヴィスにぶつけるのは無駄だ。

 効率的に食料庫(パントリー)を制圧するならば、別行動が理に適っている。

 

「……フェイドさん、此処は任せてください」

 

 レヴィスとの再戦(リベンジ)を望むアイズを無視し、これまでと同じように一人だけで戦うべきか。

 そのような事を考えながら、フェイドは隣に立つアイズを見やる。

 視界に映るのは、人形のように無機質な横顔と、正面を真っ直ぐに見据える金眼。

 

「……おい。この足手纏いが私を倒せるとでも思っているなら、高望みだぞ」

 

 はたまた、こちらとの再戦(リベンジ)を望むレヴィスを無視し、一人だけで奥へと進むべきか。

 そのような事を考えながら、フェイドは目の前に立つレヴィスを見やる。

 視界に映るのは、幽鬼のように冷ややかな相貌と、こちらを真っ直ぐに見据える緑眼。

 

 そして、それらを見たフェイドが出した結論は。

 

 

 

「援護する。行け」

 

 

 

 アイズとの共闘、つまり折衷案である。

 

「ちっ……よりにもよって共闘を選ぶとはな。そこの小娘に絆されでもしたか?」

 

「違うが」

 

 暫しの間の観察を経て、フェイドは察していた。

 

 この場に居るのは生来の負けず嫌い。及び死に急ぎであり、融通が効かないのだと。

 どちらか片方を放置した場合、待ち受ける結果は碌でもないのだと。

 

「───【目覚めよ(テンペスト)】」

 

 間も無くして、フェイドの答えを聞いたアイズは、小さく頷きながら呪文を唱えた。

 

 そのまま、【エアリアル】の発動と同時に、レヴィス目掛けて突貫。

 長大な通路に突風が吹き荒び、けたたましい金属音が鳴り響く。

 

「【ステイタス】を昇華させたようだが」

 

「………………っ!」

 

「一つLvが上がった程度で私に勝てると思っているのなら、勘違いも甚だしいぞ」

 

 長剣とサーベルが火花を散らして鍔迫り合う。以前とは異なり伯仲しているものの、レヴィスの余裕は崩れない。

 緑肉の床を抉りながら踏み込み、桁外れの膂力を以って刃を押し込む。

 拮抗を強引に打ち破ると同時に、後退したアイズの脳天へ長剣を振り下ろした。

 

「──────」

 

 その間隙を縫うようにして、フェイドは【雷の槍】を投擲。レヴィスの追撃を妨害する。

 舌打ちと共に彼女は後ろへ飛び退き、攻防は仕切り直しとなった。

 

「……まあいい。奴が庇い切れなくなったその瞬間が、貴様の最期だと思え」

 

「貴女には、もう負けない……!」

 

 淡々とした売り言葉に辿々しい買い言葉が、フェイドの目の前で交わされる。

 そして、アイズとレヴィスは互いに睨み合ったのち、同じタイミングで地を蹴った。

 

 卓越した強者達の攻防が、目の前で繰り広げられる。互いの得物が絶え間なく入り乱れ、鋭い斬撃が次々と飛び交う。

 

 アイズは、前回の雪辱を果たすべく。レヴィスは、目の前の邪魔者を排除すべく。

 緑肉が敷き詰められた地面を抉りながら、両者は残像と化して剣戟を奏でる。

 

「………………」

 

 だが、彼女らが内に抱えるものが如何なるものだったとしても、知った事ではない。

 

 ただ、与えられた任務を全うするだけである。

 

 そうして、成り行きで前衛となったアイズを援護すべく、フェイドは目の前の戦いへと臨んだ。

 

 

 





異なる相手へのリベンジに燃える女たちに巻き込まれる褪せ人。
はたして、アイズとの共闘は上手く行くのか(目逸らし)

読んでいただきありがとうございました。
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