『春に生まれたトリたちへ』(幼馴染&共謀) | hakumotoさんの投稿
『春に生まれたトリたちへ』(幼馴染&共謀)
前回のアンケート結果で1位だった幼馴染と共謀から見た、春生まれトリたちのお誕生日会のあれこれ小話。
アンケートにご協力いただき、ありがとうございました!
208票(有効票207、1票はどれに投票か判断できませんでした)で結果は下記の通りでした。
・1位 2の幼馴染&共謀 84票
・2位 1の運命&双子 50票
・3位 3の正邪&支配 46票
・4位 CAGEスタッフ組 27票
下に春生まれトリたちのお誕生日祝いの代わりのショートストーリーが続きます。
誤脱があっても許してください。
※非公式の個人の二次創作です。時間軸とかとは適当です、ご了承ください。
=========================
『春に生まれたトリたちへ』
「楽しかったな~……」
フラミンゴはふわふわとした余韻のまま、ついうっかり素直な感想を漏らしてしまった。あ、と思ったものの発してしまった言葉はもう戻らない。悪いことではないのだが、なんというか少し気まずいだけなのだ。
「アタシはお腹いっぱい食べれてよかったー」
「確かに……ここ最近の中では一番のご馳走だったかもしれませんね」
ハチドリとツルがフラミンゴの言葉に反応して、それぞれ感想を述べていく。ふたりはなにひとつ気にした様子はないことに、ちょっとだけフラミンゴはほっとした。
今日は春生まれのトリたちの、いわゆる合同お誕生日会を開催したのだ。
ハクチョウとツバメ、それからフクロウ。彼女たちの誕生日の時期はバタバタしてしまって開催できないままだった上に、ようやく開催できるめどがたったとしても備蓄が減ったりした後だったのもあって、いつもより豪勢にするのが難しかった。そういったなんだかんだの事情の一端……というより、元凶そのものと言っても過言ではないのが目の前のツルとハチドリのふたりである。
「そもそも合同誕生日会になったのも、ご馳走の機会が減ってしまったのも、私たちが襲撃なんかしたからなんですけどね」
「あはは、確かに!」
じ、自分たちで言っちゃうんだ。
フラミンゴはあははと笑って、片付けを続けた。お誕生日会の余韻はそこかしこに残っているが、いつまでも会場をそのままにはしておけない。あくまで日常の中の非日常、つかの間の休息時間だったのだから。
今回はそれぞれの任務のタイミングの都合もあり、調理はカラスとエナガとスズメが頑張り、会場準備はタカとカモメが中心に行ってくれたので、片付けは残りのメンバーでやっている。つまりフラミンゴとツルとハチドリである。
フラミンゴはツルと仲良しだったけど、それは襲撃がある前までだ。今も別に仲が悪いわけじゃない。ただフラミンゴはツルがわからなくなってしまっただけだ。
フクロウが気にして一緒に残ろうとしてくれたのだけど、今日は主役のひとりなのだからと帰してしまったのを思い出す。
「そういえばさー」
フラミンゴの中にある少しの気まずさを跳ね飛ばすような暢気さで、ハチドリは声をあげた。
「どうしたの?」
「王子ってなんでイスにしばられてたの?」
変わらぬ調子で続けられた質問に、その光景を思い出す。
ツバメもお誕生日会の主役のひとりだったのだが、何故か椅子に赤いリボンでくくりつけられて、困ったような笑みを浮かべていた。フラミンゴも首を傾げる。
「ワタシも理由は知らなくて……エナガとスズメが、ツバメのことを椅子ごとリボンでぐるぐる巻きにしたってことは聞いたけど……」
「なんで?」
「なんでだろ?」
ふたりして首を傾げていると、ツルがくすくすと笑いながら教えてくれた。
いわく、ツバメはサービス精神が旺盛でもてなすのが趣味のような人だから、お祝いされる側だと落ち着かず、ついつい紅茶をサーブしたり、お菓子を取り分けたりとじっとしていてくれないらしい。
今回は主役だからどうにか座っていてほしいと考えた双子たちが、よりにもよってモズに相談したところ『椅子にでも縛り付けておけば?』と適当に答えられてしまったのが発端だ。本気にしたエナガを止めるためにスズメがカラスの元に連れて行き、モズの答えも交えて相談すると、カラスも『いいんじゃないか?』と答えてしまったとか。
結果、ロープで縛り付けるのは可哀相だから……という理由で双子とカモメの3人がかりでかわいいリボンを使ってツバメはイスに結びつけられた。両腕は無事だったものの双子とカモメの気持ちも無下にはできず、椅子にリボンでぐるぐる巻きにされた状態でお誕生日会に参加する羽目になったのだという。
実はカラスの適当な返答は調理中で忙しく話半分だったとかなんとかで、さすがに当日のツバメの姿を見てなんらか思うところがあったらしく、双子と一緒にケーキを手元に運んだり甲斐甲斐しく対応していたが、言い出しっぺのモズはツバメの姿を見て心から楽しそうに笑っていた。
ちなみにその後のモズはひとしきり笑って満足したのか、お菓子や紅茶をツバメの手がギリギリ届くか届かないかのあたりに置いては「食べたいならお食べよ」と遊びだし、その光景を見ていたフクロウが(そういうのはふたりきりの時にしてほしい……)と内心何故か妙にドキドキしていたことは、フラミンゴの知るところではない。
「へー好きでやってたんじゃないんだ」
「よかった~」
ツバメの顛末を一通りツルから聞いたハチドリは興味をなくし、フラミンゴはほっとして笑顔がこぼれる。そんなふたりの様子を見てツルが口元に淡い微笑みを浮かべながら目を細め、同意の上でそれなりにただお祝いされる側も楽しんでいたようだと補足してくれた。
「ところで……フクロウさんはせっかくのお誕生日席でしたのに、緊張するからといってすぐにフラミンゴさんの隣に行ってしまいましたしね」
「フードって真ん中に座ると死ぬの?」
「死にはしないけど、心は死にそうってよく言ってるから、苦手なんだと思うよ」
昔から注目度が高い場所に座っているとフクロウは落ち着かなくなるらしい。トリとなってからも自分が発言してみんなからの視線を集めてしまうと、発言中にどんどん声が震えたり小さくなっていく。人の視線を浴びることに慣れていないのだ。
「そもそもフクロウって、自分の誕生日はだいたい学校がお休みの日だったし、みんなにお祝いされることに慣れてないのかも」
ツルはフクロウの誕生日の日付を覚えているらしく納得した表情で頷く。
「なるほど、確かにありえそうですね。フラミンゴさんは当日、お祝いしていたのですか?」
「それはもちろん! でもお誕生日会とかも、拷問だからやめてって親に泣いて頼んでたから、お祝いはワタシが勝手にしてた感じだったよ」
最初は本当に驚かれたし、警戒もされた。毎年続けていれば、いつからか少しずつ素直な反応を示してくれるようになり、嬉しそうな表情を浮かべてくれるようになった。その時の喜びといったら!
「かわいかったな~口をむにゅむにゅしながら照れてるちっちゃいフクロウ!」
「あらあら」
微笑ましそうなツルとは対照的に、ハチドリは怪訝な顔のまま首を傾げる。
「ピンクって、なんでフードのことかまうの?」
「なんでって……どうしてそんなこと聞くの?」
「だってフードってぼそぼそ喋るし、いっつもビクビクしてるし、ちょっとつついたら死にそう。ツルにも殺すなって言われてるし」
確かに今この場にフクロウがいたら死にそうではある。ハチドリはツルから『殺さない程度に構いなさい』と注意されているのだろうか。となるとハチドリなりにフクロウに構う時に手加減しているのかもしれない。
でも殺すなってもう交流として最低限どころか、わりと人としてダメなラインじゃないかな?
フラミンゴは一抹の不安がよぎったものの、よく考えればCAGEへの襲撃を選択した時点で彼女たちは自分たちと違う価値観を持っていることを思い出した。多分、見ている世界が違うのだろう。
「確かにフクロウはちょっと繊細だけど……そんなフクロウだから気づけるものとか、見えるものがあってね、ワタシはフクロウのそういう優しいところがいいと思ってるの」
最初に仲良くなりたいと思ったキッカケも、フクロウの不器用な優しさの発露だ。それから時々差し出される弱くて優しい気遣いは、フラミンゴの心の柔らかな部分を温かくさせた。多分本人が思うよりもお人好しなんだろう。エナガへの接し方を見ていると思う。だけど人見知りで怖がりだから、優しさやお人好しなところになかなか気づかれないのだ。
「まあ蓼食う虫も好き好きと言いますし、人の好みはそれぞれですから。ハチドリさんが分からなくても、フラミンゴさんがフクロウさんの良さを分かっていれば、それでよいのではないですか?」
「うん、別にアタシはわかんなくていいー」
褒めているのもよくわからないツルの言葉よりも早く、すでに興味を失ったらしいハチドリは、片付けの続きを始める。これが終わったらアリーナの使用許可が与えられるらしく、わりと頑張っている。
「あ、これハクチョウの忘れ物じゃないかな」
ハクチョウの髪につけていたリボンがテーブルの上に置いてあるのを見つけ、手に取る。
「そういえばカラスさんがプレゼントで新しいリボンを渡していましたね」
「うん、その場で付け替えてたし、それで忘れちゃったのかも。後でワタシが届けておくね」
ハクチョウがカラスからリボンを貰ったのを見た双子たちが、つけているのを見たいと口にした。「それならあたしがつけようか?」とカラスが言い出したので、ハクチョウは恥ずかしそうに「お願いします」と微笑んだ。
カラスがハクチョウの髪に触れる手つきは案外優しく、すいすいと結い上げていく。
手慣れた動作に驚いていると、カラスには妹がいて時々髪を結ってあげていたのだと話していた。「でも妹の髪よりハクチョウの髪は柔らかいから、ちょっと難しいな」と優しく目を細めながらハクチョウの髪を優しく結い上げる姿は、心が温かくなる光景だった。
フラミンゴは思い出した光景を噛みしめながら、片付けを続ける。ツルはもとよりハチドリもアリーナのために頑張ってくれたので、思っていたよりも早くなんとかなった。
「……このくらいでよいのではないでしょうか?」
「おわった!?」
「そうですね、フラミンゴさんも問題なければこちらで片付けを終えてもよろしいかと」
「うん、大丈夫だと思う! ふたりともお疲れさま~」
「ええ、お疲れ様でした。ではフラミンゴさんはそろそろあちらに行かれてはいかがですか?」
「あちら?」
少し離れた物影をツルが指で示すと、そこに隠れるようにいた小柄な影がびくりと揺れる。独特なフードの形ですぐに誰かわかった。
「フクロウ!? どうしたの?」
「あ……その……」
駆け寄るとフクロウは小さな体をさらに小さくして、しどろもどろになりながらなんとか説明しようとし始めた。
「へ、部屋にいても落ち着かなくて……なんとなく、その……フラミンゴに会いたくて……迎えに来たというか……」
「そうだったの? えへへ~うれしい♪ 声をかけてくれたら、もっと早く片付けたのに!」
「や……3人で話してたみたいだし……楽しそうな中に入る勇気は、なく……片付けを手伝いもせず、すみません……影から見てるだけって、気持ち悪いよね……」
「全然! 一緒に部屋に戻ろ~! あ、ハクチョウのところに寄ってもいい? リボン届けたくて」
「あ、うん……それは全然……もう片付けはいいの……?」
「うん、終わったところ! ツル、もう解散でも大丈夫?」
少し離れた場所でツルが「ええ、問題ありませんよ」と手をふる。フラミンゴも大きく手を振って「じゃあまたね!」と声をかけてから、フクロウと並んで部屋に戻る。
先ほどから軽い足取りがさらにはずむ。フクロウが来てくれてうれしい。
みんなからお祝いされ、慣れない状況に疲れただろうフクロウが自分に会いに来てくれたという状況は、なんとも言えない幸福感を与えてくれた。フラミンゴは自分が単純で良かったと思った。ささやかなことひとつで、こんなに幸せな心地になれるのだから。
「フクロウ、お誕生日会は楽しかった?」
「え……? あ……うん……人に囲まれるのは慣れないし、疲れるけど……嬉しいし、楽しかった、よ……」
「ふふ、よかった。またみんなでお祝いしようね♪」
柔らかな日差しが入る廊下をあまりにも足取り軽くフラミンゴが歩くので、フクロウも楽しくなってきたらしい。「ふふ……」と笑みをこぼしたので、フラミンゴはやっぱりうれしくて楽しくて思いっきり笑顔になった。
+++
フラミンゴとフクロウがスキップするように立ち去っていくのを、ツルはじっと眺めている。そんなツルをハチドリはしばらく見ていたが、すぐに飽きてしまった。
「ツル、アリーナ行こ」
「……そうですね、貴方に約束していましたから」
ハチドリの声がけにツルは気持ちを切り替えたらしい。すぐにアリーナへと方向を変えた。アリーナへ続く室内の廊下は薄暗い。先ほどまで明るい場所にいたので最初は目が眩むものの、すぐに慣れた。
「ほどほどにしてくださいね。貴方と違って私は体力がないのですから」
「えーいっぱい食べたしいっぱい動きたくない?」
「いいえ全く」
本当に嫌そうにしているツルを見ても、別にハチドリは反省することもやめようと言い出すこともない。ツルだってそうだ。ハチドリが嫌がろうとも、必要なら感情なんて無視でやらせる。フラミンゴとフクロウの関係と、自分たちの関係は違う。でも別にそれがなんだというのだろう。「違う」という事実以外、なんの意味ももたない。
ツルのデバイスから通知音がする。音を鳴らすということは、今のところハチドリに知られて困るようなやりとりはしていないのかもしれない。
「あ、タカさんがアリーナに参加してくれるそうです。ハチドリさんを躾けるチャンスですよとお伝えしたら、やる気になってくださいました」
「え、しつけってなに? メンドーなの、イヤなんだけど」
「タカさんは襲撃した私たちのことをとても嫌っていらっしゃいますから、合法的にどうにかできるチャンスだと言えば来てくれると思ったのです」
「だったらなんでアタシだけ? 襲撃したの、ツルもじゃん」
「あら、だって殴られたら痛いじゃないですか。おふたりで存分に戦ってください」
綺麗だけど優しくない笑みを浮かべて、ツルはいけしゃあしゃあと口にする。ハチドリはむっとした表情を隠すことなく、アリーナへ向かう。腹は立つけど、アリーナで一暴れできるチャンスは逃せない。
ツルは変なヤツだ。痛いのも戦いも全部キライで、多分憎んでる。馬鹿馬鹿しいって思いながら、ハチドリの暴れたい願望を叶える手伝いをする。いつだって考えてることとやることと言ってることがちぐはぐで、バラバラで、意味が分からない。
「ツルが遊ぶって言ったんだから、ツルも相手してよ」
「そうですね……一度はお相手しますよ。約束ですから」
でもハチドリとの約束だけは絶対に守る。それでふたりは十分なのだ。
ツルとハチドリはアリーナへと続く薄暗い廊下を、いつもの調子で歩き続けた。
=========================
コメントをするためには
コメント
- はつ
7月28日
自分が1番しんどい時にご褒美として読もうと、ずっと勝手に我慢していました😢
今、病院の待合で読ませていただきました☺️(大した症状ではないので大丈夫です!)
フラミンゴ目線のみんなのかわいさと、ツルとハチドリの間で交わされる約束の大切さが心にぎゅーんと沁みました🫶
トワツガイのみんなのことが大好きなので、
それぞれのツガイの様子を、丁寧に描写してくださりありがとうございます✨
動揺しながらツバメをぐるぐるにする双子も、リボンを贈るカラスも、きっとそれをすごく幸せそうにもらうハクチョウも、一生懸命部屋の飾り付けをするカモメも、サポートしてあげるタカも、みんなから少し離れて様子を見ているモズも、賑やかで楽しい誕生会の様子も、全部が鮮やかに思い起こせました!
トワツガイの本編が終了しても、トリ達みんな
私の心に残っていることがとっても嬉しいです💓
誕生会の後に2人で改めてゆっくりすごす幼馴染の2人は本当にフラミンゴの気持ちがフクロウに伝わってよかったなと🥹
アリーナへ向かう共謀の2人は、どんな瞬間も2人らしくて最高にかっこいいです。
とってもすてきなショートストーリーをありがとうございます!💘
トワツガイのことがずっとずっと大好きです!🕊️🕊️
体調も良くなってきました!✨✨✨
- 尾崎玲子オルタ
5月2日
他ならぬhakumoto先生の筆致で描かれるトリたちの言動は、もしかするともう二度と見ることが叶わないかも知れないと思っていたことば達で、最初はこんな奇跡があっていいのかと信じられないほどでした。再び出会わせていただいたことに、読み終わっても未だ胸がどきどきしています。心の底から、ありがとうございます。
- ヒロ
4月30日
素敵なお話を本当にありがとうございます…!
フラミンゴちゃんとツルさんの例の出来事からの心の変化や接し方が細かく伝わりました…
全トリの皆も出して頂いて感謝しかありません!
(特にツバメくん最高…)
25
3123
保存